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2ポールフィルタの中心周波数調整

2018-01-21      
 昨日は久々の休日出勤・・・その後飲み会もあったりして、今日の午前中くらいまではウダウダ過ごしていました。明日からの荒天予想に備えるべく買い出しに行きましたが、その他の時間は「2ポールのクリスタルフィルタ」の特性取りをしました。

 このフィルタは、高ゲインのIFアンプの中段や後段に挿入するためのものです。過去に2SC1855アンプを作成した際にあれこれ書籍を読んで、高ゲインのIFアンプではノイズフロアを押さえ込むために高Qのタンク回路で構成するか、或いはメインのフィルタ(帯域を決定するためのフィルタ)の邪魔にならない程度のものを挿入すると良いと”知識”としては知っていましたが、今回のIFアンプ実験で試してみるのが初めてです
 スカート特性を期待しなければ、数KHz程度の帯域幅のクリスタルフィルタは2ポール程度でできるはず・・・と考えて軽い気持ちで組んだものの、実は結構難儀なことになってしまい、記事としてまとめるまでに時間がかかってしましました。

 フィルタの設計には”Dishal Program”が大変有効のこと、さらにその算出値を使って”LTspice”でシミュレーションし、実際にブレボで組んで特性を測るという一連の方法は既に把握していますから、今回もその通りに作業を進めました。

 まずは”Dishal Program”での設計データを見てみましょう。



 メインのフィルタに影響を与えないように、3KHz程度の帯域として諸元を置いてみました。この水晶は、CWフィルタ作りで余ったものの中から、周波数が最も低いもの&二番目に低いものを前提にしていますが、そもそも銘板周波数が4096KHz付近でQuが10万以上のものでこの帯域のものを製作することに無理があって、特性グラフもかなり歪(いびつ)なものに。特に赤枠で囲んだ部分から、以下のような情報が読み取れます。

 ① 入出力インピーダンスが4KΩ程度と非常に高め
 ② 中心周波数がかなり高い
  ⇒組み合わせるメインフィルタの中心周波数は4094.92KHz

 この情報よりひとまず①に着目し、これが手頃なものになるように帯域を弄ってみました。



 帯域として1KHz弱まで狭めてやると、入出力インピーダンスが450Ωになりました。これなら50Ωとの整合には1:3のトリファイラ巻きのコイルで何とかなるし、IFアンプとして使用するMC1350の入出力インピーダンスとの整合も何とかなりそうです。問題は中心周波数が377Hzほど高いことですが、これは同調コンデンサで何とかなるんじゃないか・・・ということで、”LTspice”のチェックへ。



 ”Dishal Program"の設計結果を比較的忠実にシミュレートしています。ただ、このまま組んでも意味がありません。特にC1とC5,C8について、共振周波数を下げるために大きな容量に替えていきながら、ブレボ上で調整していくのが結構な作業になります。



 今回はクリスタルフィルタの実験治具としてスナップのような改造ブレボ・・・手前側の5穴の列を全てベタアースにしたものを使ってデータを取りながら最適値を探りました。結果的にかなり大きな容量にしないと、中心周波数が合わないことが解りました。調整結果を披露する前に最終的な値を記した回路図を。



 両端の抵抗はインピーダンス整合用のものです。LTspiceに描いた回路のC5にあたるコンデンサはネグってしまい、両端にあたる2つのコンデンサ容量を大きくしながら、いわゆるバンドパスっぽい特性になるようにC4にあたるコンデンサ容量を加減して追い込んでいきました。実測したデータを以下に。



 おやおや、天辺の方が山型になってしまっています・・・が、実はこれが精一杯の調整結果です。要は中心周波数が低すぎて、いわゆる「台形」にはできないんですね。あと300Hzくらい上げられれば、そこそこの特性になるんですがねぇ



 10KHzのスパンで見ると、スカート特性は甘いもののフィルタの効果はきちんと出そうです。低周波的にイメージしてみると、受信信号から2KHz程度上の周波数で35dBダウン程度になりますから、IFアンプ由来のノイズもかなり和らぐものと思います。

 IFアンプのサブフィルタとしての手応えは得られましたから、このフィルタを小さな基板に組んで改めて周波数特性を測定すると共に、遅延特性も取っておきたいと思います。この辺りが来週末の課題になりそうですね。工作時間、取れるかなぁ

修正 2018/01/24>
 回路図の記述が少々曖昧でした。測定に使ったAPB-3のインピーダンスを記しておきます。老爺さん、ご指摘ありがとうございました。

CW用クリスタルフィルタの設計・製作(その10:濡れ衣晴らして大団円!)

2017-08-26      
 なんか納得がいかないまま直前記事の題名に「本当に了」と宣ってしまいましたが、どうやらここのブログ主はまたしてもやらかしてしまったようです こうして実に自然に記事ネタを作り出すところなんぞ、図って止まぬ三流雑誌より”巧み”なのかも知れません・・・と、何やら怪しげな口上はさて置き、直前記事の測定結果が”The スットコドッコイ”だったことを告白したいと思います

 何がスットコドッコイだったのかというと・・・実は、前回記事では試作フィルタの”入力側”の特性を測定していたんです(無論お解りでしょうが、出力側を測定しなければなりません)。つまり、クリスタルフィルタの「反射」を見ていたんですね。天晴れ、どよよん無線技士

