80m用カップラ検討完了
2015-06-13
結構な遠回りを経て、漸く80m用のカップラ部分について検討を終えようと思います。ALL JAが終わってから検討を始めましたから、結局丸1ヶ月も・・・まぁ、仕方が無いですね
プチ実験を含めたLマッチを中心とした検討を行い、「トロイダルコアによるインピーダンス変換とTマッチの組み合わせ」に辿り着いたんですが、Lマッチ部分のロスが思いの外少なかったことから、トロイダルコアによるインピーダンス変換を前置する必要性も薄れてしまい、結局以下のような形になりました。

Lマッチの先にリアクタンスを何とかするためのコンデンサ「VC2」を設けただけのものです。アンテナ側の条件は、現状の釣竿君@80mの諸元データより決めています。
純抵抗は25-38Ω・・・これはLマッチ部分の設計条件になり、定数自体は計算で求められますが、コイルのインダクタンス値も変化させなければなりません。タップを取って細かく調整するのは少々難儀ですので、今回はこの部分をVC2にやらせる格好で解決します。

Lマッチの変換条件は、TRX側の50Ωから25-38Ωへの変換を行うため、最大で1.14μH、最小で0.97μHが必要。仮に、コイルを1.14μHになるように巻けば、最小値との差分である「0.17μH」を打ち消すような容量のバリコンを直列に入れて調整できるようにすればよいわけですね。このバリコンにより「必要な打ち消し量に調整可能」とすることで、コイルのタップ切替の代用として使えます。グラフには、お遊びでL,Cの値の動きとQ値を入れてありますが、特に他意はありませんよ
上記の図より求められた余計なインダクタンスの打ち消しに必要なキャパシタンスは「最大3.7Ω」と求めることができました。これを容量換算すると凡そ12000pF余りというかなり大きな値・・・これでは上手くありませんが、これは一旦置いておきましょう。
VC2の役割としては、もう一つ重要なこと・・・アンテナのリアクタンス成分を打ち消す役割が必要です。ここ一連の検討で「電気的に長めのアンテナ」にすることで運用周波数で必ず「インダクティブ」になるアンテナを前提にすると決めましたが、この値を現状の釣竿君@80mにおける「3.3MHz付近に同調点がある場合のリアクタンス値」(この詳細は、既に記事にまとめてあります)を前提に最大「250Ω」としました。
ここで、先に求めたタップ代わりのキャパシタンス値を合成します。ここは単純な足し算で求められますから、VC2の可変範囲は3.7Ω~253.7Ωと求められますが、これでは「12000pF問題」は解決しませんね。そこで、VC2の値が巨大にならないよう、ちょっと「下駄」を履かせてみましょう。
先に求めたタップ代わりのキャパシタンス値は、Lマッチに必要な最大値(1.14μH)を基準に考えて3.7Ωを導き出しましたが、例えばこれに10Ω分の下駄を履かせると、調整範囲は13.7Ω~263.7Ωになります。これを容量換算すると、その最大値(13.7Ωのキャパシタンスをコンデンサ容量に換算)は3300pF余りへとかなり小さくできます。この調子で数値を探っていくと・・・。
下駄を40Ω乃至50Ωにした場合に、二連のエアバリコンぐらいの容量で可変できることが分かりましたので、間を取って(
)45Ωの下駄を履かせることにします。最終的には、Lマッチで必要なインダクタンス値(1.14μH)に、48.7Ω相当のインダクタンス(2.22μH)を加えたものが、このカップラのコイルに必要なインダクタンスになります。
これらをまとめるべく、回路図として完成させました。

バリコンの最小容量には、数十pFの残留容量が存在します。手持ちの単連(VC1用)と二連(VC2用)を調べてみると、単連で13pF、二連で22pF(単連あたり11pF)となっていました。この回路では、その分を差し引いた上で市販のコンデンサ容量で賄えるように考慮してありますから、このまま製作すればきっと上手くいくでしょう
できてしまえば「たったこれだけ・・・」なんですが、紆余曲折たるプチ実験やヘッポコ検討にも、自分の理解を含める事柄がたくさんありました。お次は40m・・・また違ったコンセプトが必要ですが、ユルユルと検討を進めたいと思います。

プチ実験を含めたLマッチを中心とした検討を行い、「トロイダルコアによるインピーダンス変換とTマッチの組み合わせ」に辿り着いたんですが、Lマッチ部分のロスが思いの外少なかったことから、トロイダルコアによるインピーダンス変換を前置する必要性も薄れてしまい、結局以下のような形になりました。

Lマッチの先にリアクタンスを何とかするためのコンデンサ「VC2」を設けただけのものです。アンテナ側の条件は、現状の釣竿君@80mの諸元データより決めています。
純抵抗は25-38Ω・・・これはLマッチ部分の設計条件になり、定数自体は計算で求められますが、コイルのインダクタンス値も変化させなければなりません。タップを取って細かく調整するのは少々難儀ですので、今回はこの部分をVC2にやらせる格好で解決します。

