CW用クリスタルフィルタの設計・製作(その4:設計変更)
2017-06-30
一昨日、早くもニイニイゼミの声を聞きました。ここ数年は7月に入ってからでしたから随分早いお目見え・・・虫たちの方が気候変動に敏感ですから、ひょっとすると夏が早く来るという暗示でしょうか
CW用のクリスタルフィルタ設計は一旦終了した筈だったんですが、周波数特性をしげしげ眺めていたら-3dBの帯域幅が140Hzほど・・・ちょっと帯域幅が狭すぎることに気付きました。そこでもう少し帯域を広げ、当初の設計値である「250Hz@-3dB」くらいになるよう再設計してみました。
今回のフィルタ製作における帯域幅の調整はそれこそLTspiceであれこれ弄って確認して進めるわけで、そういう意味では試行錯誤を繰り返せばいいんでしょうが、やはりある程度当たりを付けてからの微調整の方が、今後も幾度かは行うであろうフィルタ製作には参考になると思い、当初の設計パラメータを変えてみました。
「250Hz@-3dB」くらいのフィルタを前提に"Dishal"に与える帯域幅を200Hzにし、少々エッジが鈍って広がるのかと思いきや逆に狭くなったんですから、350Hzくらいになるように設計を進めれば良いのではないか・・・ということで、早速"Dishal"を動かしてみました。

まず、結合コンデンサ(Ckxx)は軒並み200pF台になっており、先の設計結果より個々の水晶の結合度合いが上がったことが判ります。また、同調コンデンサを導く「等価周波数オフセット」も大きくなり、帯域を広げる方向に調整されたことも判るでしょう。
では、この結果で各コンデンサの値を置き直してから、例によって「お楽しみ試行錯誤」(ついに、お楽しみになったわけね・・・)で特性を追い込んでみましょう。

これでは、何が変わったのか判りませんね
では、前回ブログの設計結果とこのシミュレーション結果を重ねてみましょう。

シミュレーションする周波数幅を同じにして重ねてみました。黄緑色のシルエットが今回設計し直したものです。-3dBの帯域幅が270Hzくらいになりました。コンテストで目一杯混んでいる40mでは250Hzでもちょっと心許ないときがありますが、こちらの方が実用的ではありそうです。また、通過ロスも2,3dBは改善しているように見えますね。

最終的なコンデンサの値も上手く収まりました。これ以上は弄らず、実際の製作に進めようと思いますのでご安心を・・・って、誰に言ってるんだ

CW用のクリスタルフィルタ設計は一旦終了した筈だったんですが、周波数特性をしげしげ眺めていたら-3dBの帯域幅が140Hzほど・・・ちょっと帯域幅が狭すぎることに気付きました。そこでもう少し帯域を広げ、当初の設計値である「250Hz@-3dB」くらいになるよう再設計してみました。
今回のフィルタ製作における帯域幅の調整はそれこそLTspiceであれこれ弄って確認して進めるわけで、そういう意味では試行錯誤を繰り返せばいいんでしょうが、やはりある程度当たりを付けてからの微調整の方が、今後も幾度かは行うであろうフィルタ製作には参考になると思い、当初の設計パラメータを変えてみました。
「250Hz@-3dB」くらいのフィルタを前提に"Dishal"に与える帯域幅を200Hzにし、少々エッジが鈍って広がるのかと思いきや逆に狭くなったんですから、350Hzくらいになるように設計を進めれば良いのではないか・・・ということで、早速"Dishal"を動かしてみました。

まず、結合コンデンサ(Ckxx)は軒並み200pF台になっており、先の設計結果より個々の水晶の結合度合いが上がったことが判ります。また、同調コンデンサを導く「等価周波数オフセット」も大きくなり、帯域を広げる方向に調整されたことも判るでしょう。
では、この結果で各コンデンサの値を置き直してから、例によって「お楽しみ試行錯誤」(ついに、お楽しみになったわけね・・・)で特性を追い込んでみましょう。

これでは、何が変わったのか判りませんね


シミュレーションする周波数幅を同じにして重ねてみました。黄緑色のシルエットが今回設計し直したものです。-3dBの帯域幅が270Hzくらいになりました。コンテストで目一杯混んでいる40mでは250Hzでもちょっと心許ないときがありますが、こちらの方が実用的ではありそうです。また、通過ロスも2,3dBは改善しているように見えますね。

最終的なコンデンサの値も上手く収まりました。これ以上は弄らず、実際の製作に進めようと思いますのでご安心を・・・って、誰に言ってるんだ

CW用クリスタルフィルタの設計・製作(その3)
2017-06-27
一昨日の日曜、我が愚息が急に帰ってきました。単に「序でにちょっと寄っただけ」という割に遅めの昼食を喰らい、宝塚記念に興じ(負けました)、あれこれダベったら帰って行きました。お陰で、土日中心のヘッポコ工作・・・フィルタの設計に割ける時間が減ってしまいましたが、まぁ元気で何よりでした
佳境を迎えたフィルタの設計フェーズ・・・LTspiceによるシミュレーションで望む特性が再現できるところまで追い込むという「試行錯誤」の作業がメインですが、何とか「こんなモンじゃろう・・・」というところまで持って行くことができたんで、この辺りをまとめちゃいたいと思います。
0.本編に入る前に・・・"Rm"の測定は必須
既に注釈を入れておきましたが、前々回記事でQuに関する説明を少々雑に書き飛ばしてしまった点について、ここで補足しておきます。
Quに関しては、前々回記事に書いた通り"Dishal"による設計では確かに使用しませんが、設計の終盤で実際に使用する水晶の諸元を使ってシミュレーションする際、その結果をより正確に導くために、水晶の等価回路上の抵抗値"Rm"(水晶の損失表現)が必要であり、何とかしてこの値を導き出す必要があります。
自分は幸いにも、APB-3という強力な武器とちょっとした治具を用意して凌ぎましたが、仮にこうしたネットアナっぽい環境が整わなくても、何とかして"Rm”を求める必要があります。これには、
・水晶に安定して信号供給できる入出力インピーダンスがきちんと定まった治具
>自分の過去記事を参考に。掲載した回路図の余計なスイッチ類を取っ払えばいいでしょう。
・フィルタに使う水晶のfs付近の周波数で安定に信号が供給できる信号源(いわゆるSG)
・終端型の小電力計(終端抵抗+検波ダイオード+DMMくらいの構成でよい)
・50~100Ωくらいのボリューム
等の準備が必要です。これらを適切に接続し、水晶の直列共振周波数(fs付近で最大出力になる周波数を探るとそれが直列共振周波数になります)を通して出力された電力を測っておき、水晶をボリュームに替えて同じ電力値になるように調整した際のボリュームが示す抵抗値を"Rm”とすればよいでしょう。
なお、"Rm"が求まればQuも計算で求められますから、以降の自作データとして活用できますね。
では、前回記事で説明した「フォーマルな水晶配置」の方で設計を進めたいと思います。
1.コンデンサ容量を丸めてシミュレート
前回記事では、各コンデンサ容量を”Dishal”とサブプログラム"Xtal Tuning"の算出値としてシミュレートしましたが、実際に市販されている(手に入る)コンデンサ容量は言わば「飛び飛びの値」であり、幾つかのコンデンサを並列に接続して(まぁ、合成容量が合えば直列接続でも良いんですが・・・)調整する必要がある値になっていますね。ところが、実際にはある程度アバウトでもイケちゃうんですよ
この辺りについてまとめましょう。

上の図の上段は優秀なプログラム達に算出された結果としての容量値、下はこれらの容量値を市販で手に入るコンデンサ容量に置き換えたものです。これでシミュレーションしてみましょう。

左が設計値のまま、右が丸めた後です。細かく見ると勿論差はありますが、極端な変化はありませんね。こんな風に、コンデンサの容量についても、シミュレーションレベルでの確認ではあるものの「ある程度丸められる」と結論して良さそうです
2.水晶の損失を入れてみる
”Dishal”と"Xtal Tuning"では、水晶の損失が無いものとして同調容量・結合容量が算出されることから、ある程度設計条件が整った段階で実際に使用する水晶のQuについて考慮する必要があります。ここでは、別途測定しておいた"Rm”を使ってシミュレーションしてみましょう。
この作業は、これまで抵抗を省いてQuが無限大として扱ってきたLTspiceの水晶等価回路に抵抗"Rm"を入れ、「損失のある共振回路」にすることで行います。

どうですか
何やらなだらかな形になって、よりお化けっぽくなったでしょう
水晶の共振度合いが下がったことで急峻な変化部分が鈍り、却って扱い易い感じになっていますね。ただ、喜んでばかりもいられないのはフィルタ全体としての減衰量です。上の「火山型」のグラフの天辺がフラットだと仮定すると、7~8dBほど減衰しているようです。
こんな風になってくれれば、減衰量を除けばほぼ設計通りのものが得られたと言えます。そもそも「チェビシェフ、帯域内リプル1dB」で設計した上、市販のコンデンサ容量ですからね。それでも、こんな感じのフィルタができるかもという手応え・・・貪欲に、もう一歩掘り下げて設計の仕上げとしましょうか。
3.正規化分布的なフォルムで設計完了
ここからは全く論理的でない世界です。何でもかんでも理屈にしなくちゃなんねぇ御仁には耐えられないかも知れませんが、上等なシミュレータがあればこんなこともできる・・・というところかな
直ぐ上に現れたお化けはお化けとして(
)、もっとイイ感じのお化け・・・「ガウシャン」たら言う正規化分布っぽいフォルムを目指してみましょうか。
ちょっと話は逸れますが、2ポール以上のフィルタを作ったこと・・・っていうか調整したことがある方はご存じかと思いますが、双峰形から単峰形まで特性が変わっていくフィーリングを持っていると、これから行う「怒濤の試行錯誤」を楽しめるかも知れませんよ
では、追い込んでみましょう。