 まぁこれも貴重な失敗談ではありますが、やはりちゃんとしておかないと、そこそこ苦労して作った試作フィルタに何やら「汚名のレッテル」を貼りっ切りになってしまいますんで、キチンと測定し直しておきましょう。

CWクリスタルフィルタ特性

 約50msのバースト信号を与えた上で、ちゃんと”出力側"を観測・・・どうです、これなら自慢げに記事にしてもいいでしょう 与えているバースト信号のタイミングを青線(Ch2)で補足しています。

 入力先頭の”粘り”の部分・・・まぁ、遅延といってしまえばそれまでですが、7msくらいのところにピークとして現れています(敢えて・・・横軸の一目盛が5msです)が、その後は大人しく収束していき、15msが経過するまでには落ち着いています。
 一方、お尻の方も信号断から7msくらいのところで一旦収束した後に反射が見られます。これが落ち着くのに凡そ(信号断から)15ms程度掛かっていますが、入出力で凡そ同じような”暴れ”があるものの大きく破綻していない・・・やはり、実際に聴いてみた感触で「なんだ、スルーに比べて遜色ないじゃん」というのは間違っていなかったようです



 アナログオシロでも見てみました。ちょっとピンボケ・・・この方がそれっぽい感じもありますが、逆にデジタルオシロでも十分再現できていると言っていいでしょう。

 これで漸く腑に落ちた感じです。やはり、”Dishal”による設計とLTSpiseによるシミュレーション、さらに少しの治具と「粘り性」でかなりイイ感じのCWフィルタが設計・製作できることが判りました やっと大団円でしょうか・・・さぁ次はIFアンプだぁ

CW用クリスタルフィルタの設計・製作(その9:本当に了)

2017-08-23      
 夏休みが終わった途端に暑くなってきました。今の予報では今週が我慢といった気候のようですがどうなることやら・・・というのは放っておいて、バースト信号による試作フィルタの「音響」的な部分の確認をしたんで、この辺りをサラッとまとめておきましょう。

 まず、バースト信号がどんな具合かという部分・・・直前記事で紹介したアダプタとダイオードDBMを使って、どんな塩梅に間欠信号が出てくるのか見てみましょう。



 SGから与えたフィルタ周波数の信号が、アダプタ+DBMで凡そ100msにぶった切れている様子です。エッジ部分をもう少し詳細に見てみましょう。





 結構イケてるようですね・・・と自画自賛 では、この信号をフィルタに通してみましょう。



 おお、初めて見る波形・・・先っちょの方がウニョウニョしているのが判ります。横軸の1目盛が10msですから、10ms+α程度の時間が暴れています。逆にお尻の方はスパッと切れていて、残響は残していないようですね。



 先頭の16msを引き延ばしています。さながら”ラッパムシ”のようですが、10ms以内の部分はやはり”問題あり”に見えます。ただ、ザックリ100ms以上に及ばなければ音響的にはその善し悪し(歪んでいるとか、大きい・小さいとか)が、人間の耳では分からないらしいと”仕事”で教わったことがあるんで(実は15年前くらいまで、音声系の装置開発をしていたんです)、まぁ大丈夫かな・・・としたいところですが、もう少しミクロに覗いてみました。



 立ち上がりの部分は確かに少し波形が大きくなっていますが、大きな破綻を来していないようです。同様にお尻の方も確認しておきましょう。




 こちらは本当にスパッと切れています。問題ないでしょう。

 実際の”音”についても確認しました。これは、SSB復調アダプタに接続して聞いてみたんですが、フィルタを通してないときと殆ど変化がないことが確認できました。このテストの様子(っていうか、音)をmp3でアップしようとも思ったんですが、この辺りは実際のハムバンドを試聴した方がよさそう・・・というわけで、ちょっとお預けにしようと思います。IFアンプを仮組みした辺りで披露しましょうかね

 ・・・というわけで、試作フィルタ単体での試験を含め、一連の”試作フィルタができるまで”の物語()はお終いにしたいと思います。長い間お付き合い頂き、ありがとうございました。

CW用クリスタルフィルタの設計・製作(その8:ひとまず了)

2017-08-17      
 昨日は朝から雨模様、かつ涼しいを通り越して小寒い感じのする一日でしたが、空き時間はヘッポコ実験三昧の一日になりました。今回の記事で一旦手を離すべくクリスタルフィルタの入出力に着目した実験を行うことに決めていたんですが、その前に帯域のトリミングに手を染めてしまい結果がとっ散らかってしまいました。この辺りも含めて、まとめたいと思います。

 前回の記事では、入出力インピーダンスを適当に合わせ込んでやればまぁまぁの特性が実現できることが分かったものの、”ガウシャン特性もどき”を目指していた割によく見る台形っぽい特性に落ち着きそう・・・このままでは不味いと、折角取り付けたコンデンサを着脱しながら試行錯誤の作業を始めました。まずは結果から。

試作クリスタルフィルタの周波数特性

 実はこの測定、インピーダンス整合の実験を始めた後だったんです。整合云々はちょっと置いておくとして・・・ちょっと頭の天辺がポコポコしているものの、お化けなシルエットになりましたよね もう少し、このトリミング作業での変化の度合いをお見せしましょうか。