Lマッチの変換条件は、TRX側の50Ωから25-38Ωへの変換を行うため、最大で1.14μH、最小で0.97μHが必要。仮に、コイルを1.14μHになるように巻けば、最小値との差分である「0.17μH」を打ち消すような容量のバリコンを直列に入れて調整できるようにすればよいわけですね。このバリコンにより「必要な打ち消し量に調整可能」とすることで、コイルのタップ切替の代用として使えます。グラフには、お遊びでL,Cの値の動きとQ値を入れてありますが、特に他意はありませんよ

上記の図より求められた余計なインダクタンスの打ち消しに必要なキャパシタンスは「最大3.7Ω」と求めることができました。これを容量換算すると凡そ12000pF余りというかなり大きな値・・・これでは上手くありませんが、これは一旦置いておきましょう。
VC2の役割としては、もう一つ重要なこと・・・アンテナのリアクタンス成分を打ち消す役割が必要です。ここ一連の検討で「電気的に長めのアンテナ」にすることで運用周波数で必ず「インダクティブ」になるアンテナを前提にすると決めましたが、この値を現状の釣竿君@80mにおける「3.3MHz付近に同調点がある場合のリアクタンス値」(この詳細は、既に記事にまとめてあります)を前提に最大「250Ω」としました。
ここで、先に求めたタップ代わりのキャパシタンス値を合成します。ここは単純な足し算で求められますから、VC2の可変範囲は3.7Ω~253.7Ωと求められますが、これでは「12000pF問題」は解決しませんね。そこで、VC2の値が巨大にならないよう、ちょっと「下駄」を履かせてみましょう。
先に求めたタップ代わりのキャパシタンス値は、Lマッチに必要な最大値(1.14μH)を基準に考えて3.7Ωを導き出しましたが、例えばこれに10Ω分の下駄を履かせると、調整範囲は13.7Ω~263.7Ωになります。これを容量換算すると、その最大値(13.7Ωのキャパシタンスをコンデンサ容量に換算)は3300pF余りへとかなり小さくできます。この調子で数値を探っていくと・・・。
下駄(Ω) | キャパシタンス値(Ω) | 容量(pF) | ||
最小値 | 最大値 | 最大値 | 最小値 | |
0 | 3.7 | 253.7 | 12290.0 | 179.2 |
10 | 13.7 | 263.7 | 3319.2 | 172.4 |
20 | 23.7 | 273.7 | 1918.7 | 166.1 |
30 | 33.7 | 283.7 | 1349.3 | 160.3 |
40 | 43.7 | 293.7 | 1040.6 | 154.8 |
45 | ★48.7 | 298.7 | 933.7 | 152.2 |
50 | 53.7 | 303.7 | 774.7 | 147.3 |
60 | 63.7 | 313.7 | 661.9 | 142.7 |
下駄を40Ω乃至50Ωにした場合に、二連のエアバリコンぐらいの容量で可変できることが分かりましたので、間を取って(

これらをまとめるべく、回路図として完成させました。

バリコンの最小容量には、数十pFの残留容量が存在します。手持ちの単連(VC1用)と二連(VC2用)を調べてみると、単連で13pF、二連で22pF(単連あたり11pF)となっていました。この回路では、その分を差し引いた上で市販のコンデンサ容量で賄えるように考慮してありますから、このまま製作すればきっと上手くいくでしょう

できてしまえば「たったこれだけ・・・」なんですが、紆余曲折たるプチ実験やヘッポコ検討にも、自分の理解を含める事柄がたくさんありました。お次は40m・・・また違ったコンセプトが必要ですが、ユルユルと検討を進めたいと思います。
Tマッチのリアクタンス打ち消しの様子
2015-06-08
今週は外出の日が続きます。職場と客先が結構離れているため、道中は様々な工作や実験に思いを巡らせて過ごすことができ、結構お気楽なウィークデーが過ごせそう。暫し「平日のオアシス」を満喫したいと思います。
漸く、カップラ再作成に向けた「頭の体操」も佳境に入ってきました。昨日まで、あれこれとカップラ内部の「ロス」に着目した検討とプチ実験を進めてきましたが、インピーダンス変換に採用する予定のトロイダルコアによるトランスやLマッチで生じるロスは、総じて(というか、想像していたよりも)小さな値に収まっており一安心。そこで、最終的な回路構成として必要になるTマッチ部分の詳細な検討をしました。
今回再作成するカップラの大前提は、長めのアンテナ・・・インダクティブなアンテナを接続することを前提にして調整方向を決めてしまうことで、個々の検討要素を単純化しています。即ち、前段の低インピーダンスへの変換(ここは、フェライトコアによる50Ω⇒低いインピダンスへの変換)を前提に、それ以降 の回路では「インピーダンスが高い方へチューニングする」という形で画一化するように考えています。