如何でしょう、まずまずのフォルムになったと思いませんか
水晶の諸元以外の部分をあれこれ弄っています。この辺りを詳細に見てみましょう。

かなり試行錯誤を繰り返しました。入出力の負荷インピーダンスまで弄ったことが判りますね。この負荷インピーダンスは、最終的にフィルタとして製作した際に調整し易い値になるように弄った次第。200Ωであれば、1:4のインピーダンス変換トランスで上手く50Ωに整合できますからね
コンデンサ容量については、あるコンデンサに着目して容量を上下に変化させると周波数特性の変化傾向が判ってきますから、これを頼りに調整して追い込んでいきました。
何れにせよ、LTspiceに何度も計算させれば良いだけの話ですから、一杯飲みながら(え~
)半日も探っていれば、この程度の特性までは追い込めそうです。本当は理屈になればカッチョイイんですが、まぁこうした「数打ちゃ当たるぜ、試行錯誤
」でも形にはなるようです。本当は10pF刻み程度でもう少し追い込んでやるともっと良さげな特性になるんですが、実際に使うコンデンサ容量の誤差を含め、一度はこの程度追い込んだ状態で組んでみた方が「後学のため」には良さそうなんで、設計フェーズはこれで一応お終いにしたいと思います。
残るは実際の製作・・・やはり休日利用のヘッポコ製作になると思いますが、今週末&来週末は予定がそこそこ詰まっていますんで、もの好きなそこの貴方
少々気長にお待ち下され

佳境を迎えたフィルタの設計フェーズ・・・LTspiceによるシミュレーションで望む特性が再現できるところまで追い込むという「試行錯誤」の作業がメインですが、何とか「こんなモンじゃろう・・・」というところまで持って行くことができたんで、この辺りをまとめちゃいたいと思います。
0.本編に入る前に・・・"Rm"の測定は必須
既に注釈を入れておきましたが、前々回記事でQuに関する説明を少々雑に書き飛ばしてしまった点について、ここで補足しておきます。
Quに関しては、前々回記事に書いた通り"Dishal"による設計では確かに使用しませんが、設計の終盤で実際に使用する水晶の諸元を使ってシミュレーションする際、その結果をより正確に導くために、水晶の等価回路上の抵抗値"Rm"(水晶の損失表現)が必要であり、何とかしてこの値を導き出す必要があります。
自分は幸いにも、APB-3という強力な武器とちょっとした治具を用意して凌ぎましたが、仮にこうしたネットアナっぽい環境が整わなくても、何とかして"Rm”を求める必要があります。これには、
・水晶に安定して信号供給できる入出力インピーダンスがきちんと定まった治具
>自分の過去記事を参考に。掲載した回路図の余計なスイッチ類を取っ払えばいいでしょう。
・フィルタに使う水晶のfs付近の周波数で安定に信号が供給できる信号源(いわゆるSG)
・終端型の小電力計(終端抵抗+検波ダイオード+DMMくらいの構成でよい)
・50~100Ωくらいのボリューム
等の準備が必要です。これらを適切に接続し、水晶の直列共振周波数(fs付近で最大出力になる周波数を探るとそれが直列共振周波数になります)を通して出力された電力を測っておき、水晶をボリュームに替えて同じ電力値になるように調整した際のボリュームが示す抵抗値を"Rm”とすればよいでしょう。
なお、"Rm"が求まればQuも計算で求められますから、以降の自作データとして活用できますね。
では、前回記事で説明した「フォーマルな水晶配置」の方で設計を進めたいと思います。
1.コンデンサ容量を丸めてシミュレート
前回記事では、各コンデンサ容量を”Dishal”とサブプログラム"Xtal Tuning"の算出値としてシミュレートしましたが、実際に市販されている(手に入る)コンデンサ容量は言わば「飛び飛びの値」であり、幾つかのコンデンサを並列に接続して(まぁ、合成容量が合えば直列接続でも良いんですが・・・)調整する必要がある値になっていますね。ところが、実際にはある程度アバウトでもイケちゃうんですよ


上の図の上段は優秀なプログラム達に算出された結果としての容量値、下はこれらの容量値を市販で手に入るコンデンサ容量に置き換えたものです。これでシミュレーションしてみましょう。

左が設計値のまま、右が丸めた後です。細かく見ると勿論差はありますが、極端な変化はありませんね。こんな風に、コンデンサの容量についても、シミュレーションレベルでの確認ではあるものの「ある程度丸められる」と結論して良さそうです

2.水晶の損失を入れてみる
”Dishal”と"Xtal Tuning"では、水晶の損失が無いものとして同調容量・結合容量が算出されることから、ある程度設計条件が整った段階で実際に使用する水晶のQuについて考慮する必要があります。ここでは、別途測定しておいた"Rm”を使ってシミュレーションしてみましょう。
この作業は、これまで抵抗を省いてQuが無限大として扱ってきたLTspiceの水晶等価回路に抵抗"Rm"を入れ、「損失のある共振回路」にすることで行います。

どうですか


こんな風になってくれれば、減衰量を除けばほぼ設計通りのものが得られたと言えます。そもそも「チェビシェフ、帯域内リプル1dB」で設計した上、市販のコンデンサ容量ですからね。それでも、こんな感じのフィルタができるかもという手応え・・・貪欲に、もう一歩掘り下げて設計の仕上げとしましょうか。
3.正規化分布的なフォルムで設計完了
ここからは全く論理的でない世界です。何でもかんでも理屈にしなくちゃなんねぇ御仁には耐えられないかも知れませんが、上等なシミュレータがあればこんなこともできる・・・というところかな


ちょっと話は逸れますが、2ポール以上のフィルタを作ったこと・・・っていうか調整したことがある方はご存じかと思いますが、双峰形から単峰形まで特性が変わっていくフィーリングを持っていると、これから行う「怒濤の試行錯誤」を楽しめるかも知れませんよ


如何でしょう、まずまずのフォルムになったと思いませんか


かなり試行錯誤を繰り返しました。入出力の負荷インピーダンスまで弄ったことが判りますね。この負荷インピーダンスは、最終的にフィルタとして製作した際に調整し易い値になるように弄った次第。200Ωであれば、1:4のインピーダンス変換トランスで上手く50Ωに整合できますからね

コンデンサ容量については、あるコンデンサに着目して容量を上下に変化させると周波数特性の変化傾向が判ってきますから、これを頼りに調整して追い込んでいきました。
何れにせよ、LTspiceに何度も計算させれば良いだけの話ですから、一杯飲みながら(え~


残るは実際の製作・・・やはり休日利用のヘッポコ製作になると思いますが、今週末&来週末は予定がそこそこ詰まっていますんで、もの好きなそこの貴方


CW用クリスタルフィルタの設計・製作(その2)
2017-06-24
前回記事では、”Dishal”の設計作業についてその「乗っけ」の様子にフォーカスしました。基準となる水晶を用いて付随するコンデンサの容量が求められたわけですが、これがどんな特性になるのかを知るためにはこれまた大変優れたツールを紹介する運びとなるんです。それもメーカ製でありながら「無償」という代物・・・思えば、オープン系のソフトウェア開発がポピュラーになった頃から、こうした有益なソフトが無償提供されるようになったような気がします・・・って、またしても大幅に脱線しそうなんでこれくらいにして
今さら改まっての紹介もおこがましい”LTspice"の登場です。
このツールについては、それこそ書籍まで「完備」されていますからこの記事では詳しい説明はせず、専ら”ユーザ”として6ポールフィルタの特性を「観る道具」として活用します。
1.LTspiceでシミュレート
まず、前回記事でフィルタの基準周波数を「こいつ
」と決めた#2の水晶の諸元(Cpは今回使用する水晶の平均値:4.0pF)を使って、6個の水晶が全部同じだという仮定でシミュレーションしてみました。

このシミュレーションでは、各水晶の等価回路から抵抗を省いています。これは、"Dishal"の計算の前提が「損失のない水晶」・・・言い換えるとQuが無限大の水晶を使った計算となるためです。さらに、全ての水晶が「同一」となれば、設計通りの結果が得られるのは当たり前なんですが、ここで思わず唸ったのは"LTspice"で忠実にこの様子を再現できたこと
今後の設計上の調整にも安心して使えることが判りました。
それにしても、”Dishal”の設計結果を見事に再現していますね。”はじめ人間ギャートルズに登場する火山"のようですが(
)、特性的には大変綺麗です。0.1dBで設計したBW内の極少リプルがこのグラフィックにも凸凹として見えています。ただ、実際には0.2dB程度のリプルのようです(拡大して確認)。さらに、この縮尺では判り難いですが、このフィルタの中心周波数は大凡”Dishal”の設計結果である"4094.791KHz”になっています。
全く同じ諸元の水晶の準備はほぼ不可能ですが、もし同じようなもの(=許容にたえるもの)が必要個数準備できると、こんな風に綺麗な特性(=意図した特性)のフィルタが作れるかも知れないということを、このシミュレーションは物語っています。
2.#2の水晶と組み合わせる水晶の決定
ここで一旦ステップバック
少々荒っぽくまとめた「その1」ですが、肝心の「水晶の順番」を決める部分・・・#2とその対を成す水晶のチョイスについてクローズアップします。表を再掲。

この表はfsを昇順に並べたものです。”Dishal”のフィルタ設計では、基準周波数にする水晶はばらついた中のほぼ真ん中辺りのものを#2の位置に選ぶと良いようで、さらに対を成す#n-1・・・#5(nはポール数、今回は6ポールのため#5)にはそれより少し低い周波数のものを置く必要があります。逆に言うと、#2より低い周波数のものしか#5には採用できませんから、#2と#5の組合せはこのfs順の表である程度決まってしまいます。さらに、#2と#5は近い周波数のものを選ぶと『コンデンサ減らしの恩恵』が受けられます
この辺りを少し詳説してみましょう。
まず、真ん中辺りを選択するとなると①4094.665KHz、②4094.671KHzが良さそうですね。では、まずは①を選んで”Dishal”に設計を進めて貰いましょう。