 前回記事に掲載した抵抗で整合したデータとの比較です。トランスによる整合でロスが減ってしまったためピタッと重ねられていませんが、様子は判ると思います。

 このトリミング作業・・・これは理屈にならない試行錯誤なんですが、個々のコンデンサ容量をLTSpiceで変更するとどんな風に特性が変化するのか見つつ、実際にコンデンサを取り替えて特性を実測するという何ともへっぽこな方法。大きめの容量のトリマコンデンサで探るという方法も併用しつつだったため、かなり時間が掛かりました。
 ただ、本当に闇雲だったのかというとそうではなく、例の”Dishal”で設計した手順・・・メッシュの対を意識して作業は進めました。これは、最終的な結果を見ながら説明しましょう。



 ”*”を付けたコンデンサが設計値から変更したものです。順序は以下のように進めました。

 ① X1-2間と対になるX5-6間の容量を調整(220pF⇒180pF)
 ② X2-3間と対になるX4-5間の容量を調整
   ⇒この容量には背反の関係があったため、片方の容量を増やした
    (270pF⇒330pF)
 ③ X3の同調容量を小さくした(1500pF⇒330pF)

 ①については変化が最も顕著であり、これで大凡お化けなシルエットが完成したんですが、②でさらに改善することが判り、適切な容量をトリマで探っていたら対となるコンデンサ同士が背反の関係にあったため、片側のみ容量を増やしました。③についてはそもそもの値が大きく(=1500pF)、X4の同調容量との差異があまりに大きいことから少なくなる方向に調整していった次第。

 このように”Dishal”で設計されたフィルタについては、メッシュの対を意識しながら調整は可能であることが判りました。が、これは実にナンセンスな方法・・・興味本位で実施したブレッドボードでの実験である程度の特性が見られることは判っていますから、ブレボでもう少し追い込んじゃった方がいいでしょう。さらに、小さなブレボに少し細工(グランド強化など)を施して、専用の「フィルタ実験ユニット」を作っておくのもアリでしょう。

 さぁ、お待ちかねの入出力インピーダンスに関するまとめに入りましょう。

 この記事の一番上のデータは、入出力インピーダンスの整合用にフェライトビーズに巻いた1:4のトランスを使っています。ノイズフロアが-100dBより少し低いところにあるため切れていますが、申し分ないと言っていいと思います。



 測定時の参考スナップです。フェライトビーズは最近手に入れたもので既に記事で紹介していますが、上手く動いているようです。ちなみに、7回巻きのバイファイラです。
 こんな風にラフに組んでいますが、入出力が結合しないようにある程度配慮しているつもりです。前回記事でアップにできなかった入力側のシールドもこんな風に銅テープで衝立を立てた格好で、グランドに一端を接続しています。

 なるほど、オーソドックスなトランスによる整合で上手くいくことは判りました。そこで、今度はLマッチによる測定です。



 トランスによるものと殆ど変わりません・・・って、まぁ当たり前なんですがね Lマッチは計算上「3.37μH+336.6pF」となりますが、Q換算で1.7程度にしかなりませんから、T37-2に28回巻き(3.29μH)と330pFのセラコンで”作りっぱなし”としました。どうやら、大丈夫そうですね。

 これで普通に考えられるインピーダンス整合は、前回記事の抵抗での整合を含めて網羅したと思いますが、最後にちょっとだけ「不整合の場合」に突っ込んでおきましょう。



 一番上のデータと出力側のみ200Ωにしてみたものとを重ねてみました。この程度の不整合(SWR=4)でもオツムの辺りが波打っていることが判りますね。こうなると、かなり厳格にインピーダンスを守ってやらないといけないということになりそうです。即ち、実機にこの手のクリスタルフィルタを組み込む場合には、この整合具合を「実装した状態」で測定して合わせ込んでおくことが必要なようです。

 すると、今回のようにインピーダンス変換が簡単な場合はトランス整合が視野に入るものの、本命はLマッチ(或いは同調とインピーダンス変換を兼ねたタンク回路)になると考えた方が良さそう。抵抗での整合はロスに直結することからも、Lマッチを”一等賞”と考えて良さそうです。

 クリスタルフィルタの試作に向け、水晶の諸元を測定するアダプタを作り始めたのが6月頭・・・2ヶ月以上掛かってしまったようです。歪み特性や音響的な遅延の具合など掘り下げたい部分もまだまだありますが、これにてひとまず、クリスタルフィルタの試作からは手を離そうかと思います。

CW用クリスタルフィルタの設計・製作(その7)

2017-08-15      
 先週の金曜日から長めの夏休みに突入しました。初日は比較的涼しかったんで、へたれる前にと、6月の頭からぶん回し続けているエアコン掃除をし、翌日は一族恒例となった夏の食事会・・・孫娘中心の会になってしまうのは兎も角、普段と違う動きを余儀なくされるためにクタクタとなった上、またしてもぶり返してしまった風邪っぽい症状も相まって、一昨日は休養に当てました。普段は「鼻水」とは縁遠いんですが、一年分鼻をかんだ気がします

 昨日も引き続きノンビリ過ごしつつ、午後遅くになってから例のクリスタルフィルタを基板に組み込み始め、今日は単体での味見実験を行いました。この辺りをまとめたいと思います。



 まずは基板に組んだ様子。TAKACHIの宣伝みたいになっていますが、「TNF 29-44」を使いました。そこそこコンパクトに収まりましたが、実はこれより一回り小さい基板があって、そちらに組んだ方がもう少しコンパクトになりそうです。



 スルーホール付きの基板なんで不用意なショートを起こさぬよう、水晶発振子を少し浮かすべく、百均で手芸用のビーズを買ってきました。1mmちょいは浮かすことができる上、100円でそれこそ”一生分”手に入ります 他のシチュエーションにも使えそうですね。

