やっとケースインさせたCWオーディオフィルタ
2019-12-01
今年の締め括りたる「極月」を迎えました。急峻な秋⇒冬の交代劇で、ここ数日は晩秋というより初冬の有様・・・しかし、我が集合住宅の北向きの階段では綺麗な女郎蜘蛛がまだ居場所を主張しており、人間の方が若干避けて通るようなことになっています。それにしても、少し青味を帯びた蜘蛛が寒風に揺れていると部屋の中に入れてあげたくなりますが、まぁそれは止めておきましょうかね。
少し前に温調ハンダごて・・・gootの「PX-201」を手に入れたのをきっかけに、電子工作熱が結構上がってきました。昨日は、このハンダごてに初めて通電し、中〇製の同軸切替器を分解してみました。
少し前に温調ハンダごて・・・gootの「PX-201」を手に入れたのをきっかけに、電子工作熱が結構上がってきました。昨日は、このハンダごてに初めて通電し、中〇製の同軸切替器を分解してみました。
この切替器の分解はコネクタからビニール線を外すことが殆どでしたが、金属ケースに直付けのMコネのグランドに付いているビニール線を外すためには最大出力でギリギリセーフ、逆にMコネの芯線側に付いているビニール線外しなら、出力をかなり絞っても外せる・・・などなど、ハンダごてをあてた際に熱が逃げる様子と温度調整機能でそれがどんな風に補われるのかを調べながら、数時間戯れていました。
温調ハンダごての優れている点は、ハンダ付け(或いは、ハンダ付けで接続された部品やリード線の脱着)の際に奪われてしまう熱をあっという間に補って温度をできる限り補ってくれるところ。これによって、連続的に同じような部品を取り付けたり取り外したりする場合に大変上手に動いてくれそうです。
さて、今日は随分長いことバラックで使っていたCWオーディオフィルタのケーシングをしました。

ゴム足未装着ですが、そこそこの面構えになりました。真ん中のLEDは秋月の3φの超高輝度の奴を千石電商のブラケットに入れたもので、何と100KΩの抵抗をシリーズに入れています。それこそ数十nAしか流れていませんが、パイロットランプとしては超優秀・・・結構明るいです。
随分と時間が掛かりましたが、漸くCWオーディオフィルタは完成となりました。こうしてケースに収めると、作って良かったなぁ・・・と改めて実感しますね

今更ながら、CW用オーディオフィルタ製作(その製造と試運転)
2019-05-27
「散々シミュレートしたんだし、まぁそれほど複雑な回路でもないし・・・」と自分に言い聞かせて部品を集め、漸く製作に漕ぎ着けたCW用のオーディオフィルタですが、"WW WPX CW”で試運転できるように焦り気味でバラック完成となりました。コンテストでの使用感を含め、この辺りを今回記事にしましょう。
まずは、お決まりの回路図のご披露から。

またしても”万能基板”に組むべく、オペアンプの”足”を意識した実体配線っぽい回路図にしました。原本は、シミュレートし尽くした感のあるLTspiceの回路・・・どこも弄らずそのままの定数で組んでいます。
BPFを構成する抵抗は”金皮”の1%誤差を頼りにしつつも2本購入し、我がラボ(って、そんなに立派だっけ
)の”抵抗値測定装置”である岩通のレトロテスターで値を測り、より公称値(表示値)に近いものをチョイス。その他の部位の抵抗は、手持ちのカーボン抵抗です。
コンデンサについては先のブログで詳説したように、公称0.033μFのものを2つ選んで容量を足して2倍の容量”0.066μF”になるよう10個購入したコンデンサを組み合わせて容量を測り、結果的に0.066μF ± 0.001μFになるように合わせました。今回使用したコンデンサの容量の精度は一般的な”J”ランクで「±5%の精度」を保証していますが、実際にはもう少し精度が高く(10個とも±2%以内)、かなり上手い具合に選び出すことができました。
中心周波数を合わせ込むためのボリュームには500Ωの10回転ポテンショメータ(Bカーブ)を使い、中心周波数の調整が楽になるようにしました。減速比が大きいと中心周波数の合わせ込みに難儀するだろうとも思いましたが、ひとまずはこれでチャレンジ。
電源用のオペアンプは手持ちで消費電流が小さい”LM358”を選びましたが、最終的には回路図にある”NJM062”に交換しています。
さて、基板に組んだら直ぐにチェックしたいのは当たり前・・・とばかりに、WPXコンテスト参戦直前にバラックで完成したこのCWフィルタを、適当に調整してコンテストの初日の夜から使ってみたんですが、何やらあまりインパクトのあるような結果にならずションボリ
それでも消費電流を測ってみたら4.3mA程・・・目標である「200mAHの006P風充電電池」で24Hどころか48Hのコンテストにも”付けっぱなし”でイケそうな値であることに満足し、WPX初日の夜間参戦終了と共にこのフィルタもQRT
翌日起きたら即、消費電流のさらなる低減に向けてLM358をNJM062に換装。ところが、音が割れてしまうんです。おかしいなぁと見直すと、何と換装したのが全然関係の無い8本足。NJM062を購入した際に”序で”に購入したシリアルメモリでした。幾らシルバーアイ(老眼)とは言え、こんなエラーは初めてじゃないかな
NJM062にちゃんと換装して消費電流を測ったら3.9mAになり、この点は想定以上の結果が出て満足、満足
電池式の回路では、たった0.4mAの削減でも結構嬉しいわけですよ
続いてAPB-3を持ち出し、個々のBPFをきちんと調整しましたが、やはりあまりいい感じ(想像していた感じ)にならず
ただ、先頭のBPFの調整がかなりブロードであることに違和感を感じ、基板の接続パターンを確認したら、先頭のBPFの接続に不具合を発見
これを直したら、シミュレーション通りの特性が得られるようになりました。
さぁ、驚きの周波数特性は・・・

