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今更ながら、CW用オーディオフィルタ製作(その序)

2019-05-17      
 先日の ALL JAの最中に「もう少し目的局のトーンが聞き易くならないかなぁ」と思い、やはりオーディオ部分での処理をもう少ししっかりした方がよいのではないかという疑念が浮かんできました。
 メジャーコンテストのローバンドのような超過密な状況では、リグのIF帯域を絞って凌ぐことになるため、果たしてオーディオ部で何を補ってもそれほど了解度が改善するとは思えない部分はあるものの、実際には、目的の局と混信してくる局との周波数の差や信号強度の差によっては、そこそこ良質なオーディオフィルタが活躍する場面もあるのではないかと考えたわけです。

 これまでのコンテスト参加では、昔作ったパッシブフィルタ・・・通称「謎の小箱」を使っています。これでも極端な高音・低音を抑えるため、いわゆる"ノイズ"はかなり低減し、何もないよりは圧倒的に聞き易くなるんですが、もう少し素性の知れたフィルタが欲しくなりました。

 CWフィルタとしては、目的の信号だけを取り出すQの高いバンドパスフィルタをこしらえれば済みそうですが、狭帯域にするほど顕在化する”リンギング”や”残響”を如何に抑えるかという相反する課題が出てくることは、CWをお楽しみの局長さんはご存知でしょう。我が愛機TS-590でも、流石に250Hzを割り込む帯域幅にすると聴き辛い音になり、かつノイズが変調されたヒュー(或いはポー)という音を聴かされることになります。

 リンギングや残響が少ないフィルタにはガウシャン特性に近いものが良さそうだということをJA9TTT/加藤OMのブログで学び、そのリンギングの測定方法も先のクリスタルフィルタ実験で心得ましたから、廉価な汎用オペアンプ利用の範疇でBPFを作ってみることにしました。

 まずは必要なスペックを簡単にまとめましょう。

 ① 機能は欲張らず単なるBPF機能のみとし、出力にはヘッドホンを使用する。
 ② 電池で動作するようにして、電源ノイズや回り込みを極力回避する。
 ③ 帯域幅はひとまず-3dB帯域を200Hz程度とし、スカート特性はシミュレータで実験的に決める。

 ①は単純明快・・・と思うでしょ いやぁ、そうでもないんです。作成するフィルタでガウシャンっぽい特性を得るには、中心周波数付近に特性が異なる複数のBPFを配置する必要があります。本当にガウシャン特性に近づけるためには4つのBPFが要りそうですが、ここでは大いにシミュレータを頼りにして3つのBPFで"ガウシャンもどき"を丁稚上げることにします。
 3段BPFでは、安価で入手が楽な2回路入りのオペアンプを2つ使うと1回路分余りますから、これは入力初段に置いてバッファとし、BPF特性が入力に引っ張られないようにします。

 ②も曲者・・・電池駆動はやはり大変なんですが、実は006Pの形をした公称電圧8.4Vの充電電池を使うことを先に決めてしまいまして・・・。何故かって 持っているのにあまり使えてないからです
 でもこうなると、かなり低い電圧から動くオペアンプを選ぶ必要があります。さらにこの四角い充電電池の容量は"200mAH"・・・コンテスト参加時間を24Hとすると(いやぁ、こんなにぶっ通しで出場できる歳じゃないんですが)、消費電流を8mA程度に抑える必要が出てきます。

 ③は記した通り、-3dB帯域を200Hz程度というひとまずの想定値を置いて、あとはシミュレータに委ねる作戦です。

 さて、ここまでの中で設計にかかわる幾つか未だ知らないことが見つかりました。それらを調べた結果をまとめて、このBPF製作の序章としましょうかね

(1)ヘッドホンを鳴らすための電力

 耳元で鳴るヘッドホンはかなり小さな電力で十分な音量を得ることができることは理解していますが、一体どのくらいの電力で十分な音がするのかよく解っていません。そこで、以下のようなヘッポコ実験に着手!

 ① 実際にコンテストで使用しているヘッドホン(Koss SportaPro)のインピーダンスを測る。
   ⇒テスターでの実測で、左右共"58.2Ω"であった。(公称インピーダンスは60Ω)
   ⇒モノラルで聴くように左右を並列接続するため、インピーダンスはこの半分の"29.1Ω"。

 ② PCのオーディオSGで800Hzのシングルトーンを出力し、これをヘッドホンで聴く。

 ③ 10秒も聴いているとヘッドホンを外したくなるような大きな音に調整する。
   ⇒PCのオーディオボリュームで調整する。
   ⇒通常はこんな大きな音で連続して聴かない音量を「必要十分な音量」とする。

 ③ ②の状態でオシロをつないで電圧を測定する。
   ⇒実測結果、Vp-pで1.7Vであった。

 ④ 測定結果より、電力を計算する。
 ということで、早速計算してみましょう!
 ・1.7V/2 × 1/√2 ≒ 1.20Vrms
 ・1.20Vrms^2 / 29.1Ω ≒ 49mW

 ただ、普通に聞いているレベルでは概ね30~40mVp-pであり、上記はあくまで最大値です、念のため。仮に40mVを平均として同様に計算すると”0.014mW”(14μW)・・・かなり小さいですね

(2)どのくらいの信号強度差で無視できるか

 今、フィルタの中心周波数に目的局の信号を捉えているとします。殆どの場合、混信局は中心周波数より上か下かにずれており、これがフィルタの減衰域の減衰量に伴って邪魔になるかならないかが決まります。無論、混信局の方が圧倒的に強い場合もありますがここでは少し話を単純化するために、目的局と混信局の信号強度が同じとしてどのくらいの信号強度差があれば気にならないか、自分の耳で探ってみました。これまた、ヘッポコ実験の極み!

 ① PCのオーディオSGで800Hzのシングルトーンを出力。

 ② ヘッドホンで聴き易い音量に調整。

 ② 適当に離調したトーンを同レベルで出力する。

 ③ このトーンのレベルを徐々に絞っていき気にならなくなったら、その時のレベル差を記す。

 (1)の実験を含め、PCのオーディオSGには"efu"さんのWG150を使用しています。このSGでは、複数のオーディオ信号を同時出力できるため、今回の実験には打って付けです。

 この実験は凡そフィーリングの世界ではあるものの、どうやらどよよん無線技士さんは、大体20dBダウンになるとあまり気にならなくなるようですから、マージンを取って"30dBダウン"を基準値に・・・この値は、フィルタのスカート特性をシミュレートする際の評価値として用います。

 以上、"序"はここまで・・・お後が宜しいようで
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アパマンというハンデにさらにQRPまで課し、失敗連続のヘッポコリグや周辺機器の製作・・・趣味というより「荒行」か!?

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