実はここから先の設計は、既に出ている結果を基に「サブプログラム」を使ってコンデンサ容量の補正を行います。サブプログラムの"Xtal Tuning"は、”Dishal”のメニューバーの"Xtal"を押すとドロップダウンリストの3番目に表示され、これを押すとポップアップされます。ポップアップされたプログラムの中に既にあれこれ数字が入っているのが判りますね。
入力フィールド中の青字の部分は、Ck12、Ck23の計算結果を含め基準周波数として使った#2の諸元が自動的に設定されます。一方、2つの赤字の入力フィールドにはポップアップ直後には適当な値が設定されていますので、ここに調整したい水晶のfsと”Nominal offset"を入力します。
fsについては、①に最も近くて低いfsである4094.663KHzを素直に入力すれば良いのですが、”Nominal offset"がよく解りませんよね
この英単語が日本語になり難いんですが、名目上の⇒公称の⇒表向きの・・・要は調整に必要となる表向きのオフセットということですって、意味不明でしょ
このフィールドの意味は置いといて、ここで行いたいのは#5の水晶に付加するコンデンサの容量を求めたいわけです。この場合は、#2とのオフセットは無い方が良いわけですから「0」を入れましょう。
さぁ、”Calculate”を押してみましょう・・・”Tuning Capacitance”は「13582pF」(≒0.014μF)と出ました。かなり大きな容量ですね。
では、もう一つ・・・②の方を計算してみましょう。
これは、”Dishal”に②の水晶の諸元を「こいつが#2だぜぇ
」と教えて(入力して)やった上で、上と同じように”Xtal Tuning"をポップアップさせればOK。早速、結果を見てみましょうか。

「4588pF」になりました。これでも同調容量としては大きい値ですが、やはり①の方が断然大きい値ですね。
このように、#2と対を成す水晶のfsが近い程、直列に付加する同調コンデンサの容量が大きくなる・・・そうなんです、そもそも調整すべき周波数オフセットが小さければ、このコンデンサを省いても周波数特性への影響は僅かです。
先に書いた「コンデンサ減らしの恩恵」とは、実はこのことです。即ち、基準周波数を定義する#2の水晶と対を成す#n-1の水晶について、fsをできるだけ近い(かつ低い)周波数のものを選択すると、#n-1の周波数を調整するための同調コンデンサを追加しなくてもよくなります。ま、コンデンサ1つ節約することに意味があるかというと謎ですが、「どよよん流設計法」としては①をチョイスしたわけです。
ちなみに、どの程度容量が大きかったら省略可能か・・・これは製作するフィルタの帯域幅と中心(基準)周波数によって違ってきますが、数千pF以上(4000pFくらいが目安かな
)であれば省いても大丈夫そうです。つまり、②のチョイスでも大丈夫そうです。この辺りは、LTspiceであれこれ確かめてみる方がいいでしょう。
3.フォーマルな水晶配置でシミュレート
#2と#5が決まりました。残りの水晶にはそれぞれ同調コンデンサが接続されfsが調整できるため、ある程度自由にチョイスすることができますが、同調コンデンサの容量があまりに小さくなると損失が大きくなり上手くありません。
同調コンデンサの容量は既に計算されており、"Dishal"の左下に表示されている「Ck1=504.7pF、Ck3=1384pF」がそれです。この値は#2の水晶と同じものを使用した場合という仮の計算値ですが、この値からなるべくかけ離れないように水晶を選び出す・・・直感的には判り難いところですね。
このCk1,2の値の横に、何やら意味不明な周波数が書いてあります。題名は「Eqiv. Freq. Offset(Hz)」・・・等価周波数オフセットとでも訳しましょうか。これは、Ck1,3の容量をオフセットに換算した周波数という意味です。接続する水晶のfsは#2のfsからズレていますから、この等価オフセットと接続する水晶のfsのズレを加算或いは減算して再度きちんとしたオフセットを計算し直し、最終的にこれを同調容量として算出できれば水晶毎のズレがきちんと吸収されます。この再計算を行うのが"Xtal Tuning"の役割です。
ここで注意すべきは、Ck1(54Hz)の方がCk3(20Hz)より高い周波数へのシフトが必要だということです。つまり、Ck1が接続される#1,#6の水晶には、採用する水晶の中でfsが高いもの(上の表では4094.678KHzと4094.672KHz)をチョイスすればよく、これを常套手段と考えて良いと思います。6ポールの場合はこれで全ての配置が決まってしまいますね。

では、この順序で同調コンデンサを計算してひとまずフィルタとして設計完了まで持って行きましょう。まずはCs1を接続する#1から。Cs1の等価周波数オフセットは「54Hz」であることは判っていますから、これを上手く和訳できない"Nominal Offset"に入力し、#1に採用する水晶のfsである4094.672KHzを使って"Xtal Tuning"に計算させます。

「583pF」が再計算された同調容量です。こんな風に至極簡単に再計算できますから、「試行錯誤、上等
」的な方に向いていそうです・・・って、正に自分向き
この要領で#6を、さらに等価周波数オフセットを「20Hz」として#3,#4の再計算を行うと、全ての同調容量が求まります。結合コンデンサは前回記事で求めてありますから、これで全て揃いました。早速、シミュレーションしてみましょう。

う~ん・・・本物の火山のようになってしまいましたね
フラットな筈の天辺の部分は3.3dBくらいの範囲で波打っています。つまり、このまま組んだらあまり上手くないということですね。
そうそう、いまさらですが、前回記事に書いた「#の謎」はお解り頂けたんじゃないかな
4.フォーマルな配置でない場合の様子
そもそも前回記事にも登場した「選択した水晶」の表にも既に水晶の順序を示す番号が記してありますが、これは#2,5は同じですがフォーマルな方法でチョイスしなかった場合の一例です。これをシミュレートしてみましょう。

横風を浴びた幽霊のようになっています
天辺の平坦部分はフォーマルのものより広くなっていますが、その代わりに周波数が高い側の縁が5dBほどディップしているのが判ります。また、-40dB辺りの帯域が若干広くなっていることも判るでしょう。ただ、フィルタ特性の体は成していますね。
このように初期設計の時点では、6ポールくらいのフィルタで今回使う水晶のようにfsの広がり具合があまり大きくなければ、"Xtal Tuning"の調整に任せてある程度ラフに考えて良さそうです。
前回に続いて、また記事が長めになってしまいましたが、”Dishal”を使った設計はこれでお終い・・・次回はもっと実際の水晶に近付けて、フィルタ設計を完了させたいと思います。

このツールについては、それこそ書籍まで「完備」されていますからこの記事では詳しい説明はせず、専ら”ユーザ”として6ポールフィルタの特性を「観る道具」として活用します。
1.LTspiceでシミュレート
まず、前回記事でフィルタの基準周波数を「こいつ


このシミュレーションでは、各水晶の等価回路から抵抗を省いています。これは、"Dishal"の計算の前提が「損失のない水晶」・・・言い換えるとQuが無限大の水晶を使った計算となるためです。さらに、全ての水晶が「同一」となれば、設計通りの結果が得られるのは当たり前なんですが、ここで思わず唸ったのは"LTspice"で忠実にこの様子を再現できたこと

それにしても、”Dishal”の設計結果を見事に再現していますね。”はじめ人間ギャートルズに登場する火山"のようですが(

全く同じ諸元の水晶の準備はほぼ不可能ですが、もし同じようなもの(=許容にたえるもの)が必要個数準備できると、こんな風に綺麗な特性(=意図した特性)のフィルタが作れるかも知れないということを、このシミュレーションは物語っています。
2.#2の水晶と組み合わせる水晶の決定
ここで一旦ステップバック


この表はfsを昇順に並べたものです。”Dishal”のフィルタ設計では、基準周波数にする水晶はばらついた中のほぼ真ん中辺りのものを#2の位置に選ぶと良いようで、さらに対を成す#n-1・・・#5(nはポール数、今回は6ポールのため#5)にはそれより少し低い周波数のものを置く必要があります。逆に言うと、#2より低い周波数のものしか#5には採用できませんから、#2と#5の組合せはこのfs順の表である程度決まってしまいます。さらに、#2と#5は近い周波数のものを選ぶと『コンデンサ減らしの恩恵』が受けられます

まず、真ん中辺りを選択するとなると①4094.665KHz、②4094.671KHzが良さそうですね。では、まずは①を選んで”Dishal”に設計を進めて貰いましょう。

実はここから先の設計は、既に出ている結果を基に「サブプログラム」を使ってコンデンサ容量の補正を行います。サブプログラムの"Xtal Tuning"は、”Dishal”のメニューバーの"Xtal"を押すとドロップダウンリストの3番目に表示され、これを押すとポップアップされます。ポップアップされたプログラムの中に既にあれこれ数字が入っているのが判りますね。
入力フィールド中の青字の部分は、Ck12、Ck23の計算結果を含め基準周波数として使った#2の諸元が自動的に設定されます。一方、2つの赤字の入力フィールドにはポップアップ直後には適当な値が設定されていますので、ここに調整したい水晶のfsと”Nominal offset"を入力します。
fsについては、①に最も近くて低いfsである4094.663KHzを素直に入力すれば良いのですが、”Nominal offset"がよく解りませんよね


さぁ、”Calculate”を押してみましょう・・・”Tuning Capacitance”は「13582pF」(≒0.014μF)と出ました。かなり大きな容量ですね。
では、もう一つ・・・②の方を計算してみましょう。
これは、”Dishal”に②の水晶の諸元を「こいつが#2だぜぇ