上図は、既に書き留めておきたいことを全て盛り込んだもので、あまり詳細説明は要らないような気もしますが、自分の頭の整理として説明書きをしておきます。
上図のアンテナカップラにおける高いインピーダンスへの変換は「Lマッチ部」が担います。これは、インピーダンス変換部の出力インピーダンス(図中のZi)と、アンテナの「純抵抗」(図中の「R」)を整合するのが目的であり、カップラ内蔵のコイルが必要十分なインダクタンスを有しているとすれば(コイルのインダクタンス=L+Lsurp)、インピーダンスの変換比より図中のLとVC1の値は決まります。この状態でインピーダンス変換に使われなかったインダクタンス部分である「Lsurp」がVC2のキャパシタンスで相殺されれば、恰もLマッチ部分のみが存在するように見えます。
一方、アンテナ側にも同様な理屈が成り立ちます。即ち、アンテナのインダクタンス「Lant」が打ち消されるようにVC2を調整すれば、アンテナの純抵抗「R」しか見えない状態にすることができます。
つまり、Lsurp(+jX1)とLant(+jX2)が同時に打ち消される値にVC2を調整すれば、Lマッチと「R」しか見えない状態・・・この「長めのアンテナ」に対する調整は完了します。
面白いことに(って、きっと面白いと思うのは自分だけですね
)、VC2に必要なキャパシタンスはLsurpとLantを同時に打ち消す値であり、Lsurpがある程度大きな値になるよう設計しておけば、Lantが小さい・・・同調点が運用周波数に近い場合でも、無理なくチューニングできます。
40mのチューニングを例に考えてみましょう。アンテナの同調点が6.99MHz、運用周波数が7.01MHzでこの時のアンテナのリアクタンスが+10Ωだった場合、これを打ち消すキャパシタンスは-10Ω・・・コンデンサ容量に直すと2300pF近くの容量が必要です。つまりVC2には、かなり大きい容量で調整を担わせる必要があります。
ところが、Lsurpとして1uH程度のインダクタンス(リアクタンス約44Ω)が存在したとすると、アンテナのリアクタンスとの合計が約55Ωとなり、これを打ち消すキャパシタンス(-55Ω)をコンデンサ容量換算すると凡そ410pF程度・・・これなら、ジャンクのエアバリコンでも賄えそうですね。
さぁ、これでTマッチについても理屈が解った気がします。あとは、実際に組むための適正値を求めたいと思いますが、これは別の記事でまとめます。
漸く、カップラ再作成に向けた「頭の体操」も佳境に入ってきました。昨日まで、あれこれとカップラ内部の「ロス」に着目した検討とプチ実験を進めてきましたが、インピーダンス変換に採用する予定のトロイダルコアによるトランスやLマッチで生じるロスは、総じて(というか、想像していたよりも)小さな値に収まっており一安心。そこで、最終的な回路構成として必要になるTマッチ部分の詳細な検討をしました。
今回再作成するカップラの大前提は、長めのアンテナ・・・インダクティブなアンテナを接続することを前提にして調整方向を決めてしまうことで、個々の検討要素を単純化しています。即ち、前段の低インピーダンスへの変換(ここは、フェライトコアによる50Ω⇒低いインピダンスへの変換)を前提に、それ以降 の回路では「インピーダンスが高い方へチューニングする」という形で画一化するように考えています。

上図は、既に書き留めておきたいことを全て盛り込んだもので、あまり詳細説明は要らないような気もしますが、自分の頭の整理として説明書きをしておきます。
上図のアンテナカップラにおける高いインピーダンスへの変換は「Lマッチ部」が担います。これは、インピーダンス変換部の出力インピーダンス(図中のZi)と、アンテナの「純抵抗」(図中の「R」)を整合するのが目的であり、カップラ内蔵のコイルが必要十分なインダクタンスを有しているとすれば(コイルのインダクタンス=L+Lsurp)、インピーダンスの変換比より図中のLとVC1の値は決まります。この状態でインピーダンス変換に使われなかったインダクタンス部分である「Lsurp」がVC2のキャパシタンスで相殺されれば、恰もLマッチ部分のみが存在するように見えます。
一方、アンテナ側にも同様な理屈が成り立ちます。即ち、アンテナのインダクタンス「Lant」が打ち消されるようにVC2を調整すれば、アンテナの純抵抗「R」しか見えない状態にすることができます。
つまり、Lsurp(+jX1)とLant(+jX2)が同時に打ち消される値にVC2を調整すれば、Lマッチと「R」しか見えない状態・・・この「長めのアンテナ」に対する調整は完了します。
面白いことに(って、きっと面白いと思うのは自分だけですね

40mのチューニングを例に考えてみましょう。アンテナの同調点が6.99MHz、運用周波数が7.01MHzでこの時のアンテナのリアクタンスが+10Ωだった場合、これを打ち消すキャパシタンスは-10Ω・・・コンデンサ容量に直すと2300pF近くの容量が必要です。つまりVC2には、かなり大きい容量で調整を担わせる必要があります。
ところが、Lsurpとして1uH程度のインダクタンス(リアクタンス約44Ω)が存在したとすると、アンテナのリアクタンスとの合計が約55Ωとなり、これを打ち消すキャパシタンス(-55Ω)をコンデンサ容量換算すると凡そ410pF程度・・・これなら、ジャンクのエアバリコンでも賄えそうですね。
さぁ、これでTマッチについても理屈が解った気がします。あとは、実際に組むための適正値を求めたいと思いますが、これは別の記事でまとめます。
Lマッチのコアの違いによるロスの測定
2015-06-07
土曜日定番の歯医者は昨日で治療が終了し、今後は三ヶ月刻みの定期検査・・・暫く楽になりそう
時間的にというより、精神的に楽になりそうです。
トランスとTマッチで構成しようとしている次作のアンテナカップラ・・・トランス部分は、直前記事で記した通り無視し得る程度のロスで収まりそうなことが解ったんで、次なるはTマッチの構成要素となるLマッチ部分のロスを測定してみました。