 さぁ、測定結果を・・・と、その前に、測定のノウハウについて。

 まずはグランド。APB-3をネットワークアナとして接続すると、基板が小さいことから「中空」で接続するような格好になり、グランドレベルが安定しません。そこで、何かの金属板をグランドに見立て、その上に配置するようにするなどの工夫が要ります。特にノイズレベル程度の低いレベルまでの測定になりますから、この辺りの「環境整備」が必要になります。



 今回はまだ味見実験ですから、とりあえずアルミケースにタッパーのフタを絶縁板として、大きな洗濯ばさみで固定しています。これなら、着脱自在ですね。

 もう一つは、入力側のコネクティングです。入力側には高周波信号を与えるわけですが、これが出力側にそのままリークすると具合が悪いことになります。フィルター回路では当たり前ですが、兎に角これを極力少なくするようにしなければなりません。そこで今回は、入力側のコネクタ付近に銅テープでシールドを施しています。上のスナップでは、丁度黄色い洗濯ばさみに隠れてしまっています アップでスナップを撮っておくべきだった・・・。

 この2つの対策で漸く、入力信号から-100dBくらいの信号が安定して読み取れるようになりました。それでは、測定結果を。



 味見測定ということで、このフィルタの入出力インピーダンスである200Ωに抵抗で整合を取っているだけですが、ブレッドボードでのお巫山戯測定と比較してかなり低いレベルまでキチンと特性が取れています。ただ、-50dBから上の特性は、ブレッドボードのものとそれ程変わりませんね。
 通過帯域の天辺から60dBダウンでの帯域幅は800Hz強ありますが、かなり切れるフィルタであることが判ります。さらにノイズレベルまでの差は80dB程度はありそうですから、IFゲイン高めの受信でも十分な減衰量が確保されると考えてよさそう。

 さて、ここでもう一つ意地悪な測定をしてみました。



 フィルタのインピーダンス整合をわざと悪くしてみました。明らかに通過帯域の特性が劣化したのが判ります。この辺りがクリスタルフィルタ製作の秘訣なんでしょうが、こうして目の当たりに見ておくのもヘッポコ実験の醍醐味

 まぁざっと、こんな風に「素」の特性を見ることができました。ここからは入出力の整合・扱いに関して、より「実機に用いる」という観点でもう少し掘り下げてみようと思います。もう一回ぐらいお付き合い頂きましょうかね・・・って、誰に

CW用クリスタルフィルタの設計・製作(その6)

2017-08-02      
 クリスタルフィルタのブレボ実験が予想外に上手くいったため、この組合せの前にシミュレーションして「帯域が狭過ぎる」と蹴ったコンデンサの組み合わせではどうなんだろうと、ちょっと思いつきで実験してみました。何といっても、ブレッドボードに挿したコンデンサを交換するだけですから、平日の帰宅後でも確認できちゃうわけです。

 コンデンサの換装は以下のように行いました。



 水晶の順序は変わりませんから、単純にコンデンサを差し替えて容量値を変えるだけの作業・・・ホンの数分で完了。四の五の言うより、結果をご覧頂きましょうかね。



 確かに帯域が全体に狭まっています。USB側の減衰域が下の方にズレる格好なのは「教科書通り」といったところでしょうか。-3dB帯域幅は200Hzより狭く、40mや80mのコンテストに使うならこちらの方がいいかも知れません。

 もう少し細かく見ると、フィルタとしての"共振域"(これ、どよよん無線技士的造語ですよ・・・念のため)の減衰量は、シミュレーションした際の-12dB程度より若干多めですが、まぁ納得できる程度に収まっているようです。この辺りも、ブレボ実験としては上出来だと思います。ただ、"共振域"の凸凹が顕在化していますね。高周波的にもう少しマシな基板に組んだ時にどうなるか・・・という部分は、広い方のフィルタでもチェックしたいところです。

 さぁ、どちらで完成形とするか迷ってしまう結果となってしまいました。ま、この辺りは週末まで待って下され

CW用クリスタルフィルタの設計・製作(その5)

2017-07-30      
 今日の千葉県北西部は少し涼しげ・・・最高気温は28℃くらいだったようで、昼食の買い物も大汗をかかずに済みました。我が家の外階段にニイニイゼミがひっくり返っていましたが、持ち上げ上げたらワシワシ動くんで、そのまま放り投げると元気よく飛んでいきました。

 セミは、図体の割に羽根が華奢なことから「飛ぶこと」がそれ程得意ではなく、着地を失敗して転げてしまうと体重のあまり「上方向」に飛ぶことが困難。陽向の地面や屋上、階段や踊り場に転げると、そのまま死んじゃうことが間々あります。特に仰向けになってしまうと致命傷であり、起き上がること亀のごとし・・・そう言えばセミは「カメムシ目」だったりします

 セミの一生は置いといて()・・・今日は待望のクリスタルフィルタの「味見」をしました。Dishalの設計の理屈でシミュレーション上は手応えを掴んだものの、実際設計通りに動くんだかどうだかは半信半疑。それでも、今のところ充てにすべき別の方法もないわけですから、何とか上手くいって欲しいと言ったところ。
 本当は、高周波的に安定な基板に組み込みたいところですが、組んじゃった挙げ句「なんじゃこりゃぁぁぁ・・・」(「太陽にほえろ」の名シーンより)となるのもナンセンスなんで、幾ら味見とは言え躊躇は隠せない「ブレッドボードへの組み込み」を試してみることにしました。

