今更ながら、CW用オーディオフィルタ製作(その模擬)
2019-05-18
実はこのところ仕事で移動が多かったため、秋葉原に寄ってはBPFの部品を購入して揃っちゃってたりします。勿論、シミュレーションは完了・・・上手く動きそうな手応えもあり、それほど複雑な回路でもありませんから、この週末にバラックで組み立ててしまいたいんですが、流石に難しいかなぁ
前回記事では、実現機能の確認とシミュレーション前のヘッポコ実験についてまとめました。今回はシミュレーションの様子などを記したいと思います。まずは先に、シミュレーションが済んだ回路を発表してしまいましょう。

回路の骨組みたるオペアンプは電池駆動を前提にすべく、某秋月で売っている消費電流が小さいものの中からNJM3404を選び、一昨日購入しました。後からこの後継のNJM13404も売っていることに気づき、しかも10円安い・・・ちょっぴり損しちゃいました
NJM3404のspiceモデルは新日本無線のサイトからダウンロードできますよ。
各オペアンプは、回路図中のU1がバッファでありチョイ足し程度に増幅、U2からU4がBPFです。回路図の左側は仮想グランドを構成する部分ですが、実際にはここにもオペアンプでスプリッタを構成します。つまり、"8本足"が全部で3つという構成です。
BPFは教科書通りの設計ですが、コンデンサの値については0.033μFで統一しました。これは、多めに購入して実際の容量を測定して選別できるようにするためです。
一方、BPFを構成する抵抗(各3本)は1%誤差の金属皮膜抵抗を使うことを前提に、E24系で片付けられるようにしました。また、BPF個々に周波数の微調整ができるよう3つの半固定抵抗(VRx)を入れてあります。これは500Ωのボリュームを想定し、ほぼ真ん中辺りで調整できるように考えてあります。
入力端にある"Vol"と表示している抵抗は、実際に組み立てる際に10KΩのボリュームを置くため、ボリュームを全開にしたイメージで入れてあります。
入力側のC1、ヘッドホンが接続されるOUT側のC8は、フィルタの特性に影響が出ない値を探り、さらに少し余裕を持たせています。最終端の抵抗は、"仮想ヘッドホン"です。
シミュレーション前の設計値については、ひとまず以下のようにしました。
センター周波数である800Hzに対してBPF-1がある程度の帯域を制限し、両サイドにもう少しQの高いBPF-2,3を配して追い込んでいくイメージです。また、BPF-1については10倍程度のゲインを与え、例の「幽霊っぽいフォルム」(頭が丸く飛び出すような感じ)を作り出そうとしています。
では、まずは上の設計条件のままでシミュレーションした結果を以下に。果たして幽霊っぽくなっているでしょうか

なるほど、当たらずとも遠からず・・・ですが、何やら3つのコブがありますね。ただ、トリミングの方向性は見えています。即ち、BPF-2,3をセンター周波数に近付けていきながら、BPF-1を微調整すれば良さそうです。
シミュレーションは何度でも無料です(
)から、ちょいと値を弄ってはシミュレーション・・・を繰り返すだけですが、どこを弄るとどんな変化が現れるのかを観察しながら追い込んでいき、結果的にシミュレーション回路図の値で以下のようになりました。
・BPF-1:f=801.3Hz,Q=5.15 Ga:19.46dB
それでは、お待ちかねの"幽霊"をご覧に入れましょう。
さぁ、これでシミュレーションはお終い・・・にしてもいいんですが、2つのテーマでもう少しシミュレーションを続けましょう。
(1)部品の誤差の影響
BPFの成否は、構成部品の精度に掛かっています。今回、抵抗は±1%、コンデンサは±5%の誤差のものを使いますから、残念ながらシミュレーション通りの値にはなりません。そこで、個々の部品の値を精度の範囲一杯に振って様子見。抵抗は±1%の誤差ですから、流石にシミュレーション上も大きな変化は現れませんでしたが、±5%のコンデンサでは結構変化がありました。
例として、BPF-2のコンデンサの片方(C4)を+5%の容量(0.033uF⇒0.03465uF)にしてシミュレートしてみました。

向かって左の頭を殴られたようになってしまったんで、これを元のように戻すために他の部品の値を弄ってみたところ、BPFの中心周波数を可変するための半固定抵抗で調整可能なことが確認できホッとしましたが、それよりも、もう一つのコンデンサ容量を逆にマイナス方向に引っ張ると元の形に近付いていくことが解りました。

