TS-590雑感シリーズ 7:ローバンドの混信の中で(了)
2012-10-08
購入以来始めたTS-590のインプレッションシリーズ、終盤にかなりじらされました(
)が、やっとこ思いが遂げられそうです
一昨日からのACAGでローバンドの「真価」を見極めようと虎視眈々・・・80/40mの不調に若干阻まれた部分はあったものの混みっぷりの激しい時間帯にオンエアでき、軒並みS9+20dBを超える電波に囲まれたこのリグ、果たしてどんな感じだったのでしょう・・・。
◆ ダウンコンバンドのS9+40dB以下は「ほぼ平気」
「相手局の電波の質」を棚上げして考えれば、S9+40dBくらいまでの信号は「そういう強度の信号が、その周波数に出ている」といった範疇で考えることができそうです。
ちょっとこのシリーズが長引いてしまったため、「アップコンの調査結果」と「ダウンコンのプチ調査」をおさらいすると、大凡以下のように捉えることができます。勿論、あくまで測定器が「
」ですから、主観バリバリです
1) アップコンの場合、ルーフィングが広いため59+35dBくらいまで±3KHz程度に影響範囲が広がっている。
2) ダウンコンの場合(BW≦500Hz)、59+35dBまでは±1.5KHz程度に影響範囲が広がっている。
さて、今回のコンテストでは、ダウンコンで2)を超えるような信号探し・・・この信号強度では(ある程度、500HzのMCF特性を類推すると)あまりに参考にならない情報であり、実際に困ることになりそうな信号強度であるS9+40dBと当たりを付け(ってか、前に使っていたIC-703ではS9+40dBを超えると周辺10KHz程度が使えなくなるため)、ずっとその「巡り会い」を待っていたわけです。そして、今回のACAGで漸くその機会が巡ってきました。それも、かなり空いている15m・・・2)と殆ど同じ条件です
※何れもプリアンプ=ON 、NBはOFF
例によって「カツカツ音」での検証ですが、35dBのほぼ倍・・・±3.5KHz程度が影響範囲ですね。丁度+40dBという信号強度ではなかったため一概に言えませんが、+35dB乃至+40dB付近から徐々に影響が広がってくる・・・こんな風に捉えて良さそうです。アップコンとの比較では、大凡半分くらいまで影響範囲が狭まっています。
さて、この離調範囲に出ている「弱い信号」には影響がありそうですが、ローバンドのコンテストにおいてこれがどの程度の影響になるか・・・少なくとも、弱い信号である相手局との交信確率の低い自分にとっては、IC-703で受けたブロッキングのようなことはなくなるという部分で「及第点」はあげられると思います。実際、軒並み+20dB以上が居並ぶ80m/40mで「うわぁ、邪魔くせぇ・・・」と思うような場面はほとんどありませんでした。
また、このカツカツ音にどうやらNR2(NB2じゃないですよ)が除去効果を持っているようで、これをONにするとカツカツ音自体は復調範囲でなくなるのか、その影響がかなり低減されます(CW受信時のNR2方式から言って、CWトーンのような連続波形を強調する形の機構ですからねぇ・・・)ので、これとの併用も考えるとさらに良い感じになりそうです
◆ 隙間探しとノッチの効果
CW運用の場合、BWを300Hz程度に絞ってしまえば殆どの場合は大丈夫です。ローバンドのCW域は狭い印象ですが(って、本当に狭いわけですが)、帯域を絞ってしまえば別にどうってことはありません。呼ばれる側ならいざ知らず、S&P中心の「エイチじゃない局」は、昨今のDSP機ならきっと全然困らないと思います。
一方、なかなかつながらない自分のようなQRPerの方々にとって、別の局を「ずれて呼ぶ」(ゼロインせずに呼ぶ・・・わざととは思えない局長さんもいますが・・・)という芸当の方がカブってくることは勿論あるわけです。その方がそのままトントン拍子にQSOを済ませてどっかに行ってくれればいいのですが、ずれている所以なのかなかなか拾って貰えず長々と連呼していたり・・・。こんな場面ではノッチの出番です。このシリーズの5番目で紹介しましたが、TS-590のノッチはかなりイケていると思います。
◆ CWのグライコは外出しだなぁ・・・
内蔵のグライコは、PHONEとCWで別々に記憶してくれないことから、普段ラジオ代わりにすることが多い自分としては、ヘッドホンで運用するCWについては「謎の小箱」(自作のパッシブBPF)を使っています。AMとは言え、そこそこHiFiで聴きたいですから、必要なときだけON・・・となると、「電信電話部門」ではモードによる切り換えが難儀そう。やはり今の内蔵グライコの「記憶方式」には満足できませんね。
◆ ファンが結構うるさい・・・
まさか5W運用では「幻の機能」かと思っていた内蔵ファンですが、高温のシャック(29℃くらい)でCQを出していたら突然回り始めました
本当に最初はたまげましたよ・・・。
このファン、空冷効果が高いのか、その後CQ連呼していても3分くらいしたら止まりました。多分、さらにその後もCQ連呼していたら、そのうちにまた回り出していたでしょうね・・・。
ファンの音ですが、これは結構うるさいです。例えになるようなものがないのですが、我がPC(自作ミニタワー)より余程うるさく、あんまり良い気はしませんでした。
受信時に1A、5W送信時に5Aという大食らいのリグですから、通常時の自己発熱も相当量なんでしょうね。入力で考えたら、この電流だったら余裕で25Wは出ますしねぇ
その分、綺麗な電波であると信じることにしています
◆ ひとまず総評
もう発売から2年ほど経過したリグですし対抗馬も色々と出てきていることから、今後は費用感が合うか否かでチョイスされるリグになると思いますが、入門機等さらに廉価なトリプルスーパー方式のリグとは違い、近接強力波に対する能力の部分で、「ダウンコンバンド」は結構いけてる印象ですし、CW運用に長けた部分が多いため、これからCWを本格的に・・・という方にはお奨めできると思います。混信除去等、この値段にしては申し分ないと思います。また、大きさは「小さなリグ」の部類に入れても良いかと思いますので、手狭なシャックに喘ぐアパマンハムの方々にもお奨めできそうです。小さなアンテナでもそこそこ聞こえるリグですよ。
GENEスイッチでラジオに変身する部分も、あるシチュエーションでは非常に有効です。AM受信時のフィルタ設定を目一杯広げておけば、ひとまず5KHzまでは忠実に表現されますから、海外短波の耳慣れない音楽もクリアに楽しめます。
ただ、良いロケーション、立派なアンテナをお持ちの方にとっての「アップコンバンド」は、普及機より少しマシな程度と考えて貰った方が良いでしょう。特にコンテストのメッカである6mがアップコンだというところ・・・ここは大きなマイナス要因かも知れませんね。まぁ、最近は6mでも「混んでて空きが探せないよぅ・・・」なんてことは希でしょうから、内蔵ATTとアンテナのビーム方向を駆使して近接強力局を上手く避けられれば・・・といったところでしょうか。
昨今話題のFTDX3000は、大ざっぱに言って「TS-590の全バンドダウンコンバージョン」みたいなものでしょう。この部分に「あと10万円出せる」となればそちらを購入した方が良いように思います(勿論、近接強力波だけの話ですよ)が、その10万円で「KX3」を買うというアイディアもあるかな