シミュレーション結果がほぼそのままに再現できています。それも、3つのBPFの中心周波数でそれぞれ一番出力が大きくなるように調整しただけですから、本当におっ魂消ましたよ。先にCW用のクリスタルフィルタの試作を行い、その時もLTspiceの実力に脱帽でしたが、今回も脱帽しきり・・・本当に凄いなぁ
さて、WPXコンテストの2日目はこのフィルタを使って参戦。
まず、入力のボリューム(済みません、上の回路図には無いです)で入力をかなり大きくして「五月蠅いと感じる音量」にしてみましたが、音の歪み等は皆無。フィルタ独特の変な音の劣化も無し。
ノイズのある状態では流石にノイズが変調された音がバックグランドで聞こえるものの、主戦力機のTS-590の250Hz程度の絞り込みより了解度はよくなりました。ただ、TS-590のフィルタのBWを500Hz以下にしないと、TS-590のルーフィングフィルタが広くなってしまい(6KHz)、この範囲の強い局でAGCが動くために上手くありません。
一方、DXコンテストでEUをS&Pする際の「TS-590のATTをオン」にしての運用(これは、過去のコンテスト参戦記のあちこちに書いてあります)ではノイズフロアが下がるため、このフィルタの本領発揮。上記のAGCの邪魔も殆どされなくなり、目的信号だけを聴いているような感じになりました。これが、このフィルタ製作の最大の収穫
また、隣接局をどの程度フィルタリングしてくれるかは、500Hzのクリスタルフィルタよりいい感じ・・・かなり実用的なものができたんじゃないかなと自負しています。
闇雲に高QのBPFをこしらえてピーキーなCWトーンを聴くより、ちょっとしたシミュレーションで大凡の特性を知ってから製作する・・・今のご時世の製作モノはこれが王道かも知れません。勿論、行き当たりばったりの「調整ありきのアナログ回路」も相変わらず興味が湧きますがね
最後に、実験風景をスナップショット

小型ケースに入れれば完成・・・ケース加工の模様はまたの機会として、CW用オーディオフィルタの製作はここまでとしておきます。
まずは、お決まりの回路図のご披露から。

またしても”万能基板”に組むべく、オペアンプの”足”を意識した実体配線っぽい回路図にしました。原本は、シミュレートし尽くした感のあるLTspiceの回路・・・どこも弄らずそのままの定数で組んでいます。
BPFを構成する抵抗は”金皮”の1%誤差を頼りにしつつも2本購入し、我がラボ(って、そんなに立派だっけ

コンデンサについては先のブログで詳説したように、公称0.033μFのものを2つ選んで容量を足して2倍の容量”0.066μF”になるよう10個購入したコンデンサを組み合わせて容量を測り、結果的に0.066μF ± 0.001μFになるように合わせました。今回使用したコンデンサの容量の精度は一般的な”J”ランクで「±5%の精度」を保証していますが、実際にはもう少し精度が高く(10個とも±2%以内)、かなり上手い具合に選び出すことができました。
中心周波数を合わせ込むためのボリュームには500Ωの10回転ポテンショメータ(Bカーブ)を使い、中心周波数の調整が楽になるようにしました。減速比が大きいと中心周波数の合わせ込みに難儀するだろうとも思いましたが、ひとまずはこれでチャレンジ。
電源用のオペアンプは手持ちで消費電流が小さい”LM358”を選びましたが、最終的には回路図にある”NJM062”に交換しています。
さて、基板に組んだら直ぐにチェックしたいのは当たり前・・・とばかりに、WPXコンテスト参戦直前にバラックで完成したこのCWフィルタを、適当に調整してコンテストの初日の夜から使ってみたんですが、何やらあまりインパクトのあるような結果にならずションボリ