今回の測定は、前段のトランスによって一旦22Ω程度に下げられたインピーダンスをLマッチで50Ωに戻す格好で回路を構成し、トランス部分のロスを差し引いたものがLマッチ部分のロスという形で測定しました(直前記事の測定で得られたトランス部分のロスは凡そ-0.045dB)。

用意したのは#2材と#6材のそれぞれT37とT106という、ちょっと極端な組み合わせになっています。T37は自作機器への組み込みによく使うサイズ、T106の方はそこそこの電力を扱う場合のチョイス・・・といった感じで選んでいます。
測定周波数は3.5MHzです。この周波数におけるLマッチによる22Ω⇒50Ωのインピーダンス変換では、インダクタンスは約1.13μHが必要であり、個々のコイルはこのインダクタンス値に近い巻き数で折り合いを付け、バリコンは凡そ1018pFで固定しておいてロスを測定しました。この実験自体、あまり突飛な結果が得られるとは思えなかったんですが、その通り、あまり面白い結果ではありませんでした。
<3.5MHz 22.2Ω⇒50Ω>
測定周波数より「#2材の方が有利」と思っていたら、サイズに関係なくその通りの結果になっています。サイズが小さい方がロスが小さいのは、巻き線の長さに起因する「銅損」の差(T37の方が11,2cmほど巻き線が短い)と思われます。また、同じ径の場合も、巻き線長に依存してロスが増えている形になりますが、T106で1回しか違わない(巻き線長にして3cm程度しか変わらない)にも関わらずロスが大きく違っているのは、邪推するにコイル自体のQの差によるものではないか・・・ということで、7MHzで同様の測定をしました。必要なインダクタンス値は0.565μHです。
<7MHz 22.2Ω⇒50Ω>
T37-xについては、ロスの量が3.5MHzと逆転しています。この両周波数とも、必要なインダクタンスを得るための巻き数として比較的バランスの取れたものになっていて、HFのローバンドでは#2材、7MHz辺りから上は#6材が「Good Choice」であることを裏付けた格好になりました。これは、個々のコア材における「Qが高くなる美味しい部分」を使うことでロスが減ったものと思います。
一方のT106-xについては、コアの大きさに対する巻き数があまりに少なくなり、所定の特性が出なくなっています。T106-2は透磁率が高い分、何とかギリギリの特性を保ったと言えそうです。
この測定結果から、トロイダルコアで作るLマッチについては総じて目くじらを立てる程のロスは無く、「1つ辺り0.1dB程度のロスがある」と見積もっておけば「お釣り」が来そうです
勿論、もっと小さなコアや高い周波数ではこの理屈は通用しないんでしょうが、T37サイズは今後もよく使うものと思われ、QRP機の自作もHFメインでしょうから、期せずしていいデータが採れたと思います。
また、アンテナカップラに採用する場合には、7MHzのT106-6のパターン(サイズに対して巻き数が少な過ぎる)にならないように考慮する必要がありそうです。
面白いデータではなかったものの役には立ちそう・・・夜更かしし過ぎ(もう03時前)ですが、まぁヨシとしましょうかね

トランスとTマッチで構成しようとしている次作のアンテナカップラ・・・トランス部分は、直前記事で記した通り無視し得る程度のロスで収まりそうなことが解ったんで、次なるはTマッチの構成要素となるLマッチ部分のロスを測定してみました。

今回の測定は、前段のトランスによって一旦22Ω程度に下げられたインピーダンスをLマッチで50Ωに戻す格好で回路を構成し、トランス部分のロスを差し引いたものがLマッチ部分のロスという形で測定しました(直前記事の測定で得られたトランス部分のロスは凡そ-0.045dB)。

用意したのは#2材と#6材のそれぞれT37とT106という、ちょっと極端な組み合わせになっています。T37は自作機器への組み込みによく使うサイズ、T106の方はそこそこの電力を扱う場合のチョイス・・・といった感じで選んでいます。
測定周波数は3.5MHzです。この周波数におけるLマッチによる22Ω⇒50Ωのインピーダンス変換では、インダクタンスは約1.13μHが必要であり、個々のコイルはこのインダクタンス値に近い巻き数で折り合いを付け、バリコンは凡そ1018pFで固定しておいてロスを測定しました。この実験自体、あまり突飛な結果が得られるとは思えなかったんですが、その通り、あまり面白い結果ではありませんでした。
<3.5MHz 22.2Ω⇒50Ω>
コアの種類 | 巻数 | ロス |
T37-2 | 16 | -0.052dB |
T37-6 | 19 | -0.062dB |
T106-2 | 9 | -0.083dB |
T106-6 | 10 | -0.141dB |
測定周波数より「#2材の方が有利」と思っていたら、サイズに関係なくその通りの結果になっています。サイズが小さい方がロスが小さいのは、巻き線の長さに起因する「銅損」の差(T37の方が11,2cmほど巻き線が短い)と思われます。また、同じ径の場合も、巻き線長に依存してロスが増えている形になりますが、T106で1回しか違わない(巻き線長にして3cm程度しか変わらない)にも関わらずロスが大きく違っているのは、邪推するにコイル自体のQの差によるものではないか・・・ということで、7MHzで同様の測定をしました。必要なインダクタンス値は0.565μHです。
<7MHz 22.2Ω⇒50Ω>
コアの種類 | 巻数 | ロス |
T37-2 | 12 | -0.070dB |
T37-6 | 14 | -0.038dB |
T106-2 | 6 | -0.063dB |
T106-6 | 7 | -0.223dB |
T37-xについては、ロスの量が3.5MHzと逆転しています。この両周波数とも、必要なインダクタンスを得るための巻き数として比較的バランスの取れたものになっていて、HFのローバンドでは#2材、7MHz辺りから上は#6材が「Good Choice」であることを裏付けた格好になりました。これは、個々のコア材における「Qが高くなる美味しい部分」を使うことでロスが減ったものと思います。
一方のT106-xについては、コアの大きさに対する巻き数があまりに少なくなり、所定の特性が出なくなっています。T106-2は透磁率が高い分、何とかギリギリの特性を保ったと言えそうです。
この測定結果から、トロイダルコアで作るLマッチについては総じて目くじらを立てる程のロスは無く、「1つ辺り0.1dB程度のロスがある」と見積もっておけば「お釣り」が来そうです