「4588pF」になりました。これでも同調容量としては大きい値ですが、やはり①の方が断然大きい値ですね。
このように、#2と対を成す水晶のfsが近い程、直列に付加する同調コンデンサの容量が大きくなる・・・そうなんです、そもそも調整すべき周波数オフセットが小さければ、このコンデンサを省いても周波数特性への影響は僅かです。
先に書いた「コンデンサ減らしの恩恵」とは、実はこのことです。即ち、基準周波数を定義する#2の水晶と対を成す#n-1の水晶について、fsをできるだけ近い(かつ低い)周波数のものを選択すると、#n-1の周波数を調整するための同調コンデンサを追加しなくてもよくなります。ま、コンデンサ1つ節約することに意味があるかというと謎ですが、「どよよん流設計法」としては①をチョイスしたわけです。
ちなみに、どの程度容量が大きかったら省略可能か・・・これは製作するフィルタの帯域幅と中心(基準)周波数によって違ってきますが、数千pF以上(4000pFくらいが目安かな

3.フォーマルな水晶配置でシミュレート
#2と#5が決まりました。残りの水晶にはそれぞれ同調コンデンサが接続されfsが調整できるため、ある程度自由にチョイスすることができますが、同調コンデンサの容量があまりに小さくなると損失が大きくなり上手くありません。
同調コンデンサの容量は既に計算されており、"Dishal"の左下に表示されている「Ck1=504.7pF、Ck3=1384pF」がそれです。この値は#2の水晶と同じものを使用した場合という仮の計算値ですが、この値からなるべくかけ離れないように水晶を選び出す・・・直感的には判り難いところですね。
このCk1,2の値の横に、何やら意味不明な周波数が書いてあります。題名は「Eqiv. Freq. Offset(Hz)」・・・等価周波数オフセットとでも訳しましょうか。これは、Ck1,3の容量をオフセットに換算した周波数という意味です。接続する水晶のfsは#2のfsからズレていますから、この等価オフセットと接続する水晶のfsのズレを加算或いは減算して再度きちんとしたオフセットを計算し直し、最終的にこれを同調容量として算出できれば水晶毎のズレがきちんと吸収されます。この再計算を行うのが"Xtal Tuning"の役割です。
ここで注意すべきは、Ck1(54Hz)の方がCk3(20Hz)より高い周波数へのシフトが必要だということです。つまり、Ck1が接続される#1,#6の水晶には、採用する水晶の中でfsが高いもの(上の表では4094.678KHzと4094.672KHz)をチョイスすればよく、これを常套手段と考えて良いと思います。6ポールの場合はこれで全ての配置が決まってしまいますね。

では、この順序で同調コンデンサを計算してひとまずフィルタとして設計完了まで持って行きましょう。まずはCs1を接続する#1から。Cs1の等価周波数オフセットは「54Hz」であることは判っていますから、これを上手く和訳できない"Nominal Offset"に入力し、#1に採用する水晶のfsである4094.672KHzを使って"Xtal Tuning"に計算させます。

「583pF」が再計算された同調容量です。こんな風に至極簡単に再計算できますから、「試行錯誤、上等


この要領で#6を、さらに等価周波数オフセットを「20Hz」として#3,#4の再計算を行うと、全ての同調容量が求まります。結合コンデンサは前回記事で求めてありますから、これで全て揃いました。早速、シミュレーションしてみましょう。

う~ん・・・本物の火山のようになってしまいましたね

そうそう、いまさらですが、前回記事に書いた「#の謎」はお解り頂けたんじゃないかな

4.フォーマルな配置でない場合の様子
そもそも前回記事にも登場した「選択した水晶」の表にも既に水晶の順序を示す番号が記してありますが、これは#2,5は同じですがフォーマルな方法でチョイスしなかった場合の一例です。これをシミュレートしてみましょう。

横風を浴びた幽霊のようになっています

このように初期設計の時点では、6ポールくらいのフィルタで今回使う水晶のようにfsの広がり具合があまり大きくなければ、"Xtal Tuning"の調整に任せてある程度ラフに考えて良さそうです。
前回に続いて、また記事が長めになってしまいましたが、”Dishal”を使った設計はこれでお終い・・・次回はもっと実際の水晶に近付けて、フィルタ設計を完了させたいと思います。
CW用クリスタルフィルタの設計・製作(その1)
2017-06-19
4月から先週まで「早出出勤」を余儀なくされいましたが漸くカタが付き、ちょっとだけ楽になりました。今日は自分へのご褒美休日としましたが、実は一昨日(土曜)の晩辺りから我がメインPCの具合がおかしくなり、データディスクの換装を余儀なくされてしまいました。何となく損した気分ですが、ここ当面の自作の目標であるクリスタルフィルタの設計・製作にも時間を割くことができたんで、その乗っけの部分から書いていこうと思います。
フィルタ設計については、DJ6EV局作成の"Dishal Program”(以下、”Dishal"と短くしますね)の手を借りることにしました。このソフトを使ったフィルタ設計は、JA9TTT局、JA2NKD局、JH8SST/7局、他・・・のブログでも紹介されており、そちらをお読み頂いた方が我がヘッポコ記事より有用な情報が得られることは間違いありませんが、自分と同様にクリスタルフィルタの自作を画策している「まだまだ修行が足りぬ、未熟者でもクリスタルフィルタが作れるのんかいな
」というホンの若干名の方には、逆に稚拙な読みものの方が有用かも知れませんので、その若干の方々のために自分の作業進捗に併せてヘッポコ実験の様子を何回かに分けて認めたい(みとめたいって読まないでね
)と思います。
以下、単元毎に進めていくことにしたいと思います。
1."Dishal”の準備
"Dishal”を使ったフィルタ製作ですから、まずはこのプログラムを入手する必要があります。基本となるバージョンは、ARRLの”QEX誌”に添付されているプログラムのアーカイブサイトにあります。この”2009年”のフォルダにある”11x09_Steder-Hardcastle.zip”が圧縮ファイルです。これは”Ver 2.0.3.1であり、新しいWindowsへの対応などが必要な場合は、現時点での最新バージョン(と思われる)”Ver 2.0.5.1”を入手する必要がありますのでお気を付けあそばせ
この設計に先立っては、ダウンロードした圧縮ファイルに同梱されている説明書を読みました。平易な英語で書かれた説明書だったため、拙い英語力でもある程度概要は捕まえられましたが、実際の設計事例(説明書の付録部分)については何度も読み返すことになりました。そこで、この英語の説明書を思い切って全て和訳してしまいました。著作権等もありますのでこれは公開はしませんが、自分としての理解はかなり深まりました。
ちょっと脱線しますが、当初は「本格的なクリスタルフィルタはやっぱ8素子でしょ
」と勝手に思い込んで設計を進めたところ、シミュレーションの時点で微調整が仕切れず帯域内のリプルが酷く、これを抑え付けるに至りませんでした。そこで6素子にしたところ、漸くまともな調整が利くようになり、シミュレーションではそこそこの特性まで追い込むことができるようになったんで、6素子(6ポール)を前提に記していきます。
2.水晶選び
今回は、CW用の狭帯域フィルタにチャレンジします。帯域幅(BW)として250Hz(@-3dB)くらいのものができれば合格とします。勿論、「妙な具合に末広がり」では実用に耐えませんが、今後同様なフィルタを作る際の参考として「そこいらの水晶でどの程度のものができるのか」というポイントを確かめることに主眼を置きたいと思います。
まずは水晶の諸元を測り、その中から「イイ感じ」のものをチョイスします。水晶の諸元の測り方は直前記事に記しましたので省略・・・今回は、諸元測定済みである18個の4.096MHzの水晶から6つを選びました。

CW用のフィルタを作るわけですから、感覚的に「SSBのフィルタより個々の水晶の共振周波数が揃っている方が無難」という観点で選んだわけですが、これが果たして以降の設計・・・"Dishal”で上手く扱えるのかが最初のチェックポイントになります。
さぁ、"Dishal”の出番・・・の前に、上の表から解る幾つかのことを記しておきましょう。
まず、6つの水晶のfs偏差については19Hzです。和訳した説明書(
)には、「ラダー型のフィルタ作成に使う水晶のfsは、BWの±2%以内、帯域内のリプルをある程度許容できる場合でも±5%以内の偏差に留めるべき」と書いてありますが、「fsの揃い具合が良い程有利」というのは解りますね。今回のチョイスでは”19Hz/250Hz≒7.6%”であり、±5%の範疇には入っていますから、そこそこの特性のものができる可能性があります。
まぁ、そもそも"Dishal”は、こうした水晶のfsのばらつきを調整するための計算機能を具備しており、もう少し広範囲にばらついていても何とかして進ぜよう・・・というところがミソのソフトですから、そういう意味では安心して設計を任せることができそうです。
LmとCmの値は小数点以下の桁数がかなり多くなっていますが、これは設計後のシミュレーションをより正しく行うため・・・と、説明書にも明記してあります。実際、今回使用している水晶で、Lmの小数点第3位が1変化すると20Hz程度、Cmの小数点第6位では何と150Hz程度違ってきます。実際はさらに1桁下で四捨五入するため、この半分くらいの誤差含みということになりますが、シミュレーションにはこの程度の精度で良いようです。
Quについては、実際のフィルタの設計に"直接的"には使いません(注)。これはあくまで水晶の品質の良さ・・・文字通り”Quality”について今後の参考に採ったものであり、ネットアナ等が無いと簡単に求められない値です(自分は、前回記事の通り「APB-3+治具」で測定、SGと治具でもできます)。
ちなみに、我が部品箱にある他の周波数の水晶について幾つかQuを測定してみましたが、何れも数万から20万程度・・・結構ばらついています。今回はQuの平均が14万台ですから、まぁ中の上くらいかと思いますがどうなんでしょう
この辺りが今回の実験における重要な確認ポイントでもあります。
「#」の秘密については後々出てくるんで暫し待たれよ・・・ということにして、オレンジ色でマークした水晶を使って設計してみましょう。
3."Dishal”への基準データ入力
4094.655KHzの水晶(#2)のデータを使って、"Dishal”に計算して貰いましょう。