翌日起きたら即、消費電流のさらなる低減に向けてLM358をNJM062に換装。ところが、音が割れてしまうんです。おかしいなぁと見直すと、何と換装したのが全然関係の無い8本足。NJM062を購入した際に”序で”に購入したシリアルメモリでした。幾らシルバーアイ(老眼)とは言え、こんなエラーは初めてじゃないかな



続いてAPB-3を持ち出し、個々のBPFをきちんと調整しましたが、やはりあまりいい感じ(想像していた感じ)にならず


さぁ、驚きの周波数特性は・・・


シミュレーション結果がほぼそのままに再現できています。それも、3つのBPFの中心周波数でそれぞれ一番出力が大きくなるように調整しただけですから、本当におっ魂消ましたよ。先にCW用のクリスタルフィルタの試作を行い、その時もLTspiceの実力に脱帽でしたが、今回も脱帽しきり・・・本当に凄いなぁ

さて、WPXコンテストの2日目はこのフィルタを使って参戦。
まず、入力のボリューム(済みません、上の回路図には無いです)で入力をかなり大きくして「五月蠅いと感じる音量」にしてみましたが、音の歪み等は皆無。フィルタ独特の変な音の劣化も無し。
ノイズのある状態では流石にノイズが変調された音がバックグランドで聞こえるものの、主戦力機のTS-590の250Hz程度の絞り込みより了解度はよくなりました。ただ、TS-590のフィルタのBWを500Hz以下にしないと、TS-590のルーフィングフィルタが広くなってしまい(6KHz)、この範囲の強い局でAGCが動くために上手くありません。
一方、DXコンテストでEUをS&Pする際の「TS-590のATTをオン」にしての運用(これは、過去のコンテスト参戦記のあちこちに書いてあります)ではノイズフロアが下がるため、このフィルタの本領発揮。上記のAGCの邪魔も殆どされなくなり、目的信号だけを聴いているような感じになりました。これが、このフィルタ製作の最大の収穫

また、隣接局をどの程度フィルタリングしてくれるかは、500Hzのクリスタルフィルタよりいい感じ・・・かなり実用的なものができたんじゃないかなと自負しています。
闇雲に高QのBPFをこしらえてピーキーなCWトーンを聴くより、ちょっとしたシミュレーションで大凡の特性を知ってから製作する・・・今のご時世の製作モノはこれが王道かも知れません。勿論、行き当たりばったりの「調整ありきのアナログ回路」も相変わらず興味が湧きますがね

最後に、実験風景をスナップショット


小型ケースに入れれば完成・・・ケース加工の模様はまたの機会として、CW用オーディオフィルタの製作はここまでとしておきます。
今更ながら、CW用オーディオフィルタ製作(その模擬)
2019-05-18
実はこのところ仕事で移動が多かったため、秋葉原に寄ってはBPFの部品を購入して揃っちゃってたりします。勿論、シミュレーションは完了・・・上手く動きそうな手応えもあり、それほど複雑な回路でもありませんから、この週末にバラックで組み立ててしまいたいんですが、流石に難しいかなぁ
前回記事では、実現機能の確認とシミュレーション前のヘッポコ実験についてまとめました。今回はシミュレーションの様子などを記したいと思います。まずは先に、シミュレーションが済んだ回路を発表してしまいましょう。