また、アンテナカップラに採用する場合には、7MHzのT106-6のパターン(サイズに対して巻き数が少な過ぎる)にならないように考慮する必要がありそうです。
面白いデータではなかったものの役には立ちそう・・・夜更かしし過ぎ(もう03時前)ですが、まぁヨシとしましょうかね

釣竿アンテナ用カップラのプチまとめ
2015-05-27
急なCM関連の「冷え込み」で、案外忙しく過ごしています。以前には考えられないような急激な暗転にも慣れっ子の部分があって、詰まるところ「営業活動の活性化」しかないため、異例の暑さとなった5月の都内をここ数日ウロウロしています。そんな中でもオツムの中は釣竿君用の新しいマッチングボックスのことで一杯・・・不良会社員丸出しでございます
少し前の記事で釣竿君に使うカップラの概要まとめをした後、Lマッチの検討にいきなり足を踏み入れてしまった嫌いがあって、実際の検討を進めるのにもう少し前提が要るなぁと思うようになりました。今日は、クールダウンの意味でこの部分をまとめておくことにしました。
◆ 80mは「トランス+Tマッチ」が良さそう
80mのアンテナの接続では、カップラと釣竿アンテナの間にローディングコイルを付加します。このコイルは手巻きで自作しますから、適当なボビン代わりの筒に必要な分の巻線を巻けば良いだけです。今いまは、この部分にどういうわけか馴染んでしまった緑コイル・・・化粧水などを入れるプラスチックのボトルにアルミ線を巻いたものを使っています。

実は、今回のカップラ作りの序でにこのコイルとおサラバして、もう少しQの改善(ボビン径を太くする)+160mにも使えるようにするというコンセプトで作り直そうとしており、ボビン代わりの太い塩ビパイプを既に買ってある・・・にも拘らず実際の製作に入れないのは、ちょいと迷いがあるからなんですね
コイルを新たに巻くわけですから必要なインダクタンスが無難に実現できればいいわけですが、これをスズメッキ線で作ると、ワニ口を使った「自由なタップ」が使えるようになり、当日の「地面や建物の含水状態」に連れて変動するインピーダンスに最適な接続ができるようになります。
ところが、運用前または運用時点の天候によっては、雨上がりで乾いていく状態だったり、逆に急な雨で湿っていく状態だったりすると、運用中の再チューン・・・即ち「タップ切り替え」を逐次行わなければなりません。これを夜間運用主体の80mで行おうとすると、結構難儀なシチュエーション(暗いベランダで懐中電灯を頼りに・・・)であることは明白。少なくとも、現状はカップラのツマミをくるくる回してSWRを落とし込めば良いわけですから、この点から考えるとバリコンで調整できる今のスタイルが「作業の簡便さ」といった点では優っているでしょう。
さらによくよく考えてみると、Lマッチによるカップラを仮に作ったとしても、こちらもかなり細かいタップの切り替えは必要になりますから、実際に扱い易い(特に、コンテストの最中など限られた時間に簡単操作で調整できる)代物にはならないんじゃないか・・・と思い始めたんですね。そして、TYPE-Ⅲのまとめの時点で投げ出してある「損失の最小化」を狙ったトロイダルコアを使ったトランスによるインピーダンス変換と、これまた損失ができるだけ少なくなるような設計に基づく「Tマッチ」の組み合わせの方が、「夜間のベランダであっという間に調整できる」という点でも優れているんじゃないかなぁ・・・という結論に辿りついちゃったんですよね。ごめんね、Lマッチ
というわけで、釣竿アンテナ用マッチングボックスの80m部分は、「トランス+Tマッチ」に落ち着きそうです。そして、80m用の新コイルについては、タップが取れる・取れないは置いて「丈夫なものを作る」というのが第一のコンセプトになりそうです。
◆ 40mはまだ調査余地があるものの・・・
釣竿君の40mは、80mよりかなり扱い易い諸元。というのは、アンテナとしての純抵抗分が概ね50Ω後半から60Ω前半といった塩梅になりますので、高い方へのインピーダンス変換が必要ですが、80mのように50Ωより低い方へ一旦下げるという必要がありません。つまり、Lマッチだけでも十分にマッチングが取れる可能性が大きいです。
ただ、実際の運用においては80mと全く同じで、特にコンテスト参加時のシチュエーションでは、臨機な調整が必要な場面も考えられますから、ここは同じく「Tマッチ」の方が良さそう。というわけで、これで一件落着・・・となればよかったんですが、ちょっと懸念があります。
少し前に釣竿アンテナのデータ整理としてまとめた中に、「ひょっとしたら、50Ωを下回るインピーダンスの場合があるのではないか」と疑えるデータがあります(この記事の2013年11月2日のデータ参照)。このデータでは、運用周波数で辛うじて50Ωを上回っていますがギリギリの状態です。
TYPE-Ⅲでは、πC型の宿命である「一度下げてから上げる」というインピーダンス変換のからくりのため、設計・実測上は40Ω程度までマッチングできるようになっており、仮に多少50Ωを多少下回ったところで問題ないわけですが、今回はこの辺りを少し考えて設計しておかないと不味そうな雰囲気
その上、このインピーダンス値の決定要素には、相変わらずFIXしていないカウンターポイズちゃんが絡むわ、雨天時の測定データが多くないわ・・・といった塩梅であり、どの程度のマージンが必要なのか決められんのですよね。神経質になるつもりはないんですが、やはりできるだけ事前検討は濃いめにした上で「作っては壊し・・・」を減らしたいんです。とは言え、ここいら辺りの試行錯誤は、あまり遠回りにはならないんじゃないかなぁ・・・と高を括っています
少し具体的になったところで、そろそろ設計に入ろうかな・・・今週末の宿題ってところですね