まずは水晶の諸元・・・直列共振周波数(fs)とLm値、それとフィルタに使う水晶の数(ポール数)を入力しています。3dB帯域(200Hz)とリプル値の少ないチェビシェフ型(0.1dB)として、ある程度キレの良いフィルタを目指しています。帯域幅は、出来上がったフィルタが確実に250Hzの帯域以内に収まるよう少し狭く(200Hzに)しています。また、水晶の端子間の容量(Cp)には、使用する水晶全部の平均値を入力しています。
これで、水晶の諸元が入力できました。この時点でのポイントは”fs”であり、これから設計するフィルタの基準周波数になります。
このような狭帯域フィルタで単純に「キレ」を欲張ると、音響的にリンギングやエコーを伴うものになる(例の、雑音さえも変調されて「コー」というような音になる)ようで、CWのフィルタにチェビシェフ型の選択はあまり良くないようです。JA9TTT/加藤OMの解説では”ガウシャン型"(統計などで良く目にする正規分布の形)にした方がよいそうです。ところが、"Dishal”で設計して完成形に近付ける過程で、お誂え向きにもフィルタのエッジ部分が丸く削られる方向になるそうで、ひとまずこの時点では放っておいてあります。
なお、形だけがガウシャンになればそれで良いのかはよく判りません。これもでき上がった時のお楽しみ・・・といった感じで
この入力時点で#2の水晶と同じものが6つ揃っていれば、特性図の左に計算された値を使ってフィルタが作れるんです。ただ、上の表に示したように、実際の水晶の諸元はそれこそマチマチであり、闇雲に連結しても何やら不可解なものができるということなんですね。
4.水晶#2とコンデンサの追加
さて、6ポールのフィルタの回路図は”Dishal”の説明書の付録にありますが、ちょっと補足してみたいと思います。

この回路図には、水晶と直列に接続するCsxとグランドへのバイパスのように見えるCkxxが登場します。前者の直列コンデンサは、対となる水晶の直列共振周波数・・・即ちfsを調整する同調コンデンサ(Tuning Capacitor)です。後者は、個々の水晶同士の結合度合いを調整する結合コンデンサ(Coupling Capacitor)です。特に直列接続するコンデンサの方が「結合に関与するっぽい」という風に見えますが誤解せぬように。
この回路図から、”Dishal”の計算結果として表示されたCk12,Ck23,Ck34、Cs1,Cs3の値をどこに設定すれば良いのか判ります。実は既にこの時点で、Ckxxについては一応計算が完了しています。
そして、基準周波数となる水晶は以降の設計の都合上、図中の「#2」(オレンジで囲んだ水晶の位置)に置く必要があります。この回路図では左端を#1と見立て、右に向かって番号を振っているイメージ・・・左端の隣が#2に当たるわけですが、この水晶には同調コンデンサは付いていませんね。つまり、#2の直列共振周波数がフィルタの基準周波数になり、その他の水晶はこの基準周波数とBWを用いて個々に調整することになるわけです。
もう一つ、同調コンデンサの無い水晶が右から2番目にあります(#5)。ラダー型のフィルタは、このように「対称形」なるのが普通であり、この回路図でもそのように描かれているわけですが、この右から2番目にある水晶のfsが#2の周波数と「できるだけ近い」ということが、対称形を構成するためには要求されます。そこで、もし#5に置く水晶のfsが#2のfsに対して偏差が大きい場合、図中の赤い矢印で示した部分に直列に同調コンデンサを置いてfsを調整する必要が生じます。
これに準じて、Cs1,Cs3についても原則的に#2の水晶のfsとの偏差と実現すべきBWを勘案して計算し直す必要があります。"Dishal”では、そのヒントとなる情報まで既に計算済み・・・というわけで、正しくフィルタ設計に有用なツールと言えます。
5.ここまでの設計結果
ひとまず、#2に置く水晶を決めた段階で弾き出された結果・・・上の”Dishal"のグラフィックに示した結果を回路図にプロットしてみましょう。

上にも書いた通り、もし#2と同じ諸元を持つ6つの水晶が準備できれば設計はこれでお終いなんですが、「そうは問屋が卸さない」ということなんですね・・・さらなる詳細は続編にしましょうか
差替 2017.6.21>
・選択した水晶の表が、自分の実験途上の古い方になっていましたので差し替えました。また、平均値の欄を整理。
・”Dishal”に入力したLm値が少し違っていたためこれを修正・・・入力ミスでした。これに伴い、最後の計算結果も修正。
注釈 2017.06.26>
ちょっと表現が宜しくなかったようです。直接的に・・・というのは、”Dishal”で計算する部分には関係ないという意味であり、最終的にフィルタの特性の確認や微調整を行うのに"Rm"が必要ですから、Quは自ずと算出できます。
フィルタ設計については、DJ6EV局作成の"Dishal Program”(以下、”Dishal"と短くしますね)の手を借りることにしました。このソフトを使ったフィルタ設計は、JA9TTT局、JA2NKD局、JH8SST/7局、他・・・のブログでも紹介されており、そちらをお読み頂いた方が我がヘッポコ記事より有用な情報が得られることは間違いありませんが、自分と同様にクリスタルフィルタの自作を画策している「まだまだ修行が足りぬ、未熟者でもクリスタルフィルタが作れるのんかいな


以下、単元毎に進めていくことにしたいと思います。
1."Dishal”の準備
"Dishal”を使ったフィルタ製作ですから、まずはこのプログラムを入手する必要があります。基本となるバージョンは、ARRLの”QEX誌”に添付されているプログラムのアーカイブサイトにあります。この”2009年”のフォルダにある”11x09_Steder-Hardcastle.zip”が圧縮ファイルです。これは”Ver 2.0.3.1であり、新しいWindowsへの対応などが必要な場合は、現時点での最新バージョン(と思われる)”Ver 2.0.5.1”を入手する必要がありますのでお気を付けあそばせ

この設計に先立っては、ダウンロードした圧縮ファイルに同梱されている説明書を読みました。平易な英語で書かれた説明書だったため、拙い英語力でもある程度概要は捕まえられましたが、実際の設計事例(説明書の付録部分)については何度も読み返すことになりました。そこで、この英語の説明書を思い切って全て和訳してしまいました。著作権等もありますのでこれは公開はしませんが、自分としての理解はかなり深まりました。
ちょっと脱線しますが、当初は「本格的なクリスタルフィルタはやっぱ8素子でしょ

2.水晶選び
今回は、CW用の狭帯域フィルタにチャレンジします。帯域幅(BW)として250Hz(@-3dB)くらいのものができれば合格とします。勿論、「妙な具合に末広がり」では実用に耐えませんが、今後同様なフィルタを作る際の参考として「そこいらの水晶でどの程度のものができるのか」というポイントを確かめることに主眼を置きたいと思います。
まずは水晶の諸元を測り、その中から「イイ感じ」のものをチョイスします。水晶の諸元の測り方は直前記事に記しましたので省略・・・今回は、諸元測定済みである18個の4.096MHzの水晶から6つを選びました。

CW用のフィルタを作るわけですから、感覚的に「SSBのフィルタより個々の水晶の共振周波数が揃っている方が無難」という観点で選んだわけですが、これが果たして以降の設計・・・"Dishal”で上手く扱えるのかが最初のチェックポイントになります。
さぁ、"Dishal”の出番・・・の前に、上の表から解る幾つかのことを記しておきましょう。
まず、6つの水晶のfs偏差については19Hzです。和訳した説明書(

まぁ、そもそも"Dishal”は、こうした水晶のfsのばらつきを調整するための計算機能を具備しており、もう少し広範囲にばらついていても何とかして進ぜよう・・・というところがミソのソフトですから、そういう意味では安心して設計を任せることができそうです。
LmとCmの値は小数点以下の桁数がかなり多くなっていますが、これは設計後のシミュレーションをより正しく行うため・・・と、説明書にも明記してあります。実際、今回使用している水晶で、Lmの小数点第3位が1変化すると20Hz程度、Cmの小数点第6位では何と150Hz程度違ってきます。実際はさらに1桁下で四捨五入するため、この半分くらいの誤差含みということになりますが、シミュレーションにはこの程度の精度で良いようです。
Quについては、実際のフィルタの設計に"直接的"には使いません(注)。これはあくまで水晶の品質の良さ・・・文字通り”Quality”について今後の参考に採ったものであり、ネットアナ等が無いと簡単に求められない値です(自分は、前回記事の通り「APB-3+治具」で測定、SGと治具でもできます)。
ちなみに、我が部品箱にある他の周波数の水晶について幾つかQuを測定してみましたが、何れも数万から20万程度・・・結構ばらついています。今回はQuの平均が14万台ですから、まぁ中の上くらいかと思いますがどうなんでしょう

「#」の秘密については後々出てくるんで暫し待たれよ・・・ということにして、オレンジ色でマークした水晶を使って設計してみましょう。
3."Dishal”への基準データ入力
4094.655KHzの水晶(#2)のデータを使って、"Dishal”に計算して貰いましょう。

まずは水晶の諸元・・・直列共振周波数(fs)とLm値、それとフィルタに使う水晶の数(ポール数)を入力しています。3dB帯域(200Hz)とリプル値の少ないチェビシェフ型(0.1dB)として、ある程度キレの良いフィルタを目指しています。帯域幅は、出来上がったフィルタが確実に250Hzの帯域以内に収まるよう少し狭く(200Hzに)しています。また、水晶の端子間の容量(Cp)には、使用する水晶全部の平均値を入力しています。
これで、水晶の諸元が入力できました。この時点でのポイントは”fs”であり、これから設計するフィルタの基準周波数になります。
このような狭帯域フィルタで単純に「キレ」を欲張ると、音響的にリンギングやエコーを伴うものになる(例の、雑音さえも変調されて「コー」というような音になる)ようで、CWのフィルタにチェビシェフ型の選択はあまり良くないようです。JA9TTT/加藤OMの解説では”ガウシャン型"(統計などで良く目にする正規分布の形)にした方がよいそうです。ところが、"Dishal”で設計して完成形に近付ける過程で、お誂え向きにもフィルタのエッジ部分が丸く削られる方向になるそうで、ひとまずこの時点では放っておいてあります。
なお、形だけがガウシャンになればそれで良いのかはよく判りません。これもでき上がった時のお楽しみ・・・といった感じで