回路の骨組みたるオペアンプは電池駆動を前提にすべく、某秋月で売っている消費電流が小さいものの中からNJM3404を選び、一昨日購入しました。後からこの後継のNJM13404も売っていることに気づき、しかも10円安い・・・ちょっぴり損しちゃいました
NJM3404のspiceモデルは新日本無線のサイトからダウンロードできますよ。
各オペアンプは、回路図中のU1がバッファでありチョイ足し程度に増幅、U2からU4がBPFです。回路図の左側は仮想グランドを構成する部分ですが、実際にはここにもオペアンプでスプリッタを構成します。つまり、"8本足"が全部で3つという構成です。
BPFは教科書通りの設計ですが、コンデンサの値については0.033μFで統一しました。これは、多めに購入して実際の容量を測定して選別できるようにするためです。
一方、BPFを構成する抵抗(各3本)は1%誤差の金属皮膜抵抗を使うことを前提に、E24系で片付けられるようにしました。また、BPF個々に周波数の微調整ができるよう3つの半固定抵抗(VRx)を入れてあります。これは500Ωのボリュームを想定し、ほぼ真ん中辺りで調整できるように考えてあります。
入力端にある"Vol"と表示している抵抗は、実際に組み立てる際に10KΩのボリュームを置くため、ボリュームを全開にしたイメージで入れてあります。
入力側のC1、ヘッドホンが接続されるOUT側のC8は、フィルタの特性に影響が出ない値を探り、さらに少し余裕を持たせています。最終端の抵抗は、"仮想ヘッドホン"です。
シミュレーション前の設計値については、ひとまず以下のようにしました。
センター周波数である800Hzに対してBPF-1がある程度の帯域を制限し、両サイドにもう少しQの高いBPF-2,3を配して追い込んでいくイメージです。また、BPF-1については10倍程度のゲインを与え、例の「幽霊っぽいフォルム」(頭が丸く飛び出すような感じ)を作り出そうとしています。
では、まずは上の設計条件のままでシミュレーションした結果を以下に。果たして幽霊っぽくなっているでしょうか

なるほど、当たらずとも遠からず・・・ですが、何やら3つのコブがありますね。ただ、トリミングの方向性は見えています。即ち、BPF-2,3をセンター周波数に近付けていきながら、BPF-1を微調整すれば良さそうです。
シミュレーションは何度でも無料です(
)から、ちょいと値を弄ってはシミュレーション・・・を繰り返すだけですが、どこを弄るとどんな変化が現れるのかを観察しながら追い込んでいき、結果的にシミュレーション回路図の値で以下のようになりました。
・BPF-1:f=801.3Hz,Q=5.15 Ga:19.46dB
それでは、お待ちかねの"幽霊"をご覧に入れましょう。
さぁ、これでシミュレーションはお終い・・・にしてもいいんですが、2つのテーマでもう少しシミュレーションを続けましょう。
(1)部品の誤差の影響
BPFの成否は、構成部品の精度に掛かっています。今回、抵抗は±1%、コンデンサは±5%の誤差のものを使いますから、残念ながらシミュレーション通りの値にはなりません。そこで、個々の部品の値を精度の範囲一杯に振って様子見。抵抗は±1%の誤差ですから、流石にシミュレーション上も大きな変化は現れませんでしたが、±5%のコンデンサでは結構変化がありました。
例として、BPF-2のコンデンサの片方(C4)を+5%の容量(0.033uF⇒0.03465uF)にしてシミュレートしてみました。

向かって左の頭を殴られたようになってしまったんで、これを元のように戻すために他の部品の値を弄ってみたところ、BPFの中心周波数を可変するための半固定抵抗で調整可能なことが確認できホッとしましたが、それよりも、もう一つのコンデンサ容量を逆にマイナス方向に引っ張ると元の形に近付いていくことが解りました。

こんな感じでかなり綺麗に元に戻る・・・ということは、2つのコンデンサを"ペア"として考えて選別すると、設計に近い特性で実現できるということになりますね。
(2)普通のBPFとの比較
CWのBPFというと、単純にQが高めのBPFをセンター周波数を同じにして数段重ねて作るのが常套手段ですが、今回製作するものと何がどのくらい違うのか調べてみました。
お相手は、このシミュレーション回路のBPFを全て"Q=7"(ゲインはない)にした場合のものです。同じセンター周波数の"Q=7"を3段重ねると、凡そ"Q=13"程度のBPFになると思います。

流石にQの高さがモノを言いますね。お相手の方は-3dB帯域が59Hz、-30dB帯域が235Hzとなりました。オーディオ部だけでCWフィルタを作る場合は、この程度の切れ味があっても良さそうですが、問題は「過渡的な特性」・・・リンギングと残響が聴き易さに直結しますから、この点を比較して見てみましょう。

