最強の信号受信とNRの功罪
2012-11-27
コンテスト参戦では、TS-590の前任であるIC-703ほど使い込んでいるわけではありませんが、既に何のストレスもなく使いこなせるようにはなったと思います。連続可変のBWやノイズ除去機能は、折々のシチュエーションでマメに切り替えることでより聞き取り易い状態に持っていくことができ、今のアンテナシステムとQRP故の交信可能範囲・限度まで、きちんとフォローしてくれているように思います。
◆ 最強の信号でちょっとお遊び
ナンチャッテなインプレッションシリーズを終えて久しくなりましたが、先日のWW DX CWでついに「最強信号」を受信しました。それも、お誂え向きにアップコンバンドとダウンコンバンドで
まずは10mでS9+50dBから55dBの信号・・・ほぼ振り切れです(近くの学校クラブ局です)。反射的に、例の「カツカツ音チェック」を敢行、アップコンバンドで確認できているS9+45dB程度の信号による影響範囲との比較。予想ではさらに大きく拡がってしまっているのではないかと思ったのですが、オンエア周波数の+6KHz、-7KHzが影響範囲と、それほど変わらない様子・・・。ここで、再度TS-590のアップコン用のルーフィングフィルタ構成とその特性を思い出してみて合点がいきました。
TS-590のアップコンにおける1stフィルタの通過帯域は約15KHzですが、2ndはCWモード(BWが2700Hz以下)では2.7KHzが選択されます。つまり、2ndの帯域分はどうしても通過してしまうわけで、このフィルタの「肩の部分に掛かって落ちてくるところ」を評価していることになります。即ち、強い信号では±6KHz程度まで影響範囲が拡がっているのはこのせいですが、どうやらこのフィルタ一杯に影響範囲が拡がるのがS9+40dB程度ということで、それ以上強い信号でも、流石にフィルタの帯域を超えてまでは浸食してこない・・・ということのようです。
次の遭遇はダウンコンバンド・・・それも40mです。信号強度はS9+50dBから55dBですが、若干50dBのことの方が長いかな・・・といった感じです。アナログメーターだと「針一本分」みたいな表現ができるんですがねぇ・・・。こちらの結果については表にまとめました。
※何れもプリアンプ=ON 、NBはOFF、BW=500Hz
おやおや、少し様子が変ですね・・・信号強度が強いのに影響範囲が狭い
これは、そもそも別の局の比較であり信号の質の差はあるものの、それ以前に混信の中で「小さなカツカツ音」を聞き取るのが難しかったことに起因すると思います。とは言え大した差はなく、大凡±3,4KHzが影響範囲。これもどうやらルーフィングフィルタの特性をトレースしているような結果で、スカート特性が甘いと信号強度に連れて影響範囲が拡がっていくわけですが、自慢のMCF・・・500Hzの方のスカート特性は結構急峻な切れ味を発揮しているようです。
ところで、これまで散々登場した「カツカツ音」ってなんだ
・・・実際に聴いて貰うことにしましょう。
CWをやる方なら、どなたでも知っている音ですね。この録音は、カツカツ音の影響が比較的強くS=9ほど振っている離調時のもので、丁度S=9程度のCW信号が一緒に聞こえています。影響度合いはそれほど感じませんが、やはり耳障りですね。
離調すれば徐々に影響度合いが減っていきますが、その様子は大凡以下の通りです。運用周波数は上記と同じ7.028.5MHzです。
※何れもプリアンプ=ON 、NBはOFF、BW=500Hz
S=9より内側(運用周波数に近い側)は流石に影響が大きくてちょっと運用は無理ですが、S=5辺り・・・2KHzほど離れたところであれば、コンテストナンバーの交換程度は可能です(無論、相手の信号強度によります)から、この辺りまでの「幅寄せ」はできそうです
◆ NRに頼りすぎてはいけない
TS-590のNRは完成度が高く、どうしても「ONにしっぱなし」になりがちです。そもそも弱い信号の局を呼び出してもQRP故滅多に拾ってくれないため、少しでも耳障りなノイズを除去しようというわけですが、ノイズが酷いからといってNRを掛けっぱなしにすると、本当に弱い信号は消え去ってしまいます。バンドが開けてくるとかオープンエリアが変化していく様子なんかを知ろうとした場合、NRが逆に邪魔になることがあります。
人間の
フィルターは大したもので、かなり激しいノイズの中から信号を聞き分ける能力はどんなフィルタにも勝ります。逆にNRで変な風に変調されて聞きづらくなってしまうような場合もありますから、NRに頼りすぎるのもあまり良くないでしょう。時折NRを外してワッチすると、思わぬ弱い信号を見つけて「お、そろそろEUが・・・」みたいな気づきに有り付けるかも知れませんよ
修正 2013/06/24>
ちょっと誤解していた部分を赤字で伏せました。10.695MHzの2.7KHzフィルタのスカート特性が知りたいところです。
◆ 最強の信号でちょっとお遊び
ナンチャッテなインプレッションシリーズを終えて久しくなりましたが、先日のWW DX CWでついに「最強信号」を受信しました。それも、お誂え向きにアップコンバンドとダウンコンバンドで