 今回のフィルタの中心周波数は4.095MHz辺りとかなり低い周波数であるとは言うものの、ヒューヒュー、チャレンジャーやね・・・って、おい と戯れ言は置いといて、ブレッドボードに組んだクリスタルフィルタの勇姿をご覧じろ



 スンバラしいでしょ 入力インピーダンス整合用の抵抗以外、足という足を切っておらず、高周波的にかなり劣悪な組み方になっています。まぁ、これで「正常な手応え」があったらキチンと組むことにしよう・・・ということで、お待ちかねの特性も披露しましょうか。



 この状態で細かく見ても仕方が無いわけですが、ちょっとだけ考察しておこうと思います。なお、入出力のインピーダンス整合は抵抗による擬似的なものであること、コンデンサ容量も「選別なし」(銘板容量のものを無造作にチョイス)で組んでいることも付け加えておきます。

 ・全体像としてガウシャン特性にはなっておらず、「バターワース」と「リプルが少ないチェビシェフ」のあいのこのような特性。
 ・”共振域”(通過帯域の天辺の平たい部分、どよよん無線技士的造語)の減衰量は大凡9~10dB程度であり、これはほぼシミュレーション通り。
 ・-3dBの帯域は大凡300Hzで、設計値より広め。
 ・減衰域は”共振域”から55乃至60dBダウンであり、ブレボによる測定(入出力のアイソレーションが良くない)、脆弱なグランドに起因するものと推定。

 それにしてもどうです、そこそこ使えそうな特性になっているとは思いませんか 無作為にオクで購入した低価格(@30円)の水晶でこんな特性のクリスタルフィルタが作れれば、受信機自作の幅が広がりますよね  専用の基板(というか、高周波的にイケてる基板)に組んでみて精査する必要はあるものの、「優秀なツールとやる気」でかなり良好なフィルタ製作はできそうです では、自信を持って「最終形」にしてみましょうか・・・乞う、ご期待

CW用クリスタルフィルタの設計・製作(その4:設計変更)

2017-06-30      
 一昨日、早くもニイニイゼミの声を聞きました。ここ数年は7月に入ってからでしたから随分早いお目見え・・・虫たちの方が気候変動に敏感ですから、ひょっとすると夏が早く来るという暗示でしょうか

 CW用のクリスタルフィルタ設計は一旦終了した筈だったんですが、周波数特性をしげしげ眺めていたら-3dBの帯域幅が140Hzほど・・・ちょっと帯域幅が狭すぎることに気付きました。そこでもう少し帯域を広げ、当初の設計値である「250Hz@-3dB」くらいになるよう再設計してみました。
 今回のフィルタ製作における帯域幅の調整はそれこそLTspiceであれこれ弄って確認して進めるわけで、そういう意味では試行錯誤を繰り返せばいいんでしょうが、やはりある程度当たりを付けてからの微調整の方が、今後も幾度かは行うであろうフィルタ製作には参考になると思い、当初の設計パラメータを変えてみました。

 「250Hz@-3dB」くらいのフィルタを前提に"Dishal"に与える帯域幅を200Hzにし、少々エッジが鈍って広がるのかと思いきや逆に狭くなったんですから、350Hzくらいになるように設計を進めれば良いのではないか・・・ということで、早速"Dishal"を動かしてみました。



 まず、結合コンデンサ(Ckxx)は軒並み200pF台になっており、先の設計結果より個々の水晶の結合度合いが上がったことが判ります。また、同調コンデンサを導く「等価周波数オフセット」も大きくなり、帯域を広げる方向に調整されたことも判るでしょう。
 では、この結果で各コンデンサの値を置き直してから、例によって「お楽しみ試行錯誤」(ついに、お楽しみになったわけね・・・)で特性を追い込んでみましょう。



 これでは、何が変わったのか判りませんね では、前回ブログの設計結果とこのシミュレーション結果を重ねてみましょう。



 シミュレーションする周波数幅を同じにして重ねてみました。黄緑色のシルエットが今回設計し直したものです。-3dBの帯域幅が270Hzくらいになりました。コンテストで目一杯混んでいる40mでは250Hzでもちょっと心許ないときがありますが、こちらの方が実用的ではありそうです。また、通過ロスも2,3dBは改善しているように見えますね。



 最終的なコンデンサの値も上手く収まりました。これ以上は弄らず、実際の製作に進めようと思いますのでご安心を・・・って、誰に言ってるんだ

CW用クリスタルフィルタの設計・製作(その3)

2017-06-27      
 一昨日の日曜、我が愚息が急に帰ってきました。単に「序でにちょっと寄っただけ」という割に遅めの昼食を喰らい、宝塚記念に興じ(負けました)、あれこれダベったら帰って行きました。お陰で、土日中心のヘッポコ工作・・・フィルタの設計に割ける時間が減ってしまいましたが、まぁ元気で何よりでした 

 佳境を迎えたフィルタの設計フェーズ・・・LTspiceによるシミュレーションで望む特性が再現できるところまで追い込むという「試行錯誤」の作業がメインですが、何とか「こんなモンじゃろう・・・」というところまで持って行くことができたんで、この辺りをまとめちゃいたいと思います。