今回製作しようとしているBPFの方は、帯域が広いことと"ガウシャンもどき"の効果で、トーン受信の頭から6msくらいで立ち上がっています。その後、若干のうねりが見られますが、15ms以内には落ち着いています。また、トーン受信が終わったお尻の方をみても概ね10ms程度の残響・・・それもかなりレベルが低いものになっています。
一方、お相手の方は、頭の方が切れよく上がってこない・・・フワーっと大きくなっていく感じ、お尻の方もかなり長い残響を残していることが判ります。
CWの通常のQSO速度をひとまず"25wpm"とすると、例の"PARIS"で短点1つの長さが48ms程になります。もし残響がこの時間以上続くと、次の符号の始まりと重なってしまいます。勿論、残響はかなり小さなレベルになっていますから、信号が引っ付いてしまうようにはなりませんが、頭の方の切れの悪い立ち上がりと相まって、かなり聴き辛くなります。さらに混信してくる局があれば、もっと複雑なシチュエーションになるでしょう。
ただ、このお相手程度のQであればまだギリギリセーフのような気もしますが、今回の製作コンセプトはあくまで「リグの方に切れるIFフィルタがある」という前提で、状況によってオーディオ段で処理した方が聴き易い場合があるかも・・・といったものですから、逆に今回製作しようとしているBPFのこの応答特性には満足できそうです
さぁ、後は作るだけとなりました。明日の日曜日を有効に使ってバラックまで持って行けたら褒めて下さいね(誰にだ、こら
)。

前回記事では、実現機能の確認とシミュレーション前のヘッポコ実験についてまとめました。今回はシミュレーションの様子などを記したいと思います。まずは先に、シミュレーションが済んだ回路を発表してしまいましょう。

回路の骨組みたるオペアンプは電池駆動を前提にすべく、某秋月で売っている消費電流が小さいものの中からNJM3404を選び、一昨日購入しました。後からこの後継のNJM13404も売っていることに気づき、しかも10円安い・・・ちょっぴり損しちゃいました

各オペアンプは、回路図中のU1がバッファでありチョイ足し程度に増幅、U2からU4がBPFです。回路図の左側は仮想グランドを構成する部分ですが、実際にはここにもオペアンプでスプリッタを構成します。つまり、"8本足"が全部で3つという構成です。
BPFは教科書通りの設計ですが、コンデンサの値については0.033μFで統一しました。これは、多めに購入して実際の容量を測定して選別できるようにするためです。
一方、BPFを構成する抵抗(各3本)は1%誤差の金属皮膜抵抗を使うことを前提に、E24系で片付けられるようにしました。また、BPF個々に周波数の微調整ができるよう3つの半固定抵抗(VRx)を入れてあります。これは500Ωのボリュームを想定し、ほぼ真ん中辺りで調整できるように考えてあります。
入力端にある"Vol"と表示している抵抗は、実際に組み立てる際に10KΩのボリュームを置くため、ボリュームを全開にしたイメージで入れてあります。
入力側のC1、ヘッドホンが接続されるOUT側のC8は、フィルタの特性に影響が出ない値を探り、さらに少し余裕を持たせています。最終端の抵抗は、"仮想ヘッドホン"です。
シミュレーション前の設計値については、ひとまず以下のようにしました。
・BPF-1(U2):cf=800Hz,Q=5 Ga:20dB
・BPF-2(U3):cf=650Hz,Q=7
・BPF-3(U4):cf=950Hz,Q=7
センター周波数である800Hzに対してBPF-1がある程度の帯域を制限し、両サイドにもう少しQの高いBPF-2,3を配して追い込んでいくイメージです。また、BPF-1については10倍程度のゲインを与え、例の「幽霊っぽいフォルム」(頭が丸く飛び出すような感じ)を作り出そうとしています。
では、まずは上の設計条件のままでシミュレーションした結果を以下に。果たして幽霊っぽくなっているでしょうか


なるほど、当たらずとも遠からず・・・ですが、何やら3つのコブがありますね。ただ、トリミングの方向性は見えています。即ち、BPF-2,3をセンター周波数に近付けていきながら、BPF-1を微調整すれば良さそうです。
シミュレーションは何度でも無料です(

・BPF-1:f=801.3Hz,Q=5.15 Ga:19.46dB
・BPF-2:f=685.4Hz,Q=6.47
・BPF-3:f=941.2Hz,Q=6.64
それでは、お待ちかねの"幽霊"をご覧に入れましょう。
さぁ、これでシミュレーションはお終い・・・にしてもいいんですが、2つのテーマでもう少しシミュレーションを続けましょう。
(1)部品の誤差の影響
BPFの成否は、構成部品の精度に掛かっています。今回、抵抗は±1%、コンデンサは±5%の誤差のものを使いますから、残念ながらシミュレーション通りの値にはなりません。そこで、個々の部品の値を精度の範囲一杯に振って様子見。抵抗は±1%の誤差ですから、流石にシミュレーション上も大きな変化は現れませんでしたが、±5%のコンデンサでは結構変化がありました。
例として、BPF-2のコンデンサの片方(C4)を+5%の容量(0.033uF⇒0.03465uF)にしてシミュレートしてみました。