以上で「独断と偏見」に満ちた『TS-590雑感シリーズ』は閉めたいと思います。また気づくことがあれば、ジャンジャン記事にしていこうと思います。


一昨日からのACAGでローバンドの「真価」を見極めようと虎視眈々・・・80/40mの不調に若干阻まれた部分はあったものの混みっぷりの激しい時間帯にオンエアでき、軒並みS9+20dBを超える電波に囲まれたこのリグ、果たしてどんな感じだったのでしょう・・・。
◆ ダウンコンバンドのS9+40dB以下は「ほぼ平気」

「相手局の電波の質」を棚上げして考えれば、S9+40dBくらいまでの信号は「そういう強度の信号が、その周波数に出ている」といった範疇で考えることができそうです。
ちょっとこのシリーズが長引いてしまったため、「アップコンの調査結果」と「ダウンコンのプチ調査」をおさらいすると、大凡以下のように捉えることができます。勿論、あくまで測定器が「


1) アップコンの場合、ルーフィングが広いため59+35dBくらいまで±3KHz程度に影響範囲が広がっている。
2) ダウンコンの場合(BW≦500Hz)、59+35dBまでは±1.5KHz程度に影響範囲が広がっている。
さて、今回のコンテストでは、ダウンコンで2)を超えるような信号探し・・・この信号強度では(ある程度、500HzのMCF特性を類推すると)あまりに参考にならない情報であり、実際に困ることになりそうな信号強度であるS9+40dBと当たりを付け(ってか、前に使っていたIC-703ではS9+40dBを超えると周辺10KHz程度が使えなくなるため)、ずっとその「巡り会い」を待っていたわけです。そして、今回のACAGで漸くその機会が巡ってきました。それも、かなり空いている15m・・・2)と殆ど同じ条件です

Conv. | 信号強度 (S9+) | BW (Hz) | 運用 周波数 | 影響がでなくなる周波数 (離調:KHz) | |
LOW | HIGH | ||||
UP | 45dB | 1000 | 50.287.0 | 281.1 (6.9) | 292.0 (5.0) |
DOWN | 35dB | 500 | 21.006.9 | 005.1 (1.8) | 008.2 (1.3) |
DOWN | 45dB | 500 | 21.059.1 | 055.3 (3.8) | 062.7 (3.6) |
例によって「カツカツ音」での検証ですが、35dBのほぼ倍・・・±3.5KHz程度が影響範囲ですね。丁度+40dBという信号強度ではなかったため一概に言えませんが、+35dB乃至+40dB付近から徐々に影響が広がってくる・・・こんな風に捉えて良さそうです。アップコンとの比較では、大凡半分くらいまで影響範囲が狭まっています。
さて、この離調範囲に出ている「弱い信号」には影響がありそうですが、ローバンドのコンテストにおいてこれがどの程度の影響になるか・・・少なくとも、弱い信号である相手局との交信確率の低い自分にとっては、IC-703で受けたブロッキングのようなことはなくなるという部分で「及第点」はあげられると思います。実際、軒並み+20dB以上が居並ぶ80m/40mで「うわぁ、邪魔くせぇ・・・」と思うような場面はほとんどありませんでした。
また、このカツカツ音にどうやらNR2(NB2じゃないですよ)が除去効果を持っているようで、これをONにするとカツカツ音自体は復調範囲でなくなるのか、その影響がかなり低減されます(CW受信時のNR2方式から言って、CWトーンのような連続波形を強調する形の機構ですからねぇ・・・)ので、これとの併用も考えるとさらに良い感じになりそうです