0.本編に入る前に・・・"Rm"の測定は必須

 既に注釈を入れておきましたが、前々回記事でQuに関する説明を少々雑に書き飛ばしてしまった点について、ここで補足しておきます。

 Quに関しては、前々回記事に書いた通り"Dishal"による設計では確かに使用しませんが、設計の終盤で実際に使用する水晶の諸元を使ってシミュレーションする際、その結果をより正確に導くために、水晶の等価回路上の抵抗値"Rm"(水晶の損失表現)が必要であり、何とかしてこの値を導き出す必要があります。
 自分は幸いにも、APB-3という強力な武器とちょっとした治具を用意して凌ぎましたが、仮にこうしたネットアナっぽい環境が整わなくても、何とかして"Rm”を求める必要があります。これには、

 ・水晶に安定して信号供給できる入出力インピーダンスがきちんと定まった治具
  >自分の過去記事を参考に。掲載した回路図の余計なスイッチ類を取っ払えばいいでしょう。
 ・フィルタに使う水晶のfs付近の周波数で安定に信号が供給できる信号源(いわゆるSG)
 ・終端型の小電力計(終端抵抗+検波ダイオード+DMMくらいの構成でよい)
 ・50~100Ωくらいのボリューム

等の準備が必要です。これらを適切に接続し、水晶の直列共振周波数(fs付近で最大出力になる周波数を探るとそれが直列共振周波数になります)を通して出力された電力を測っておき、水晶をボリュームに替えて同じ電力値になるように調整した際のボリュームが示す抵抗値を"Rm”とすればよいでしょう。
 なお、"Rm"が求まればQuも計算で求められますから、以降の自作データとして活用できますね。

 では、前回記事で説明した「フォーマルな水晶配置」の方で設計を進めたいと思います。

1.コンデンサ容量を丸めてシミュレート

 前回記事では、各コンデンサ容量を”Dishal”とサブプログラム"Xtal Tuning"の算出値としてシミュレートしましたが、実際に市販されている(手に入る)コンデンサ容量は言わば「飛び飛びの値」であり、幾つかのコンデンサを並列に接続して(まぁ、合成容量が合えば直列接続でも良いんですが・・・)調整する必要がある値になっていますね。ところが、実際にはある程度アバウトでもイケちゃうんですよ この辺りについてまとめましょう。



 上の図の上段は優秀なプログラム達に算出された結果としての容量値、下はこれらの容量値を市販で手に入るコンデンサ容量に置き換えたものです。これでシミュレーションしてみましょう。



 左が設計値のまま、右が丸めた後です。細かく見ると勿論差はありますが、極端な変化はありませんね。こんな風に、コンデンサの容量についても、シミュレーションレベルでの確認ではあるものの「ある程度丸められる」と結論して良さそうです

2.水晶の損失を入れてみる

 ”Dishal”と"Xtal Tuning"では、水晶の損失が無いものとして同調容量・結合容量が算出されることから、ある程度設計条件が整った段階で実際に使用する水晶のQuについて考慮する必要があります。ここでは、別途測定しておいた"Rm”を使ってシミュレーションしてみましょう。
 この作業は、これまで抵抗を省いてQuが無限大として扱ってきたLTspiceの水晶等価回路に抵抗"Rm"を入れ、「損失のある共振回路」にすることで行います。



 どうですか 何やらなだらかな形になって、よりお化けっぽくなったでしょう 水晶の共振度合いが下がったことで急峻な変化部分が鈍り、却って扱い易い感じになっていますね。ただ、喜んでばかりもいられないのはフィルタ全体としての減衰量です。上の「火山型」のグラフの天辺がフラットだと仮定すると、7~8dBほど減衰しているようです。

 こんな風になってくれれば、減衰量を除けばほぼ設計通りのものが得られたと言えます。そもそも「チェビシェフ、帯域内リプル1dB」で設計した上、市販のコンデンサ容量ですからね。それでも、こんな感じのフィルタができるかもという手応え・・・貪欲に、もう一歩掘り下げて設計の仕上げとしましょうか。

3.正規化分布的なフォルムで設計完了

 ここからは全く論理的でない世界です。何でもかんでも理屈にしなくちゃなんねぇ御仁には耐えられないかも知れませんが、上等なシミュレータがあればこんなこともできる・・・というところかな 直ぐ上に現れたお化けはお化けとして()、もっとイイ感じのお化け・・・「ガウシャン」たら言う正規化分布っぽいフォルムを目指してみましょうか。

 ちょっと話は逸れますが、2ポール以上のフィルタを作ったこと・・・っていうか調整したことがある方はご存じかと思いますが、双峰形から単峰形まで特性が変わっていくフィーリングを持っていると、これから行う「怒濤の試行錯誤」を楽しめるかも知れませんよ では、追い込んでみましょう。



 如何でしょう、まずまずのフォルムになったと思いませんか 水晶の諸元以外の部分をあれこれ弄っています。この辺りを詳細に見てみましょう。



 かなり試行錯誤を繰り返しました。入出力の負荷インピーダンスまで弄ったことが判りますね。この負荷インピーダンスは、最終的にフィルタとして製作した際に調整し易い値になるように弄った次第。200Ωであれば、1:4のインピーダンス変換トランスで上手く50Ωに整合できますからね
 コンデンサ容量については、あるコンデンサに着目して容量を上下に変化させると周波数特性の変化傾向が判ってきますから、これを頼りに調整して追い込んでいきました。