向かって左の頭を殴られたようになってしまったんで、これを元のように戻すために他の部品の値を弄ってみたところ、BPFの中心周波数を可変するための半固定抵抗で調整可能なことが確認できホッとしましたが、それよりも、もう一つのコンデンサ容量を逆にマイナス方向に引っ張ると元の形に近付いていくことが解りました。

こんな感じでかなり綺麗に元に戻る・・・ということは、2つのコンデンサを"ペア"として考えて選別すると、設計に近い特性で実現できるということになりますね。
(2)普通のBPFとの比較
CWのBPFというと、単純にQが高めのBPFをセンター周波数を同じにして数段重ねて作るのが常套手段ですが、今回製作するものと何がどのくらい違うのか調べてみました。
お相手は、このシミュレーション回路のBPFを全て"Q=7"(ゲインはない)にした場合のものです。同じセンター周波数の"Q=7"を3段重ねると、凡そ"Q=13"程度のBPFになると思います。

流石にQの高さがモノを言いますね。お相手の方は-3dB帯域が59Hz、-30dB帯域が235Hzとなりました。オーディオ部だけでCWフィルタを作る場合は、この程度の切れ味があっても良さそうですが、問題は「過渡的な特性」・・・リンギングと残響が聴き易さに直結しますから、この点を比較して見てみましょう。

今回製作しようとしているBPFの方は、帯域が広いことと"ガウシャンもどき"の効果で、トーン受信の頭から6msくらいで立ち上がっています。その後、若干のうねりが見られますが、15ms以内には落ち着いています。また、トーン受信が終わったお尻の方をみても概ね10ms程度の残響・・・それもかなりレベルが低いものになっています。
一方、お相手の方は、頭の方が切れよく上がってこない・・・フワーっと大きくなっていく感じ、お尻の方もかなり長い残響を残していることが判ります。
CWの通常のQSO速度をひとまず"25wpm"とすると、例の"PARIS"で短点1つの長さが48ms程になります。もし残響がこの時間以上続くと、次の符号の始まりと重なってしまいます。勿論、残響はかなり小さなレベルになっていますから、信号が引っ付いてしまうようにはなりませんが、頭の方の切れの悪い立ち上がりと相まって、かなり聴き辛くなります。さらに混信してくる局があれば、もっと複雑なシチュエーションになるでしょう。
ただ、このお相手程度のQであればまだギリギリセーフのような気もしますが、今回の製作コンセプトはあくまで「リグの方に切れるIFフィルタがある」という前提で、状況によってオーディオ段で処理した方が聴き易い場合があるかも・・・といったものですから、逆に今回製作しようとしているBPFのこの応答特性には満足できそうです