少し前の記事で釣竿君に使うカップラの概要まとめをした後、Lマッチの検討にいきなり足を踏み入れてしまった嫌いがあって、実際の検討を進めるのにもう少し前提が要るなぁと思うようになりました。今日は、クールダウンの意味でこの部分をまとめておくことにしました。
◆ 80mは「トランス+Tマッチ」が良さそう
80mのアンテナの接続では、カップラと釣竿アンテナの間にローディングコイルを付加します。このコイルは手巻きで自作しますから、適当なボビン代わりの筒に必要な分の巻線を巻けば良いだけです。今いまは、この部分にどういうわけか馴染んでしまった緑コイル・・・化粧水などを入れるプラスチックのボトルにアルミ線を巻いたものを使っています。

実は、今回のカップラ作りの序でにこのコイルとおサラバして、もう少しQの改善(ボビン径を太くする)+160mにも使えるようにするというコンセプトで作り直そうとしており、ボビン代わりの太い塩ビパイプを既に買ってある・・・にも拘らず実際の製作に入れないのは、ちょいと迷いがあるからなんですね

コイルを新たに巻くわけですから必要なインダクタンスが無難に実現できればいいわけですが、これをスズメッキ線で作ると、ワニ口を使った「自由なタップ」が使えるようになり、当日の「地面や建物の含水状態」に連れて変動するインピーダンスに最適な接続ができるようになります。
ところが、運用前または運用時点の天候によっては、雨上がりで乾いていく状態だったり、逆に急な雨で湿っていく状態だったりすると、運用中の再チューン・・・即ち「タップ切り替え」を逐次行わなければなりません。これを夜間運用主体の80mで行おうとすると、結構難儀なシチュエーション(暗いベランダで懐中電灯を頼りに・・・)であることは明白。少なくとも、現状はカップラのツマミをくるくる回してSWRを落とし込めば良いわけですから、この点から考えるとバリコンで調整できる今のスタイルが「作業の簡便さ」といった点では優っているでしょう。
さらによくよく考えてみると、Lマッチによるカップラを仮に作ったとしても、こちらもかなり細かいタップの切り替えは必要になりますから、実際に扱い易い(特に、コンテストの最中など限られた時間に簡単操作で調整できる)代物にはならないんじゃないか・・・と思い始めたんですね。そして、TYPE-Ⅲのまとめの時点で投げ出してある「損失の最小化」を狙ったトロイダルコアを使ったトランスによるインピーダンス変換と、これまた損失ができるだけ少なくなるような設計に基づく「Tマッチ」の組み合わせの方が、「夜間のベランダであっという間に調整できる」という点でも優れているんじゃないかなぁ・・・という結論に辿りついちゃったんですよね。ごめんね、Lマッチ