◆ 隙間探しとノッチの効果
CW運用の場合、BWを300Hz程度に絞ってしまえば殆どの場合は大丈夫です。ローバンドのCW域は狭い印象ですが(って、本当に狭いわけですが)、帯域を絞ってしまえば別にどうってことはありません。呼ばれる側ならいざ知らず、S&P中心の「エイチじゃない局」は、昨今のDSP機ならきっと全然困らないと思います。
一方、なかなかつながらない自分のようなQRPerの方々にとって、別の局を「ずれて呼ぶ」(ゼロインせずに呼ぶ・・・わざととは思えない局長さんもいますが・・・)という芸当の方がカブってくることは勿論あるわけです。その方がそのままトントン拍子にQSOを済ませてどっかに行ってくれればいいのですが、ずれている所以なのかなかなか拾って貰えず長々と連呼していたり・・・。こんな場面ではノッチの出番です。このシリーズの5番目で紹介しましたが、TS-590のノッチはかなりイケていると思います。
◆ CWのグライコは外出しだなぁ・・・
内蔵のグライコは、PHONEとCWで別々に記憶してくれないことから、普段ラジオ代わりにすることが多い自分としては、ヘッドホンで運用するCWについては「謎の小箱」(自作のパッシブBPF)を使っています。AMとは言え、そこそこHiFiで聴きたいですから、必要なときだけON・・・となると、「電信電話部門」ではモードによる切り換えが難儀そう。やはり今の内蔵グライコの「記憶方式」には満足できませんね。
◆ ファンが結構うるさい・・・
まさか5W運用では「幻の機能」かと思っていた内蔵ファンですが、高温のシャック(29℃くらい)でCQを出していたら突然回り始めました

このファン、空冷効果が高いのか、その後CQ連呼していても3分くらいしたら止まりました。多分、さらにその後もCQ連呼していたら、そのうちにまた回り出していたでしょうね・・・。
ファンの音ですが、これは結構うるさいです。例えになるようなものがないのですが、我がPC(自作ミニタワー)より余程うるさく、あんまり良い気はしませんでした。
受信時に1A、5W送信時に5Aという大食らいのリグですから、通常時の自己発熱も相当量なんでしょうね。入力で考えたら、この電流だったら余裕で25Wは出ますしねぇ


◆ ひとまず総評
もう発売から2年ほど経過したリグですし対抗馬も色々と出てきていることから、今後は費用感が合うか否かでチョイスされるリグになると思いますが、入門機等さらに廉価なトリプルスーパー方式のリグとは違い、近接強力波に対する能力の部分で、「ダウンコンバンド」は結構いけてる印象ですし、CW運用に長けた部分が多いため、これからCWを本格的に・・・という方にはお奨めできると思います。混信除去等、この値段にしては申し分ないと思います。また、大きさは「小さなリグ」の部類に入れても良いかと思いますので、手狭なシャックに喘ぐアパマンハムの方々にもお奨めできそうです。小さなアンテナでもそこそこ聞こえるリグですよ。
GENEスイッチでラジオに変身する部分も、あるシチュエーションでは非常に有効です。AM受信時のフィルタ設定を目一杯広げておけば、ひとまず5KHzまでは忠実に表現されますから、海外短波の耳慣れない音楽もクリアに楽しめます。
ただ、良いロケーション、立派なアンテナをお持ちの方にとっての「アップコンバンド」は、普及機より少しマシな程度と考えて貰った方が良いでしょう。特にコンテストのメッカである6mがアップコンだというところ・・・ここは大きなマイナス要因かも知れませんね。まぁ、最近は6mでも「混んでて空きが探せないよぅ・・・」なんてことは希でしょうから、内蔵ATTとアンテナのビーム方向を駆使して近接強力局を上手く避けられれば・・・といったところでしょうか。
昨今話題のFTDX3000は、大ざっぱに言って「TS-590の全バンドダウンコンバージョン」みたいなものでしょう。この部分に「あと10万円出せる」となればそちらを購入した方が良いように思います(勿論、近接強力波だけの話ですよ)が、その10万円で「KX3」を買うというアイディアもあるかな


以上で「独断と偏見」に満ちた『TS-590雑感シリーズ』は閉めたいと思います。また気づくことがあれば、ジャンジャン記事にしていこうと思います。
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