さぁ、後は作るだけとなりました。明日の日曜日を有効に使ってバラックまで持って行けたら褒めて下さいね(誰にだ、こら

今更ながら、CW用オーディオフィルタ製作(その序)
2019-05-17
先日の ALL JAの最中に「もう少し目的局のトーンが聞き易くならないかなぁ」と思い、やはりオーディオ部分での処理をもう少ししっかりした方がよいのではないかという疑念が浮かんできました。
これまでのコンテスト参加では、昔作ったパッシブフィルタ・・・通称「謎の小箱」を使っています。これでも極端な高音・低音を抑えるため、いわゆる"ノイズ"はかなり低減し、何もないよりは圧倒的に聞き易くなるんですが、もう少し素性の知れたフィルタが欲しくなりました。
CWフィルタとしては、目的の信号だけを取り出すQの高いバンドパスフィルタをこしらえれば済みそうですが、狭帯域にするほど顕在化する”リンギング”や”残響”を如何に抑えるかという相反する課題が出てくることは、CWをお楽しみの局長さんはご存知でしょう。我が愛機TS-590でも、流石に250Hzを割り込む帯域幅にすると聴き辛い音になり、かつノイズが変調されたヒュー(或いはポー)という音を聴かされることになります。
リンギングや残響が少ないフィルタにはガウシャン特性に近いものが良さそうだということをJA9TTT/加藤OMのブログで学び、そのリンギングの測定方法も先のクリスタルフィルタ実験で心得ましたから、廉価な汎用オペアンプ利用の範疇でBPFを作ってみることにしました。
まずは必要なスペックを簡単にまとめましょう。
① 機能は欲張らず単なるBPF機能のみとし、出力にはヘッドホンを使用する。
①は単純明快・・・と思うでしょ
いやぁ、そうでもないんです。作成するフィルタでガウシャンっぽい特性を得るには、中心周波数付近に特性が異なる複数のBPFを配置する必要があります。本当にガウシャン特性に近づけるためには4つのBPFが要りそうですが、ここでは大いにシミュレータを頼りにして3つのBPFで"ガウシャンもどき"を丁稚上げることにします。
②も曲者・・・電池駆動はやはり大変なんですが、実は006Pの形をした公称電圧8.4Vの充電電池を使うことを先に決めてしまいまして・・・。何故かって
持っているのにあまり使えてないからです
でもこうなると、かなり低い電圧から動くオペアンプを選ぶ必要があります。さらにこの四角い充電電池の容量は"200mAH"・・・コンテスト参加時間を24Hとすると(いやぁ、こんなにぶっ通しで出場できる歳じゃないんですが
)、消費電流を8mA程度に抑える必要が出てきます。
③は記した通り、-3dB帯域を200Hz程度というひとまずの想定値を置いて、あとはシミュレータに委ねる作戦です。
さて、ここまでの中で設計にかかわる幾つか未だ知らないことが見つかりました。それらを調べた結果をまとめて、このBPF製作の序章としましょうかね
(1)ヘッドホンを鳴らすための電力
耳元で鳴るヘッドホンはかなり小さな電力で十分な音量を得ることができることは理解していますが、一体どのくらいの電力で十分な音がするのかよく解っていません。そこで、以下のようなヘッポコ実験に着手!
① 実際にコンテストで使用しているヘッドホン(Koss SportaPro)のインピーダンスを測る。
② PCのオーディオSGで800Hzのシングルトーンを出力し、これをヘッドホンで聴く。
③ 10秒も聴いているとヘッドホンを外したくなるような大きな音に調整する。
⇒PCのオーディオボリュームで調整する。
⇒通常はこんな大きな音で連続して聴かない音量を「必要十分な音量」とする。
③ ②の状態でオシロをつないで電圧を測定する。
④ 測定結果より、電力を計算する。
ただ、普通に聞いているレベルでは概ね30~40mVp-pであり、上記はあくまで最大値です、念のため。仮に40mVを平均として同様に計算すると”0.014mW”(14μW)・・・かなり小さいですね
(2)どのくらいの信号強度差で無視できるか
今、フィルタの中心周波数に目的局の信号を捉えているとします。殆どの場合、混信局は中心周波数より上か下かにずれており、これがフィルタの減衰域の減衰量に伴って邪魔になるかならないかが決まります。無論、混信局の方が圧倒的に強い場合もありますがここでは少し話を単純化するために、目的局と混信局の信号強度が同じとしてどのくらいの信号強度差があれば気にならないか、自分の耳で探ってみました。これまた、ヘッポコ実験の極み!
① PCのオーディオSGで800Hzのシングルトーンを出力。
② ヘッドホンで聴き易い音量に調整。
② 適当に離調したトーンを同レベルで出力する。
③ このトーンのレベルを徐々に絞っていき気にならなくなったら、その時のレベル差を記す。
(1)の実験を含め、PCのオーディオSGには"efu"さんのWG150を使用しています。このSGでは、複数のオーディオ信号を同時出力できるため、今回の実験には打って付けです。
この実験は凡そフィーリングの世界ではあるものの、どうやらどよよん無線技士さんは、大体20dBダウンになるとあまり気にならなくなるようですから、マージンを取って"30dBダウン"を基準値に・・・この値は、フィルタのスカート特性をシミュレートする際の評価値として用います。
以上、"序"はここまで・・・お後が宜しいようで
メジャーコンテストのローバンドのような超過密な状況では、リグのIF帯域を絞って凌ぐことになるため、果たしてオーディオ部で何を補ってもそれほど了解度が改善するとは思えない部分はあるものの、実際には、目的の局と混信してくる局との周波数の差や信号強度の差によっては、そこそこ良質なオーディオフィルタが活躍する場面もあるのではないかと考えたわけです。
これまでのコンテスト参加では、昔作ったパッシブフィルタ・・・通称「謎の小箱」を使っています。これでも極端な高音・低音を抑えるため、いわゆる"ノイズ"はかなり低減し、何もないよりは圧倒的に聞き易くなるんですが、もう少し素性の知れたフィルタが欲しくなりました。
CWフィルタとしては、目的の信号だけを取り出すQの高いバンドパスフィルタをこしらえれば済みそうですが、狭帯域にするほど顕在化する”リンギング”や”残響”を如何に抑えるかという相反する課題が出てくることは、CWをお楽しみの局長さんはご存知でしょう。我が愛機TS-590でも、流石に250Hzを割り込む帯域幅にすると聴き辛い音になり、かつノイズが変調されたヒュー(或いはポー)という音を聴かされることになります。
リンギングや残響が少ないフィルタにはガウシャン特性に近いものが良さそうだということをJA9TTT/加藤OMのブログで学び、そのリンギングの測定方法も先のクリスタルフィルタ実験で心得ましたから、廉価な汎用オペアンプ利用の範疇でBPFを作ってみることにしました。
まずは必要なスペックを簡単にまとめましょう。
① 機能は欲張らず単なるBPF機能のみとし、出力にはヘッドホンを使用する。
② 電池で動作するようにして、電源ノイズや回り込みを極力回避する。
③ 帯域幅はひとまず-3dB帯域を200Hz程度とし、スカート特性はシミュレータで実験的に決める。
①は単純明快・・・と思うでしょ