こんな感じでかなり綺麗に元に戻る・・・ということは、2つのコンデンサを"ペア"として考えて選別すると、設計に近い特性で実現できるということになりますね。
(2)普通のBPFとの比較
CWのBPFというと、単純にQが高めのBPFをセンター周波数を同じにして数段重ねて作るのが常套手段ですが、今回製作するものと何がどのくらい違うのか調べてみました。
お相手は、このシミュレーション回路のBPFを全て"Q=7"(ゲインはない)にした場合のものです。同じセンター周波数の"Q=7"を3段重ねると、凡そ"Q=13"程度のBPFになると思います。

流石にQの高さがモノを言いますね。お相手の方は-3dB帯域が59Hz、-30dB帯域が235Hzとなりました。オーディオ部だけでCWフィルタを作る場合は、この程度の切れ味があっても良さそうですが、問題は「過渡的な特性」・・・リンギングと残響が聴き易さに直結しますから、この点を比較して見てみましょう。

今回製作しようとしているBPFの方は、帯域が広いことと"ガウシャンもどき"の効果で、トーン受信の頭から6msくらいで立ち上がっています。その後、若干のうねりが見られますが、15ms以内には落ち着いています。また、トーン受信が終わったお尻の方をみても概ね10ms程度の残響・・・それもかなりレベルが低いものになっています。
一方、お相手の方は、頭の方が切れよく上がってこない・・・フワーっと大きくなっていく感じ、お尻の方もかなり長い残響を残していることが判ります。
CWの通常のQSO速度をひとまず"25wpm"とすると、例の"PARIS"で短点1つの長さが48ms程になります。もし残響がこの時間以上続くと、次の符号の始まりと重なってしまいます。勿論、残響はかなり小さなレベルになっていますから、信号が引っ付いてしまうようにはなりませんが、頭の方の切れの悪い立ち上がりと相まって、かなり聴き辛くなります。さらに混信してくる局があれば、もっと複雑なシチュエーションになるでしょう。
ただ、このお相手程度のQであればまだギリギリセーフのような気もしますが、今回の製作コンセプトはあくまで「リグの方に切れるIFフィルタがある」という前提で、状況によってオーディオ段で処理した方が聴き易い場合があるかも・・・といったものですから、逆に今回製作しようとしているBPFのこの応答特性には満足できそうです
さぁ、後は作るだけとなりました。明日の日曜日を有効に使ってバラックまで持って行けたら褒めて下さいね(誰にだ、こら
)。

前回記事では、実現機能の確認とシミュレーション前のヘッポコ実験についてまとめました。今回はシミュレーションの様子などを記したいと思います。まずは先に、シミュレーションが済んだ回路を発表してしまいましょう。

回路の骨組みたるオペアンプは電池駆動を前提にすべく、某秋月で売っている消費電流が小さいものの中からNJM3404を選び、一昨日購入しました。後からこの後継のNJM13404も売っていることに気づき、しかも10円安い・・・ちょっぴり損しちゃいました

各オペアンプは、回路図中のU1がバッファでありチョイ足し程度に増幅、U2からU4がBPFです。回路図の左側は仮想グランドを構成する部分ですが、実際にはここにもオペアンプでスプリッタを構成します。つまり、"8本足"が全部で3つという構成です。
BPFは教科書通りの設計ですが、コンデンサの値については0.033μFで統一しました。これは、多めに購入して実際の容量を測定して選別できるようにするためです。
一方、BPFを構成する抵抗(各3本)は1%誤差の金属皮膜抵抗を使うことを前提に、E24系で片付けられるようにしました。また、BPF個々に周波数の微調整ができるよう3つの半固定抵抗(VRx)を入れてあります。これは500Ωのボリュームを想定し、ほぼ真ん中辺りで調整できるように考えてあります。
入力端にある"Vol"と表示している抵抗は、実際に組み立てる際に10KΩのボリュームを置くため、ボリュームを全開にしたイメージで入れてあります。
入力側のC1、ヘッドホンが接続されるOUT側のC8は、フィルタの特性に影響が出ない値を探り、さらに少し余裕を持たせています。最終端の抵抗は、"仮想ヘッドホン"です。
シミュレーション前の設計値については、ひとまず以下のようにしました。
・BPF-1(U2):cf=800Hz,Q=5 Ga:20dB
・BPF-2(U3):cf=650Hz,Q=7
・BPF-3(U4):cf=950Hz,Q=7
センター周波数である800Hzに対してBPF-1がある程度の帯域を制限し、両サイドにもう少しQの高いBPF-2,3を配して追い込んでいくイメージです。また、BPF-1については10倍程度のゲインを与え、例の「幽霊っぽいフォルム」(頭が丸く飛び出すような感じ)を作り出そうとしています。
では、まずは上の設計条件のままでシミュレーションした結果を以下に。果たして幽霊っぽくなっているでしょうか