この入力時点で#2の水晶と同じものが6つ揃っていれば、特性図の左に計算された値を使ってフィルタが作れるんです。ただ、上の表に示したように、実際の水晶の諸元はそれこそマチマチであり、闇雲に連結しても何やら不可解なものができるということなんですね。
4.水晶#2とコンデンサの追加
さて、6ポールのフィルタの回路図は”Dishal”の説明書の付録にありますが、ちょっと補足してみたいと思います。

この回路図には、水晶と直列に接続するCsxとグランドへのバイパスのように見えるCkxxが登場します。前者の直列コンデンサは、対となる水晶の直列共振周波数・・・即ちfsを調整する同調コンデンサ(Tuning Capacitor)です。後者は、個々の水晶同士の結合度合いを調整する結合コンデンサ(Coupling Capacitor)です。特に直列接続するコンデンサの方が「結合に関与するっぽい」という風に見えますが誤解せぬように。
この回路図から、”Dishal”の計算結果として表示されたCk12,Ck23,Ck34、Cs1,Cs3の値をどこに設定すれば良いのか判ります。実は既にこの時点で、Ckxxについては一応計算が完了しています。
そして、基準周波数となる水晶は以降の設計の都合上、図中の「#2」(オレンジで囲んだ水晶の位置)に置く必要があります。この回路図では左端を#1と見立て、右に向かって番号を振っているイメージ・・・左端の隣が#2に当たるわけですが、この水晶には同調コンデンサは付いていませんね。つまり、#2の直列共振周波数がフィルタの基準周波数になり、その他の水晶はこの基準周波数とBWを用いて個々に調整することになるわけです。
もう一つ、同調コンデンサの無い水晶が右から2番目にあります(#5)。ラダー型のフィルタは、このように「対称形」なるのが普通であり、この回路図でもそのように描かれているわけですが、この右から2番目にある水晶のfsが#2の周波数と「できるだけ近い」ということが、対称形を構成するためには要求されます。そこで、もし#5に置く水晶のfsが#2のfsに対して偏差が大きい場合、図中の赤い矢印で示した部分に直列に同調コンデンサを置いてfsを調整する必要が生じます。
これに準じて、Cs1,Cs3についても原則的に#2の水晶のfsとの偏差と実現すべきBWを勘案して計算し直す必要があります。"Dishal”では、そのヒントとなる情報まで既に計算済み・・・というわけで、正しくフィルタ設計に有用なツールと言えます。
5.ここまでの設計結果
ひとまず、#2に置く水晶を決めた段階で弾き出された結果・・・上の”Dishal"のグラフィックに示した結果を回路図にプロットしてみましょう。

上にも書いた通り、もし#2と同じ諸元を持つ6つの水晶が準備できれば設計はこれでお終いなんですが、「そうは問屋が卸さない」ということなんですね・・・さらなる詳細は続編にしましょうか

差替 2017.6.21>
・選択した水晶の表が、自分の実験途上の古い方になっていましたので差し替えました。また、平均値の欄を整理。
・”Dishal”に入力したLm値が少し違っていたためこれを修正・・・入力ミスでした。これに伴い、最後の計算結果も修正。
注釈 2017.06.26>
ちょっと表現が宜しくなかったようです。直接的に・・・というのは、”Dishal”で計算する部分には関係ないという意味であり、最終的にフィルタの特性の確認や微調整を行うのに"Rm"が必要ですから、Quは自ずと算出できます。
水晶パラメータ測定の様子
2017-06-11
昨日・今日の休日は、ほぼ天気予報通りとなりました。特に昨日の土曜日は30℃近くまで気温が上がり、かつ湿った南風という梅雨の合間独特の天気・・・夕刻シャワーを浴びてから買い物に出掛けたため汗ビッショリとはならなかったものの、やがては来るであろう本格的な梅雨を想像し、少々ゲンナリしてしまいました
が、5月末に掃除しておいたエアコンは絶好調、今年も世話になることでしょう。
この週末の空いた時間は、先日作成した水晶測定アダプタで水晶のパラメータを測定してみました。まずは測定対象である水晶のスナップから。

この水晶は、ラダー型のフィルタを作ろうと思いヤフオクで落札したもので「4096KHz」のもの。取引メールを見たら「2009年」に入手したようです。SII製(セイコーインスツル社製)のようで、半端な数(19個)の売り切りだったこともありかなり廉価に入手できました。
当時はSSBの自作機を画策していたこともあり、「中心周波数を合わせて適当なコンデンサで帯域成形」といった簡易な設計で組み上げられるもの(どうやら、Cohn型というらしいです・・・)を指向していましたが、興味の対象がほぼ完全にCWへ移ってかなり狭帯域なものが必要となり、自作するハードルが一段上がってしまったためそのままお蔵入り
その後、WやEUの自作派が重用する設計方法や設計ツールについて、JAの自作派OM諸氏のWeb記事(一部、無線雑誌の記事)として紹介されるようになりました。そして、JA9TTT/加藤OMのWeb記事を始めとしてかなり丁寧にまとめて発表される記事が散見されるようになり、かつこの間に実に優秀な実用測定器「APB-3」を入手したことも後押しとなり、遅ればせながら自分もチャレンジしてみようと思った次第。
そんなわけで、約8年の眠りから覚めた水晶達は、いきなり選別し易いようにマジックで番号を振られることになった・・・というのが、上のスナップでした
番号が振られた水晶は、一先ず自作LCメータで全ての水晶の端子間容量「Cp」を測定して表作りを開始。続いて、水晶の発振周波数等を測定して・・・いえいえ、その前に、水晶測定アダプタに具備した直列コンデンサの容量を測っておきましょう。何処を測るかって
では、回路図を再掲。

直列コンデンサはSW1をオンにした状態でA-B間の容量を測ります。このコンデンサは取り外したりしませんから、一度キチンと測っておけばOK。

何度か測定して27.04pFで安定しましたので、これを容量値としました。このコンデンサの表示容量は24pFですが、コンデンサ自体の誤差とストレー容量含みでこの値になるんでしょう。
これでアダプタの準備が整いました。早速、水晶のパラメータを測定しましょう。まずは直列共振周波数「fs」を測定します。4096KHzより少し下の周波数で共振する筈ですから、その辺りに狙いを付けてAPB-3のネットアナモードで探します。

測定風景です。足が長いまま、ピンソケットに挿して測定していますが、何れソケットがヘタるのは必至・・・というわけで、この部分は2段重ねにしています。
APB-3で採れた直列共振の様子を以下に。

ネットアナモードでの測定ですから事前に測定帯域の正規化をしておくのは勿論ですが、上手く帯域を選んでやると、正規化の作業は少ない回数で済みます。例えば、上のグラフで4.094671MHz±100Hz以内に直列共振周波数がある水晶を測定する場合、正規化は必要ないことになります。正規化する場合は、水晶を外した状態でSW3のみをオンにして帯域内を1度掃引してやり、それを正規化データにすればOKです。
直列共振周波数の測定が終わったら、水晶と直列コンデンサを接続・・・即ちSW1をオンにして直列コンデンサを接続した状態で、水晶の共振周波数のズレを測定します。測定の方法は、上記直列共振周波数の測定と同じです。
これが終わったら最後の測定・・・水晶の損失を求めます。これには一手間必要です。
まず、直列共振周波数を求めた時と同じように測定を行い、直列共振周波数のピーク値を記憶しておきます。上のグラフではこの値が「-4.56dB」になっていますね。これが終わったらSW2をオンにし、このピーク値と同じ値になるように、アダプタに具備したボリュームを調整します。
APB-3では測定データのトレース数を簡単に変更できますから、直列共振周波数の測定終了後にトレース数を「2」にして、ボリューム調整が何度でも行えるようにしておくと良いでしょう。多少コツが要りますが、慣れると以下のようにデータが採れます。

この状態になったらボリュームの値を読めば、それが損失を示す「Rm」ということになります。この時、アダプタのスイッチ状態はSW2がオンであるだけであり、ボリューム両端の端子B,Cにテスターを当てるとSW1(これはオフ)を介して導通してしまい抵抗値が測れないため、SW1もオンにしてからテスターを当てます。
こうして得られたデータから計算した水晶のパラメータを表にまとめたものを以下に。

まぁざっと、こんな具合にパラメータの測定が完了しました。19個あったはずの水晶が1つ足りないのは、別の実験で使って元に戻さなかったため、何処かへ旅に出た模様・・・。
Cp、fs、fΔ、Rmが求められれば、後はExcelに仕込んだ計算式が自動的に計算してくれます。「組合せ」の部分は、8ポールのフィルタを組む場合に比較的fsが近いものを選ぶとこんな感じになるということを示しおり、3つのパターンができそうです。
これらのデータは勿論「精度良く」という部分が後々モノを言いそうですが、自作の治具+APB-3という条件でどんなフィルタができるか・・・この辺りが最も興味が湧くところでしょう。また、使用するツールの理解には「英語必須」であり、漸く大筋は掴んだといった状態です。この辺りが紹介できれば、このヘッポコ・ブログも報われるというものでしょう。上手くいかなければ原因を探り、一段ずつステップアップできれば・・・ここ暫くは、このフィルタのネタが続きますよ