というわけで、釣竿アンテナ用マッチングボックスの80m部分は、「トランス+Tマッチ」に落ち着きそうです。そして、80m用の新コイルについては、タップが取れる・取れないは置いて「丈夫なものを作る」というのが第一のコンセプトになりそうです。
◆ 40mはまだ調査余地があるものの・・・
釣竿君の40mは、80mよりかなり扱い易い諸元。というのは、アンテナとしての純抵抗分が概ね50Ω後半から60Ω前半といった塩梅になりますので、高い方へのインピーダンス変換が必要ですが、80mのように50Ωより低い方へ一旦下げるという必要がありません。つまり、Lマッチだけでも十分にマッチングが取れる可能性が大きいです。
ただ、実際の運用においては80mと全く同じで、特にコンテスト参加時のシチュエーションでは、臨機な調整が必要な場面も考えられますから、ここは同じく「Tマッチ」の方が良さそう。というわけで、これで一件落着・・・となればよかったんですが、ちょっと懸念があります。
少し前に釣竿アンテナのデータ整理としてまとめた中に、「ひょっとしたら、50Ωを下回るインピーダンスの場合があるのではないか」と疑えるデータがあります(この記事の2013年11月2日のデータ参照)。このデータでは、運用周波数で辛うじて50Ωを上回っていますがギリギリの状態です。
TYPE-Ⅲでは、πC型の宿命である「一度下げてから上げる」というインピーダンス変換のからくりのため、設計・実測上は40Ω程度までマッチングできるようになっており、仮に多少50Ωを多少下回ったところで問題ないわけですが、今回はこの辺りを少し考えて設計しておかないと不味そうな雰囲気

その上、このインピーダンス値の決定要素には、相変わらずFIXしていないカウンターポイズちゃんが絡むわ、雨天時の測定データが多くないわ・・・といった塩梅であり、どの程度のマージンが必要なのか決められんのですよね。神経質になるつもりはないんですが、やはりできるだけ事前検討は濃いめにした上で「作っては壊し・・・」を減らしたいんです。とは言え、ここいら辺りの試行錯誤は、あまり遠回りにはならないんじゃないかなぁ・・・と高を括っています

少し具体的になったところで、そろそろ設計に入ろうかな・・・今週末の宿題ってところですね

整合範囲の狭いアンテナカップラの可能性
2015-05-09
ALL JAが終わって以来「Lマッチ」に取り憑かれたようになっていますが、こういう「凝っている状態」は逃さずに思いのまま思考を巡らすのが楽しくもあり、稚拙なデータと駄文であってもまとめておくと、後々活用できることが多いものです。実際のもの作りは全く進みませんが、楽しい週末を過ごしています
Lマッチへの拘りは、損失の少ないインピーダンス変換の模索に他なりませんが、πマッチやTマッチ、はたまたその他のマッチング回路でも、極端な整合を行わなければ数%程度のロスで変換できるものと思っています。この辺り、先人たる諸OMが実験されていますのでそちらを参考にして頂きたいんですが、πマッチは単純に考えて「二対のLマッチ」という構成ですから、ロスが少なそうなことは他のマッチング回路よりも容易に想像できますよね(Tマッチも二対のLマッチなんですが、こちらは共振回路としての性質もより考えなければなりません)。
では、πマッチで可能な限り整合範囲を狭めたものを考察しておこう・・・というわけで、ここではGW中にまとめておいた我が釣竿君の純抵抗分に着目して整合範囲を決め、πマッチの様子を図にしてみました。

釣竿君の純抵抗のデータでは80mの「29.8Ω」が最も低かったことから、整合範囲はSWR≦1.7でよかったんですが、実際に作る場合を考慮してSWRにして0.1だけ広げた形で考えました。SWR≦1.8の整合範囲は、58.9Ωを中心とした半径が31.1Ωの円で表現できます(図の青い部分)。最も高かったのが40mの67.2Ωですが、十分に整合範囲に入っていることが判ります。
この様子を今の釣竿君に当てはめてみると、40mの純抵抗成分は50Ω後半から80Ω付近であり、この定数のπマッチで扱うのに非常に適していると言うことができます。
このようにπマッチの整合範囲は、一般的な無線機のアンテナ端子の入出力インピーダンスである50Ωより少し上の方に中心点のある円を描きます(ちなみにSWR≦3の設計では、83Ωが中心点となる±66.6Ω程度の円)。勿論、整合範囲が上記のように円にならなくてよければ、整合範囲を低め、或いは高めにシフトすることは可能です。また、Lマッチと共通して言えることは、インピーダンスの変換比率が大きくなると、必要なQ値が上がってしまうことから損失が大きくなるということです。
リアクタンス分の調整についてはどうでしょうか。ここではリアクタンス成分の整合モデルとして、「+20Ωj」を仮に置いてみます。詳説は不要かと思いますが、整合円と+20Ωjの直線が交わる点から垂線を下ろし、純抵抗の座標軸(y軸)と交わるところの読みが「+20Ωjのリアクタンス成分を持つアンテナを接続しても整合が取れる純抵抗値」となりますね。即ち、凡そ37Ωから82Ωまでが使用できる範囲と読み取れます。さらに、この範囲はマイナス側まで拡大して考えることができますから、「±20Ωjのリアクタンス成分」まで広げて考えることができます。
それではこの「±20Ωj」とは、どの程度の同調周波数のズレに当たるのかを求めてみましょう。これは、折角持っている測定器・・・アンアナ54号君の実測値で考えてみたいと思います。