なるほど、当たらずとも遠からず・・・ですが、何やら3つのコブがありますね。ただ、トリミングの方向性は見えています。即ち、BPF-2,3をセンター周波数に近付けていきながら、BPF-1を微調整すれば良さそうです。
シミュレーションは何度でも無料です(

・BPF-1:f=801.3Hz,Q=5.15 Ga:19.46dB
・BPF-2:f=685.4Hz,Q=6.47
・BPF-3:f=941.2Hz,Q=6.64
それでは、お待ちかねの"幽霊"をご覧に入れましょう。
さぁ、これでシミュレーションはお終い・・・にしてもいいんですが、2つのテーマでもう少しシミュレーションを続けましょう。
(1)部品の誤差の影響
BPFの成否は、構成部品の精度に掛かっています。今回、抵抗は±1%、コンデンサは±5%の誤差のものを使いますから、残念ながらシミュレーション通りの値にはなりません。そこで、個々の部品の値を精度の範囲一杯に振って様子見。抵抗は±1%の誤差ですから、流石にシミュレーション上も大きな変化は現れませんでしたが、±5%のコンデンサでは結構変化がありました。
例として、BPF-2のコンデンサの片方(C4)を+5%の容量(0.033uF⇒0.03465uF)にしてシミュレートしてみました。

向かって左の頭を殴られたようになってしまったんで、これを元のように戻すために他の部品の値を弄ってみたところ、BPFの中心周波数を可変するための半固定抵抗で調整可能なことが確認できホッとしましたが、それよりも、もう一つのコンデンサ容量を逆にマイナス方向に引っ張ると元の形に近付いていくことが解りました。

こんな感じでかなり綺麗に元に戻る・・・ということは、2つのコンデンサを"ペア"として考えて選別すると、設計に近い特性で実現できるということになりますね。
(2)普通のBPFとの比較
CWのBPFというと、単純にQが高めのBPFをセンター周波数を同じにして数段重ねて作るのが常套手段ですが、今回製作するものと何がどのくらい違うのか調べてみました。
お相手は、このシミュレーション回路のBPFを全て"Q=7"(ゲインはない)にした場合のものです。同じセンター周波数の"Q=7"を3段重ねると、凡そ"Q=13"程度のBPFになると思います。

流石にQの高さがモノを言いますね。お相手の方は-3dB帯域が59Hz、-30dB帯域が235Hzとなりました。オーディオ部だけでCWフィルタを作る場合は、この程度の切れ味があっても良さそうですが、問題は「過渡的な特性」・・・リンギングと残響が聴き易さに直結しますから、この点を比較して見てみましょう。

今回製作しようとしているBPFの方は、帯域が広いことと"ガウシャンもどき"の効果で、トーン受信の頭から6msくらいで立ち上がっています。その後、若干のうねりが見られますが、15ms以内には落ち着いています。また、トーン受信が終わったお尻の方をみても概ね10ms程度の残響・・・それもかなりレベルが低いものになっています。
一方、お相手の方は、頭の方が切れよく上がってこない・・・フワーっと大きくなっていく感じ、お尻の方もかなり長い残響を残していることが判ります。
CWの通常のQSO速度をひとまず"25wpm"とすると、例の"PARIS"で短点1つの長さが48ms程になります。もし残響がこの時間以上続くと、次の符号の始まりと重なってしまいます。勿論、残響はかなり小さなレベルになっていますから、信号が引っ付いてしまうようにはなりませんが、頭の方の切れの悪い立ち上がりと相まって、かなり聴き辛くなります。さらに混信してくる局があれば、もっと複雑なシチュエーションになるでしょう。
ただ、このお相手程度のQであればまだギリギリセーフのような気もしますが、今回の製作コンセプトはあくまで「リグの方に切れるIFフィルタがある」という前提で、状況によってオーディオ段で処理した方が聴き易い場合があるかも・・・といったものですから、逆に今回製作しようとしているBPFのこの応答特性には満足できそうです

さぁ、後は作るだけとなりました。明日の日曜日を有効に使ってバラックまで持って行けたら褒めて下さいね(誰にだ、こら

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