この週末の空いた時間は、先日作成した水晶測定アダプタで水晶のパラメータを測定してみました。まずは測定対象である水晶のスナップから。

この水晶は、ラダー型のフィルタを作ろうと思いヤフオクで落札したもので「4096KHz」のもの。取引メールを見たら「2009年」に入手したようです。SII製(セイコーインスツル社製)のようで、半端な数(19個)の売り切りだったこともありかなり廉価に入手できました。
当時はSSBの自作機を画策していたこともあり、「中心周波数を合わせて適当なコンデンサで帯域成形」といった簡易な設計で組み上げられるもの(どうやら、Cohn型というらしいです・・・)を指向していましたが、興味の対象がほぼ完全にCWへ移ってかなり狭帯域なものが必要となり、自作するハードルが一段上がってしまったためそのままお蔵入り

その後、WやEUの自作派が重用する設計方法や設計ツールについて、JAの自作派OM諸氏のWeb記事(一部、無線雑誌の記事)として紹介されるようになりました。そして、JA9TTT/加藤OMのWeb記事を始めとしてかなり丁寧にまとめて発表される記事が散見されるようになり、かつこの間に実に優秀な実用測定器「APB-3」を入手したことも後押しとなり、遅ればせながら自分もチャレンジしてみようと思った次第。
そんなわけで、約8年の眠りから覚めた水晶達は、いきなり選別し易いようにマジックで番号を振られることになった・・・というのが、上のスナップでした

番号が振られた水晶は、一先ず自作LCメータで全ての水晶の端子間容量「Cp」を測定して表作りを開始。続いて、水晶の発振周波数等を測定して・・・いえいえ、その前に、水晶測定アダプタに具備した直列コンデンサの容量を測っておきましょう。何処を測るかって


直列コンデンサはSW1をオンにした状態でA-B間の容量を測ります。このコンデンサは取り外したりしませんから、一度キチンと測っておけばOK。

何度か測定して27.04pFで安定しましたので、これを容量値としました。このコンデンサの表示容量は24pFですが、コンデンサ自体の誤差とストレー容量含みでこの値になるんでしょう。
これでアダプタの準備が整いました。早速、水晶のパラメータを測定しましょう。まずは直列共振周波数「fs」を測定します。4096KHzより少し下の周波数で共振する筈ですから、その辺りに狙いを付けてAPB-3のネットアナモードで探します。

測定風景です。足が長いまま、ピンソケットに挿して測定していますが、何れソケットがヘタるのは必至・・・というわけで、この部分は2段重ねにしています。
APB-3で採れた直列共振の様子を以下に。

ネットアナモードでの測定ですから事前に測定帯域の正規化をしておくのは勿論ですが、上手く帯域を選んでやると、正規化の作業は少ない回数で済みます。例えば、上のグラフで4.094671MHz±100Hz以内に直列共振周波数がある水晶を測定する場合、正規化は必要ないことになります。正規化する場合は、水晶を外した状態でSW3のみをオンにして帯域内を1度掃引してやり、それを正規化データにすればOKです。
直列共振周波数の測定が終わったら、水晶と直列コンデンサを接続・・・即ちSW1をオンにして直列コンデンサを接続した状態で、水晶の共振周波数のズレを測定します。測定の方法は、上記直列共振周波数の測定と同じです。
これが終わったら最後の測定・・・水晶の損失を求めます。これには一手間必要です。
まず、直列共振周波数を求めた時と同じように測定を行い、直列共振周波数のピーク値を記憶しておきます。上のグラフではこの値が「-4.56dB」になっていますね。これが終わったらSW2をオンにし、このピーク値と同じ値になるように、アダプタに具備したボリュームを調整します。
APB-3では測定データのトレース数を簡単に変更できますから、直列共振周波数の測定終了後にトレース数を「2」にして、ボリューム調整が何度でも行えるようにしておくと良いでしょう。多少コツが要りますが、慣れると以下のようにデータが採れます。

この状態になったらボリュームの値を読めば、それが損失を示す「Rm」ということになります。この時、アダプタのスイッチ状態はSW2がオンであるだけであり、ボリューム両端の端子B,Cにテスターを当てるとSW1(これはオフ)を介して導通してしまい抵抗値が測れないため、SW1もオンにしてからテスターを当てます。
こうして得られたデータから計算した水晶のパラメータを表にまとめたものを以下に。

まぁざっと、こんな具合にパラメータの測定が完了しました。19個あったはずの水晶が1つ足りないのは、別の実験で使って元に戻さなかったため、何処かへ旅に出た模様・・・。
Cp、fs、fΔ、Rmが求められれば、後はExcelに仕込んだ計算式が自動的に計算してくれます。「組合せ」の部分は、8ポールのフィルタを組む場合に比較的fsが近いものを選ぶとこんな感じになるということを示しおり、3つのパターンができそうです。
これらのデータは勿論「精度良く」という部分が後々モノを言いそうですが、自作の治具+APB-3という条件でどんなフィルタができるか・・・この辺りが最も興味が湧くところでしょう。また、使用するツールの理解には「英語必須」であり、漸く大筋は掴んだといった状態です。この辺りが紹介できれば、このヘッポコ・ブログも報われるというものでしょう。上手くいかなければ原因を探り、一段ずつステップアップできれば・・・ここ暫くは、このフィルタのネタが続きますよ

水晶測定アダプタの試作
2017-06-09
SSB/CWの自作機の受信IF周りを検討していくと、選択度を決定するフィルタを吟味する場面が出てきます。最近のメーカー機のIF回路周辺はデジタル化され、フィルタ自体もDSP処理による場合が多くなってきましたが、チープな自作機ではまだまだアナログ回路設計が主流・・・やはり、クリスタルフィルタを上手く仕立てることができれば言うことありませんよね
クリスタルフィルタは恥ずかしながら自作したことはありませんが、今に及んで自分も過去の技術書や雑誌の製作記事を参考に「丁稚上げること」はできそう。特に、水晶発振子(以下、単に水晶)自体はかなりの廉価で入手できることから、これを使って作ることができれば一番だと思います。
しかし、でき上がった後の性能・・・キレ味や音質に関わる部分で満足いくか否かは、作ってみなけりゃ判りません。自分で組んでみて喜んだり悲しんだりするのが、クリスタルフィルタ自作の醍醐味なんじゃよ
・・・と逃げ口上するのも一興でしょうが、もう少し確実に自作する方法があれば、それに越したことはありませんよね。
前回記事に枕が無かったためかまたしても能書きが若干増量となりました
が、要は「そこらにある水晶でそこそこ使えそうなフィルタを作ってみよう
」というのが、ここ暫くの記事ネタになります。
クリスタルフィルタの自作は、個々の水晶を「LCR共振器」と見立ててこれを複数個接続して期待する帯域幅と減衰斜度(或いはシェープファクタ)を得るようにするものです。水晶の共振(発振も同じように考えられます。フィルタのネタなんで、以下は単に共振)の様子は等価回路で理解が深まります。

この等価回路のポイントは、「LCR直列共振回路」を構成している上辺の部分です。水晶の共振周波数の殆どはLmとCmで決まります。Rmは共振に当たって生じる”損失”の部分です。クリスタルフィルタを作る場合は損失が小さければ小さい程Quが高いということになり、シャープなフィルタが作れます。
Cpは小容量が測定できる容量計で簡単に測定できますから、上辺を構成するデバイスの個々の値が簡単に判れば話は早いんですが・・・。すると、これらの値を解き明かす方法は先駆のOM諸氏のWeb記事に幾つも見つけることができ、「ちょっとした治具」を用意した上でAPB-3を使って調べてやれば、あとは計算で求められることが判りました。
その治具に要求される機能は、以下のようになります。
① 水晶の共振周波数は、SG等で外から信号を与えてその共振
周波数を測定する。共振周波数の測定を含めたデータ採集時の
インピーダンスは低い方がよく、標準的な測定方法では12.5Ωで
測定する(らしい)。
② Cmは、対象の水晶と直列に値が判っているコンデンサを接続し、
共振周波数の偏差を知ることにより求められる。
これは、ポピュラーな小容量測定の仕掛けと同様の原理である
(と思う)。Cmが求まれば、発振周波数からLmの値も計算できる。
③ 水晶の共振周波数の信号を与えた場合、その水晶固有の”損失"が
生じる。これがRmである。この測定は、水晶を通した信号の出力値を
読み取っておき、水晶の代わりに低抵抗のボリュームを通して測定
した出力値が同じになるように調整、その時の抵抗値がRmとなる
(という測定方法)。
文章で書いても、あまりピンときませんね・・・
では、回路図を見てみましょうか。

入出力に-3dBのアッテネータを介した上で変換比4:1のトランスを置いてやることで、水晶の入出力インピーダンスを12.5Ωになるようにしました。さらに小さなスイッチを組み合わせ、測定対象に合わせて回路構成を切り替えられるようにしました。解説は要らないかと思いますが、各スイッチの役割をまとめておきます。
SW-1 水晶と直列に接続するコンデンサのオン/オフ
SW-2 水晶の損失(Rm)を測定する際のボリュームのオン/オフ
SW-3 APB-3を接続してキャリブレする際のショート/オープン
試作した水晶測定アダプタはこんな感じ。

秋月D基板に組みました。基板の裏はまたしても「カッターでパターン作り」とし、必要なスイッチも秋月の小型トグルスイッチで組みました。水晶と直列に接続するコンデンサはジャンクのセラコンで、「24pF」というあまりお目にかかれない容量のもの。20~30pF程度のものなら何でもいいと思います。
実験用の「台」は、秋月C/D基板が収まるように穴開けして金属スペーサを取り付けたもの。この程度の造作でも安定な測定には不可欠かと思いますが、この台自体は、まだまだ工夫の余地がありそうですね
こんなチープなアダプタでもそこそこの「諸元採り」はできそうで、クリスタルフィルタ製作に向けたデータ測定はこれで一先ずやってみようかと。続報はこの週末にまとめたいと思いますが、何やら家族イベントがあるような
ま、こんなマニアックな記事の続編を待つ輩はあまりいらっしゃらないでしょうからマイペースで・・・って、いつもマイペースでしたね
修正 2017.06.13>
奇特な読者の方から「回路図、違ってるぞぃ」というご指摘を頂いたんで確認したところ、トランスの接続が逆・・・測定対象の水晶の方がインピーダンスが高いということになってました。謹んで、差し替えさせて頂きました。ありがとうございました。
ちなみに、回路自体は間違っていなかったことが確認できたんで、次の記事のデータは合っていたようです。フゥ・・・ヤレヤレ。