アンアナ54号君ことAA-54は、左のスナップのようなグラフが表示できるほか、CSVファイルを吐き出してくれます。これを使って、先日取った釣竿君の80mのデータからリアクタンス成分・・・緑色の線の傾きを求めると「0.786Ωj/KHz」が求まりました。実際には純抵抗成分も1Ω程度動くため誤差を含みますが、このアンテナにおける「20Ωj」の周波数差は「±15.72KHz」と計算できます。調整範囲としては、このアンテナ自体の実用帯域幅を含めても若干窮屈ですね。その上、パッと仮設したアンテナの「ズレ具合」や当日の天候・当日までの天候によっては「建物や地面の湿り気」に伴う同調周波数低下が顕在化しますから、これらを追いかけるには、もう少し大きな余裕が欲しいところです。
同様に40mを見てみるとリアクタンス成分の傾きは「2.95Ωj/KHz」であり、調整範囲は特に窮屈ではありません。またしても、このπマッチ回路でイケそうな結果となり、改めて「ローバンドになればなるほど難しいわい」と思った次第。
リアクタンス分の整合については、ここまで理詰めで考えたわけではありませんが、現用のTYPE-ⅢことπC型カップラの整合範囲はかなり広く取ってあるため、40mは無論、80mでも特段の問題も無く動いているんだと思います。
以上、「Lマッチ検討推進中」である身としてはちょっと脇道ですが、次なる検討の材料となる要素のまとめでした。

Lマッチへの拘りは、損失の少ないインピーダンス変換の模索に他なりませんが、πマッチやTマッチ、はたまたその他のマッチング回路でも、極端な整合を行わなければ数%程度のロスで変換できるものと思っています。この辺り、先人たる諸OMが実験されていますのでそちらを参考にして頂きたいんですが、πマッチは単純に考えて「二対のLマッチ」という構成ですから、ロスが少なそうなことは他のマッチング回路よりも容易に想像できますよね(Tマッチも二対のLマッチなんですが、こちらは共振回路としての性質もより考えなければなりません)。
では、πマッチで可能な限り整合範囲を狭めたものを考察しておこう・・・というわけで、ここではGW中にまとめておいた我が釣竿君の純抵抗分に着目して整合範囲を決め、πマッチの様子を図にしてみました。

釣竿君の純抵抗のデータでは80mの「29.8Ω」が最も低かったことから、整合範囲はSWR≦1.7でよかったんですが、実際に作る場合を考慮してSWRにして0.1だけ広げた形で考えました。SWR≦1.8の整合範囲は、58.9Ωを中心とした半径が31.1Ωの円で表現できます(図の青い部分)。最も高かったのが40mの67.2Ωですが、十分に整合範囲に入っていることが判ります。
この様子を今の釣竿君に当てはめてみると、40mの純抵抗成分は50Ω後半から80Ω付近であり、この定数のπマッチで扱うのに非常に適していると言うことができます。
このようにπマッチの整合範囲は、一般的な無線機のアンテナ端子の入出力インピーダンスである50Ωより少し上の方に中心点のある円を描きます(ちなみにSWR≦3の設計では、83Ωが中心点となる±66.6Ω程度の円)。勿論、整合範囲が上記のように円にならなくてよければ、整合範囲を低め、或いは高めにシフトすることは可能です。また、Lマッチと共通して言えることは、インピーダンスの変換比率が大きくなると、必要なQ値が上がってしまうことから損失が大きくなるということです。
リアクタンス分の調整についてはどうでしょうか。ここではリアクタンス成分の整合モデルとして、「+20Ωj」を仮に置いてみます。詳説は不要かと思いますが、整合円と+20Ωjの直線が交わる点から垂線を下ろし、純抵抗の座標軸(y軸)と交わるところの読みが「+20Ωjのリアクタンス成分を持つアンテナを接続しても整合が取れる純抵抗値」となりますね。即ち、凡そ37Ωから82Ωまでが使用できる範囲と読み取れます。さらに、この範囲はマイナス側まで拡大して考えることができますから、「±20Ωjのリアクタンス成分」まで広げて考えることができます。
それではこの「±20Ωj」とは、どの程度の同調周波数のズレに当たるのかを求めてみましょう。これは、折角持っている測定器・・・アンアナ54号君の実測値で考えてみたいと思います。

アンアナ54号君ことAA-54は、左のスナップのようなグラフが表示できるほか、CSVファイルを吐き出してくれます。これを使って、先日取った釣竿君の80mのデータからリアクタンス成分・・・緑色の線の傾きを求めると「0.786Ωj/KHz」が求まりました。実際には純抵抗成分も1Ω程度動くため誤差を含みますが、このアンテナにおける「20Ωj」の周波数差は「±15.72KHz」と計算できます。調整範囲としては、このアンテナ自体の実用帯域幅を含めても若干窮屈ですね。その上、パッと仮設したアンテナの「ズレ具合」や当日の天候・当日までの天候によっては「建物や地面の湿り気」に伴う同調周波数低下が顕在化しますから、これらを追いかけるには、もう少し大きな余裕が欲しいところです。
同様に40mを見てみるとリアクタンス成分の傾きは「2.95Ωj/KHz」であり、調整範囲は特に窮屈ではありません。またしても、このπマッチ回路でイケそうな結果となり、改めて「ローバンドになればなるほど難しいわい」と思った次第。
リアクタンス分の整合については、ここまで理詰めで考えたわけではありませんが、現用のTYPE-ⅢことπC型カップラの整合範囲はかなり広く取ってあるため、40mは無論、80mでも特段の問題も無く動いているんだと思います。
以上、「Lマッチ検討推進中」である身としてはちょっと脇道ですが、次なる検討の材料となる要素のまとめでした。