 何れにせよ、LTspiceに何度も計算させれば良いだけの話ですから、一杯飲みながら(え~)半日も探っていれば、この程度の特性までは追い込めそうです。本当は理屈になればカッチョイイんですが、まぁこうした「数打ちゃ当たるぜ、試行錯誤」でも形にはなるようです。本当は10pF刻み程度でもう少し追い込んでやるともっと良さげな特性になるんですが、実際に使うコンデンサ容量の誤差を含め、一度はこの程度追い込んだ状態で組んでみた方が「後学のため」には良さそうなんで、設計フェーズはこれで一応お終いにしたいと思います。

 残るは実際の製作・・・やはり休日利用のヘッポコ製作になると思いますが、今週末&来週末は予定がそこそこ詰まっていますんで、もの好きなそこの貴方 少々気長にお待ち下され

CW用クリスタルフィルタの設計・製作(その2)

2017-06-24      
 前回記事では、”Dishal”の設計作業についてその「乗っけ」の様子にフォーカスしました。基準となる水晶を用いて付随するコンデンサの容量が求められたわけですが、これがどんな特性になるのかを知るためにはこれまた大変優れたツールを紹介する運びとなるんです。それもメーカ製でありながら「無償」という代物・・・思えば、オープン系のソフトウェア開発がポピュラーになった頃から、こうした有益なソフトが無償提供されるようになったような気がします・・・って、またしても大幅に脱線しそうなんでこれくらいにして 今さら改まっての紹介もおこがましい”LTspice"の登場です。

 このツールについては、それこそ書籍まで「完備」されていますからこの記事では詳しい説明はせず、専ら”ユーザ”として6ポールフィルタの特性を「観る道具」として活用します。

1.LTspiceでシミュレート

 まず、前回記事でフィルタの基準周波数を「こいつ」と決めた#2の水晶の諸元(Cpは今回使用する水晶の平均値:4.0pF)を使って、6個の水晶が全部同じだという仮定でシミュレーションしてみました。



 このシミュレーションでは、各水晶の等価回路から抵抗を省いています。これは、"Dishal"の計算の前提が「損失のない水晶」・・・言い換えるとQuが無限大の水晶を使った計算となるためです。さらに、全ての水晶が「同一」となれば、設計通りの結果が得られるのは当たり前なんですが、ここで思わず唸ったのは"LTspice"で忠実にこの様子を再現できたこと 今後の設計上の調整にも安心して使えることが判りました。

 それにしても、”Dishal”の設計結果を見事に再現していますね。”はじめ人間ギャートルズに登場する火山"のようですが()、特性的には大変綺麗です。0.1dBで設計したBW内の極少リプルがこのグラフィックにも凸凹として見えています。ただ、実際には0.2dB程度のリプルのようです(拡大して確認)。さらに、この縮尺では判り難いですが、このフィルタの中心周波数は大凡”Dishal”の設計結果である"4094.791KHz”になっています。

 全く同じ諸元の水晶の準備はほぼ不可能ですが、もし同じようなもの(=許容にたえるもの)が必要個数準備できると、こんな風に綺麗な特性(=意図した特性)のフィルタが作れるかも知れないということを、このシミュレーションは物語っています。

2.#2の水晶と組み合わせる水晶の決定

 ここで一旦ステップバック 少々荒っぽくまとめた「その1」ですが、肝心の「水晶の順番」を決める部分・・・#2とその対を成す水晶のチョイスについてクローズアップします。表を再掲。



 この表はfsを昇順に並べたものです。”Dishal”のフィルタ設計では、基準周波数にする水晶はばらついた中のほぼ真ん中辺りのものを#2の位置に選ぶと良いようで、さらに対を成す#n-1・・・#5(nはポール数、今回は6ポールのため#5)にはそれより少し低い周波数のものを置く必要があります。逆に言うと、#2より低い周波数のものしか#5には採用できませんから、#2と#5の組合せはこのfs順の表である程度決まってしまいます。さらに、#2と#5は近い周波数のものを選ぶと『コンデンサ減らしの恩恵』が受けられます この辺りを少し詳説してみましょう。

 まず、真ん中辺りを選択するとなると①4094.665KHz、②4094.671KHzが良さそうですね。では、まずは①を選んで”Dishal”に設計を進めて貰いましょう。



 実はここから先の設計は、既に出ている結果を基に「サブプログラム」を使ってコンデンサ容量の補正を行います。サブプログラムの"Xtal Tuning"は、”Dishal”のメニューバーの"Xtal"を押すとドロップダウンリストの3番目に表示され、これを押すとポップアップされます。ポップアップされたプログラムの中に既にあれこれ数字が入っているのが判りますね。

 入力フィールド中の青字の部分は、Ck12、Ck23の計算結果を含め基準周波数として使った#2の諸元が自動的に設定されます。一方、2つの赤字の入力フィールドにはポップアップ直後には適当な値が設定されていますので、ここに調整したい水晶のfsと”Nominal offset"を入力します。
 fsについては、①に最も近くて低いfsである4094.663KHzを素直に入力すれば良いのですが、”Nominal offset"がよく解りませんよね この英単語が日本語になり難いんですが、名目上の⇒公称の⇒表向きの・・・要は調整に必要となる表向きのオフセットということですって、意味不明でしょ このフィールドの意味は置いといて、ここで行いたいのは#5の水晶に付加するコンデンサの容量を求めたいわけです。この場合は、#2とのオフセットは無い方が良いわけですから「0」を入れましょう。

 さぁ、”Calculate”を押してみましょう・・・”Tuning Capacitance”は「13582pF」(≒0.014μF)と出ました。かなり大きな容量ですね。