クリスタルフィルタは恥ずかしながら自作したことはありませんが、今に及んで自分も過去の技術書や雑誌の製作記事を参考に「丁稚上げること」はできそう。特に、水晶発振子(以下、単に水晶)自体はかなりの廉価で入手できることから、これを使って作ることができれば一番だと思います。
しかし、でき上がった後の性能・・・キレ味や音質に関わる部分で満足いくか否かは、作ってみなけりゃ判りません。自分で組んでみて喜んだり悲しんだりするのが、クリスタルフィルタ自作の醍醐味なんじゃよ

前回記事に枕が無かったためかまたしても能書きが若干増量となりました


クリスタルフィルタの自作は、個々の水晶を「LCR共振器」と見立ててこれを複数個接続して期待する帯域幅と減衰斜度(或いはシェープファクタ)を得るようにするものです。水晶の共振(発振も同じように考えられます。フィルタのネタなんで、以下は単に共振)の様子は等価回路で理解が深まります。

この等価回路のポイントは、「LCR直列共振回路」を構成している上辺の部分です。水晶の共振周波数の殆どはLmとCmで決まります。Rmは共振に当たって生じる”損失”の部分です。クリスタルフィルタを作る場合は損失が小さければ小さい程Quが高いということになり、シャープなフィルタが作れます。
Cpは小容量が測定できる容量計で簡単に測定できますから、上辺を構成するデバイスの個々の値が簡単に判れば話は早いんですが・・・。すると、これらの値を解き明かす方法は先駆のOM諸氏のWeb記事に幾つも見つけることができ、「ちょっとした治具」を用意した上でAPB-3を使って調べてやれば、あとは計算で求められることが判りました。
その治具に要求される機能は、以下のようになります。
① 水晶の共振周波数は、SG等で外から信号を与えてその共振
周波数を測定する。共振周波数の測定を含めたデータ採集時の
インピーダンスは低い方がよく、標準的な測定方法では12.5Ωで
測定する(らしい)。
② Cmは、対象の水晶と直列に値が判っているコンデンサを接続し、
共振周波数の偏差を知ることにより求められる。
これは、ポピュラーな小容量測定の仕掛けと同様の原理である
(と思う)。Cmが求まれば、発振周波数からLmの値も計算できる。
③ 水晶の共振周波数の信号を与えた場合、その水晶固有の”損失"が
生じる。これがRmである。この測定は、水晶を通した信号の出力値を
読み取っておき、水晶の代わりに低抵抗のボリュームを通して測定
した出力値が同じになるように調整、その時の抵抗値がRmとなる
(という測定方法)。
文章で書いても、あまりピンときませんね・・・


入出力に-3dBのアッテネータを介した上で変換比4:1のトランスを置いてやることで、水晶の入出力インピーダンスを12.5Ωになるようにしました。さらに小さなスイッチを組み合わせ、測定対象に合わせて回路構成を切り替えられるようにしました。解説は要らないかと思いますが、各スイッチの役割をまとめておきます。
SW-1 水晶と直列に接続するコンデンサのオン/オフ
SW-2 水晶の損失(Rm)を測定する際のボリュームのオン/オフ
SW-3 APB-3を接続してキャリブレする際のショート/オープン
試作した水晶測定アダプタはこんな感じ。

秋月D基板に組みました。基板の裏はまたしても「カッターでパターン作り」とし、必要なスイッチも秋月の小型トグルスイッチで組みました。水晶と直列に接続するコンデンサはジャンクのセラコンで、「24pF」というあまりお目にかかれない容量のもの。20~30pF程度のものなら何でもいいと思います。
実験用の「台」は、秋月C/D基板が収まるように穴開けして金属スペーサを取り付けたもの。この程度の造作でも安定な測定には不可欠かと思いますが、この台自体は、まだまだ工夫の余地がありそうですね

こんなチープなアダプタでもそこそこの「諸元採り」はできそうで、クリスタルフィルタ製作に向けたデータ測定はこれで一先ずやってみようかと。続報はこの週末にまとめたいと思いますが、何やら家族イベントがあるような


修正 2017.06.13>
奇特な読者の方から「回路図、違ってるぞぃ」というご指摘を頂いたんで確認したところ、トランスの接続が逆・・・測定対象の水晶の方がインピーダンスが高いということになってました。謹んで、差し替えさせて頂きました。ありがとうございました。
ちなみに、回路自体は間違っていなかったことが確認できたんで、次の記事のデータは合っていたようです。フゥ・・・ヤレヤレ。
SSB復調アダプタの完成と諸元の確認
2017-06-01
いつもはつらつらと能書きを書いてから始めるヘッポコ記事ですが、今回は趣向を変えて、漸く完成したSSB復調アダプタのまとめをいきなり始めたいと思います。

外観は全く面白くありません。電源スイッチを省略して何とか前面パネルに必要なものを詰め込むつもりが、うっかり出力端子(3Pのミニジャック)を失念してしまい、慌てて背面に取り付けたという茶番・・・実験機材ですからこれでも十分と言えますが、まぁ大失敗ですね
このアダプタはIFアンプに後置するものとして作りましたから、入出力の諸元が判っていないと使えません。キャリア注入量は復調IC (LM1496H)のカタログスペックである「300mVrms」を守ることにして、IF信号と低周波出力の関係・・・周波数特性とゲインについてデータ採りをしました。
局発は、VR製DDSにクラニシ君@SG用のアンプとアッテネータを接続して凡そ300mVrmsになるように調整して準備、後はジャン測SGからIF出力電力として今のところ前提にしている-13dBm・・・50mVrmsの出力設定で、局発周波数から10Hz離れた所を始点に手動でスイープし、10000Hz離調までの出力の様子をオシロで読み取りグラフにしました。なお、この時のボリューム設定は「最大」にしていますので、オペアンプで10dB程度は稼いでいることが前提になります。

多く語る必要はないと思います。このグラフでは、周波数特性を電圧利得で表現した格好にしていますが、いわゆる可聴周波数域では、ほぼフラットな特性になっていることが判ります。また、このアダプタを作ろうと思い始めた際にシミュレートした周波数特性ともよく一致しており、直前記事に記した「文化放送を聞いてみた感触」からも、復調アダプタとして上手くこしらえられたと思います
今日の所は2MHzと7MHzでデータを採ってみましたが、これも復調ICのデータシートにあるように低い周波数ほどゲインが大きくなっています。ボリューム最大の状態でヘッドホンで聴くとちょっと耐えがたい大きな音がし、普通の音量で聴くにはかなりボリュームを絞らなければなりませんが、この辺りもちょっと余裕を持たせた設計(このアダプタ全体で20dB程度のゲインを見込んだこと)で上手くいったようです。
IFアンプの実験をする前にはもう一つのヤマ・・・CW用のクリスタルフィルタの製作が待っています。実はこの部分にも作りものが絡むんで、目指す「デジタル制御のIFアンプ完成」までの道のりは未だ相当に長そうだということですね。モノ好きの御仁は、気長にお付き合い下され・・・ナムアミダブツ、ナムアミダブツ

外観は全く面白くありません。電源スイッチを省略して何とか前面パネルに必要なものを詰め込むつもりが、うっかり出力端子(3Pのミニジャック)を失念してしまい、慌てて背面に取り付けたという茶番・・・実験機材ですからこれでも十分と言えますが、まぁ大失敗ですね

このアダプタはIFアンプに後置するものとして作りましたから、入出力の諸元が判っていないと使えません。キャリア注入量は復調IC (LM1496H)のカタログスペックである「300mVrms」を守ることにして、IF信号と低周波出力の関係・・・周波数特性とゲインについてデータ採りをしました。
局発は、VR製DDSにクラニシ君@SG用のアンプとアッテネータを接続して凡そ300mVrmsになるように調整して準備、後はジャン測SGからIF出力電力として今のところ前提にしている-13dBm・・・50mVrmsの出力設定で、局発周波数から10Hz離れた所を始点に手動でスイープし、10000Hz離調までの出力の様子をオシロで読み取りグラフにしました。なお、この時のボリューム設定は「最大」にしていますので、オペアンプで10dB程度は稼いでいることが前提になります。

多く語る必要はないと思います。このグラフでは、周波数特性を電圧利得で表現した格好にしていますが、いわゆる可聴周波数域では、ほぼフラットな特性になっていることが判ります。また、このアダプタを作ろうと思い始めた際にシミュレートした周波数特性ともよく一致しており、直前記事に記した「文化放送を聞いてみた感触」からも、復調アダプタとして上手くこしらえられたと思います

今日の所は2MHzと7MHzでデータを採ってみましたが、これも復調ICのデータシートにあるように低い周波数ほどゲインが大きくなっています。ボリューム最大の状態でヘッドホンで聴くとちょっと耐えがたい大きな音がし、普通の音量で聴くにはかなりボリュームを絞らなければなりませんが、この辺りもちょっと余裕を持たせた設計(このアダプタ全体で20dB程度のゲインを見込んだこと)で上手くいったようです。
IFアンプの実験をする前にはもう一つのヤマ・・・CW用のクリスタルフィルタの製作が待っています。実はこの部分にも作りものが絡むんで、目指す「デジタル制御のIFアンプ完成」までの道のりは未だ相当に長そうだということですね。モノ好きの御仁は、気長にお付き合い下され・・・ナムアミダブツ、ナムアミダブツ