3段BPFでは、安価で入手が楽な2回路入りのオペアンプを2つ使うと1回路分余りますから、これは入力初段に置いてバッファとし、BPF特性が入力に引っ張られないようにします。
②も曲者・・・電池駆動はやはり大変なんですが、実は006Pの形をした公称電圧8.4Vの充電電池を使うことを先に決めてしまいまして・・・。何故かって


でもこうなると、かなり低い電圧から動くオペアンプを選ぶ必要があります。さらにこの四角い充電電池の容量は"200mAH"・・・コンテスト参加時間を24Hとすると(いやぁ、こんなにぶっ通しで出場できる歳じゃないんですが

③は記した通り、-3dB帯域を200Hz程度というひとまずの想定値を置いて、あとはシミュレータに委ねる作戦です。
さて、ここまでの中で設計にかかわる幾つか未だ知らないことが見つかりました。それらを調べた結果をまとめて、このBPF製作の序章としましょうかね

(1)ヘッドホンを鳴らすための電力
耳元で鳴るヘッドホンはかなり小さな電力で十分な音量を得ることができることは理解していますが、一体どのくらいの電力で十分な音がするのかよく解っていません。そこで、以下のようなヘッポコ実験に着手!
① 実際にコンテストで使用しているヘッドホン(Koss SportaPro)のインピーダンスを測る。
⇒テスターでの実測で、左右共"58.2Ω"であった。(公称インピーダンスは60Ω)
⇒モノラルで聴くように左右を並列接続するため、インピーダンスはこの半分の"29.1Ω"。
② PCのオーディオSGで800Hzのシングルトーンを出力し、これをヘッドホンで聴く。
③ 10秒も聴いているとヘッドホンを外したくなるような大きな音に調整する。
⇒PCのオーディオボリュームで調整する。
⇒通常はこんな大きな音で連続して聴かない音量を「必要十分な音量」とする。
③ ②の状態でオシロをつないで電圧を測定する。
⇒実測結果、Vp-pで1.7Vであった。
④ 測定結果より、電力を計算する。
ということで、早速計算してみましょう!
・1.7V/2 × 1/√2 ≒ 1.20Vrms
・1.20Vrms^2 / 29.1Ω ≒ 49mW
ただ、普通に聞いているレベルでは概ね30~40mVp-pであり、上記はあくまで最大値です、念のため。仮に40mVを平均として同様に計算すると”0.014mW”(14μW)・・・かなり小さいですね

(2)どのくらいの信号強度差で無視できるか
今、フィルタの中心周波数に目的局の信号を捉えているとします。殆どの場合、混信局は中心周波数より上か下かにずれており、これがフィルタの減衰域の減衰量に伴って邪魔になるかならないかが決まります。無論、混信局の方が圧倒的に強い場合もありますがここでは少し話を単純化するために、目的局と混信局の信号強度が同じとしてどのくらいの信号強度差があれば気にならないか、自分の耳で探ってみました。これまた、ヘッポコ実験の極み!
① PCのオーディオSGで800Hzのシングルトーンを出力。
② ヘッドホンで聴き易い音量に調整。
② 適当に離調したトーンを同レベルで出力する。
③ このトーンのレベルを徐々に絞っていき気にならなくなったら、その時のレベル差を記す。
(1)の実験を含め、PCのオーディオSGには"efu"さんのWG150を使用しています。このSGでは、複数のオーディオ信号を同時出力できるため、今回の実験には打って付けです。
この実験は凡そフィーリングの世界ではあるものの、どうやらどよよん無線技士さんは、大体20dBダウンになるとあまり気にならなくなるようですから、マージンを取って"30dBダウン"を基準値に・・・この値は、フィルタのスカート特性をシミュレートする際の評価値として用います。
以上、"序"はここまで・・・お後が宜しいようで