 では、もう一つ・・・②の方を計算してみましょう。
 これは、”Dishal”に②の水晶の諸元を「こいつが#2だぜぇ」と教えて(入力して)やった上で、上と同じように”Xtal Tuning"をポップアップさせればOK。早速、結果を見てみましょうか。



 「4588pF」になりました。これでも同調容量としては大きい値ですが、やはり①の方が断然大きい値ですね。

 このように、#2と対を成す水晶のfsが近い程、直列に付加する同調コンデンサの容量が大きくなる・・・そうなんです、そもそも調整すべき周波数オフセットが小さければ、このコンデンサを省いても周波数特性への影響は僅かです。
 先に書いた「コンデンサ減らしの恩恵」とは、実はこのことです。即ち、基準周波数を定義する#2の水晶と対を成す#n-1の水晶について、fsをできるだけ近い(かつ低い)周波数のものを選択すると、#n-1の周波数を調整するための同調コンデンサを追加しなくてもよくなります。ま、コンデンサ1つ節約することに意味があるかというと謎ですが、「どよよん流設計法」としては①をチョイスしたわけです。

 ちなみに、どの程度容量が大きかったら省略可能か・・・これは製作するフィルタの帯域幅と中心(基準)周波数によって違ってきますが、数千pF以上(4000pFくらいが目安かな)であれば省いても大丈夫そうです。つまり、②のチョイスでも大丈夫そうです。この辺りは、LTspiceであれこれ確かめてみる方がいいでしょう。

3.フォーマルな水晶配置でシミュレート

 #2と#5が決まりました。残りの水晶にはそれぞれ同調コンデンサが接続されfsが調整できるため、ある程度自由にチョイスすることができますが、同調コンデンサの容量があまりに小さくなると損失が大きくなり上手くありません。
 同調コンデンサの容量は既に計算されており、"Dishal"の左下に表示されている「Ck1=504.7pF、Ck3=1384pF」がそれです。この値は#2の水晶と同じものを使用した場合という仮の計算値ですが、この値からなるべくかけ離れないように水晶を選び出す・・・直感的には判り難いところですね。

 このCk1,2の値の横に、何やら意味不明な周波数が書いてあります。題名は「Eqiv. Freq. Offset(Hz)」・・・等価周波数オフセットとでも訳しましょうか。これは、Ck1,3の容量をオフセットに換算した周波数という意味です。接続する水晶のfsは#2のfsからズレていますから、この等価オフセットと接続する水晶のfsのズレを加算或いは減算して再度きちんとしたオフセットを計算し直し、最終的にこれを同調容量として算出できれば水晶毎のズレがきちんと吸収されます。この再計算を行うのが"Xtal Tuning"の役割です。

 ここで注意すべきは、Ck1(54Hz)の方がCk3(20Hz)より高い周波数へのシフトが必要だということです。つまり、Ck1が接続される#1,#6の水晶には、採用する水晶の中でfsが高いもの(上の表では4094.678KHzと4094.672KHz)をチョイスすればよく、これを常套手段と考えて良いと思います。6ポールの場合はこれで全ての配置が決まってしまいますね。



 では、この順序で同調コンデンサを計算してひとまずフィルタとして設計完了まで持って行きましょう。まずはCs1を接続する#1から。Cs1の等価周波数オフセットは「54Hz」であることは判っていますから、これを上手く和訳できない"Nominal Offset"に入力し、#1に採用する水晶のfsである4094.672KHzを使って"Xtal Tuning"に計算させます。



 「583pF」が再計算された同調容量です。こんな風に至極簡単に再計算できますから、「試行錯誤、上等」的な方に向いていそうです・・・って、正に自分向き

 この要領で#6を、さらに等価周波数オフセットを「20Hz」として#3,#4の再計算を行うと、全ての同調容量が求まります。結合コンデンサは前回記事で求めてありますから、これで全て揃いました。早速、シミュレーションしてみましょう。



 う~ん・・・本物の火山のようになってしまいましたね フラットな筈の天辺の部分は3.3dBくらいの範囲で波打っています。つまり、このまま組んだらあまり上手くないということですね。

 そうそう、いまさらですが、前回記事に書いた「#の謎」はお解り頂けたんじゃないかな

4.フォーマルな配置でない場合の様子

 そもそも前回記事にも登場した「選択した水晶」の表にも既に水晶の順序を示す番号が記してありますが、これは#2,5は同じですがフォーマルな方法でチョイスしなかった場合の一例です。これをシミュレートしてみましょう。



 横風を浴びた幽霊のようになっています 天辺の平坦部分はフォーマルのものより広くなっていますが、その代わりに周波数が高い側の縁が5dBほどディップしているのが判ります。また、-40dB辺りの帯域が若干広くなっていることも判るでしょう。ただ、フィルタ特性の体は成していますね。

 このように初期設計の時点では、6ポールくらいのフィルタで今回使う水晶のようにfsの広がり具合があまり大きくなければ、"Xtal Tuning"の調整に任せてある程度ラフに考えて良さそうです。

 前回に続いて、また記事が長めになってしまいましたが、”Dishal”を使った設計はこれでお終い・・・次回はもっと実際の水晶に近付けて、フィルタ設計を完了させたいと思います。
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アパマンというハンデにさらにQRPまで課し、失敗連続のヘッポコリグや周辺機器の製作・・・趣味というより「荒行」か!?

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