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白い石を運ぶべし!-其の零

2013-08-15      
 伊勢に住まう人や伊勢出身の人は、とりわけ信心深いというほどのことがなくても、その規模と歴史で圧倒する「伊勢の神宮」の脈々たる営み・・・式年遷宮と共に歳を重ねていく。ご遷宮は、戦乱の時期などを除く1300年余に渡って続く神宮最大の行事だそうだ。百二十五を数える大小の伊勢の社(やしろ)、一般には総称して「伊勢神宮」と呼ばれるこれら全ての建造物が二十年に一度、「清浄を保つため」(とされている)に修繕される。特に神宮の中心たる『内宮』と『外宮』は、盛大な行事を経て、神殿一式が全て建て替えられるのである。

 歴史の詳しいところはともかく、昔ながらの工法に従って材木を切り出し、運び、製材し、土台を作り、柱を立て、屋根を葺いて建屋を構築する一方で、それら建造物を取り囲むように敷き詰められる白い石を「宮川」から運び、それを人手によって一つひとつ奉献する「お白石持ち」という行事が、「神領民」にとっての今夏の一大イベントである。
 神領民とは、まぁ平たく言ってしまうと「内宮と外宮の近くの住人」という解釈でいいだろう。つまり、現時点で伊勢市周辺に住んでいる人々は殆ど神領民なんだが、二十年の間には人の出入りは勿論あるし、どちらかというと人口減少方向の地域でもあるため、「特別神領民」という他所からの応援を頼んで行われるというのが実際の所だ。日本全国の所縁ある神社から、石運びのお手伝いをされる神主さんやらその関係の大勢の方々が、観光バスに乗って集結するわけだ。
 かく言う自分は一日限りの神領民・・・母の実家が外宮の直ぐ傍にあるため、当日「生粋の神領民」が身につけなければならない「町名入りの法被」が手に入り、黙って着ていれば「神領民ざんす」ということになるという『インチキ神領民』になることができる。

 お白石持ちは、新築の神殿間近まで入れる唯一のチャンスだ。お白石持ちの当日、神様は未だ凡そ二十年前に建てられたちょいと向こうにある古い神殿に(きっと)おられるが、折角「新居」に石を運んでくれたお礼にちょっぴり「どんなお家なのか見せてあげましょう」という趣向だ。神領民・・・っていうか庶民が神殿の全景を見る機会はこれっきり。普段は精々、茅葺き屋根と角(千木)が見えるだけだ。とにかく、ピッカピカの神殿を拝めるのは二十年に一度しかやってこないチャンスなわけだから、普通に考えれば、一生に四度も見られれば良い方だろう。
 神殿やその他のもの・・・神宮内の鳥居や木の灯籠等々の建造に必要となる「檜」は岐阜県の木曽で切り出し、川と海を使って運び、最終的に「五十鈴川」を曳き上げてくる。この五十鈴川を曳き上げる行事「御木曳」は、平成十八、九年に既に済んでおり、そこから細かな細工をして様々な材料を仕立て、神殿自体の棟を上げるのに六、七年が掛かるわけだ。そして、総仕上げたる敷石をして漸く引っ越し・・・いや違った、「遷御」され、その後も様々な行事を経て、まぁ今年中には宝物などの品々の移動も含め、新しい神殿にお移りになるということらしい。

 小さい頃、「御木曳」に参加したらしい写真が残っている。法被を着てはしゃぐ様子から、きっと本人は楽しかったに違いないのだが、まるっきり覚えていないのは勿論である。 そして、小学生の時分にはお白石持ちにも参加している。こちらは断片的には覚えており、雨が降り続く悪天で夏なのに薄ら寒かったのと、檜がとても綺麗で良い匂いがしたことが印象的だった。ただ、所詮小学生は小学生・・・TV中継に従兄弟が写ったVTRを夜のニュースで見たことの方をよく覚えているのも仕方無かろう。

 この記事の乗っけで紹介したように、伊勢の住人・元住人はこの行事をどこかぼんやりと待ち侘びつつ歳を重ねるわけだが、半年ほど前にはすっかり「予定」を整えているようで、多くの人が帰郷して参加する。我が家も母の「熱い我が儘」に沿いつつ東京に住む親戚をも巻き込んで、インチキ神領民としては何と「二度目」の神殿を拝む旅を企画したのだ。そして平成二十五年八月九日・・・何とか無事に東京駅に集合し、いざ「民族大移動劇」は幕を開けるわけだ。
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