まずは10mでS9+50dBから55dBの信号・・・ほぼ振り切れです(近くの学校クラブ局です)。反射的に、例の「カツカツ音チェック」を敢行、アップコンバンドで確認できているS9+45dB程度の信号による影響範囲との比較。予想ではさらに大きく拡がってしまっているのではないかと思ったのですが、オンエア周波数の+6KHz、-7KHzが影響範囲と、それほど変わらない様子・・・。ここで、再度TS-590のアップコン用のルーフィングフィルタ構成とその特性を思い出してみて合点がいきました。
TS-590のアップコンにおける1stフィルタの通過帯域は約15KHzですが、2ndはCWモード(BWが2700Hz以下)では2.7KHzが選択されます。つまり、2ndの帯域分はどうしても通過してしまうわけで、このフィルタの「肩の部分に掛かって落ちてくるところ」を評価していることになります。即ち、強い信号では±6KHz程度まで影響範囲が拡がっている
次の遭遇はダウンコンバンド・・・それも40mです。信号強度はS9+50dBから55dBですが、若干50dBのことの方が長いかな・・・といった感じです。アナログメーターだと「針一本分」みたいな表現ができるんですがねぇ・・・。こちらの結果については表にまとめました。
信号強度 (S9) | 運用 周波数 | 影響がでなくなる周波数 (離調:KHz) | ||
HIGH | LOW | |||
45dB | 21.059.1 | 062.7 (3.6) | 053.3 (3.8) | |
55dB | 7.028.5 | 031.3 (2.8) | 025.5 (3.0) |
おやおや、少し様子が変ですね・・・信号強度が強いのに影響範囲が狭い

ところで、これまで散々登場した「カツカツ音」ってなんだ

CWをやる方なら、どなたでも知っている音ですね。この録音は、カツカツ音の影響が比較的強くS=9ほど振っている離調時のもので、丁度S=9程度のCW信号が一緒に聞こえています。影響度合いはそれほど感じませんが、やはり耳障りですね。
離調すれば徐々に影響度合いが減っていきますが、その様子は大凡以下の通りです。運用周波数は上記と同じ7.028.5MHzです。
カツカツ音の 信号強度 | 周波数 (離調:KHz) | ||||
HIGH | LOW | ||||
S=9 | 7.029.3 (0.8) | 7.027.5 (1.0) | |||
S=5 | 7.030.4 (1.9) | 7.026.4 (2.1) | |||
S=0 (影響消失) | 7.031.3 (2.8) | 7.025.5 (3.0) |
S=9より内側(運用周波数に近い側)は流石に影響が大きくてちょっと運用は無理ですが、S=5辺り・・・2KHzほど離れたところであれば、コンテストナンバーの交換程度は可能です(無論、相手の信号強度によります)から、この辺りまでの「幅寄せ」はできそうです

◆ NRに頼りすぎてはいけない
TS-590のNRは完成度が高く、どうしても「ONにしっぱなし」になりがちです。そもそも弱い信号の局を呼び出してもQRP故滅多に拾ってくれないため、少しでも耳障りなノイズを除去しようというわけですが、ノイズが酷いからといってNRを掛けっぱなしにすると、本当に弱い信号は消え去ってしまいます。バンドが開けてくるとかオープンエリアが変化していく様子なんかを知ろうとした場合、NRが逆に邪魔になることがあります。
人間の


修正 2013/06/24>
ちょっと誤解していた部分を赤字で伏せました。10.695MHzの2.7KHzフィルタのスカート特性が知りたいところです。