AD8307の切片調整
2014-05-06
製作中のミニ・パワーメータの肝は、何といってもAD8307の出力電圧のリニア特性をきちんと捉えることです。そして、このリニアな傾斜を示す電圧出力を計測して数値化する部分の仕掛けについては、「切片の設定」が鍵を握ります。この辺りをまとめておきたいと思います。
まずは、AD8307の関連スペックをデータシートで見てみましょう。関係があるスペックは、青で囲んだ部分です。

このチップの正常な測定範囲は50Ω終端で-72dBmから+16dBmとなっていますが、下端の方の最低検出レベル(ピンクで囲ったところ)はノイズフロアまで・・・まぁ、現時点でこんなに低いレベルの検出を正確にやろうとは思いませんが、バラックで作りっぱなしでもこの位のレベルまではイケそうな感じでしたので、「-72dBm以下は誤差含みである」と、きちんと認識しておきます。
次に対数の傾き・・・このチップに入力する電力とそのとき出力する電圧との関係ですが、これは23mV/dBから27mV/dBの間になります。幸い、今回作るパワーメータの電圧測定では「オペアンプ受け」していますから、入力インピーダンスとしてもカタログ値の範囲に収まるはず。カタログスペック的には代表値(Typical)として「25mV/dB」を謳っていますが、これはチップの個体差が含まれる部分ですから、実際に調べてみる必要があります。
最後に切片・・・インターセプトですが、-87dBmから-77dBmという範囲の値ということになります。これもきちんと検討しなければならないでしょう。
ところで、今回作るパワーメータではPICのAD変換の10ビット分解能で電圧測定するわけですが、これを以下のように考えて計算等を簡略化しました。
・AD変換の「1ビットの変化」にチップの傾きの0.1dB分示すように考える
⇒傾きが25mV/dBとした場合、2.5mVが1ビットの変分相当
・1024ビットで表現できるdBm最大値は、1ビットの変分×1023
⇒2.5mV×1023=2.5575V
∴AD変換の比較電圧として2.5575Vを与えてやれば、1ビット=0.1dB刻みの計測器が完成
即ち、比較電圧を上手く設定するだけで「0.1dB刻みの計測」ができ、その上特殊な計算要らず・・・正に、8ビットPICで無理なく測定ができるということになります
さぁ、実測してみましょう。信号源はクラニシ君@SG、これにアッテネータを接続した時とそうでないとき(=直結)の差を測り、ひとまず使用したチップの「傾き」を調べてみることに。治具はこんな風に作りました。

秋月で買った20dB,30dBのアッテネータをICソケットに挿す小さな基板を作りました。使ったのは14ピンのIC ソケットですが、間隔が広過ぎるためニッパーで二分して約めてあります。信号の接続にはSMAコネクタを使いましたので、数十MHzオーダーなら問題なく使えます。スズメッキ線はアッテネータをつながないとき・・・即ち直結用のジャンパです。

クラニシ君の頭にこんな風に装着。まずまずのデキでしょ
・・・というわけで、早速実測です。
クラニシ君の出力電力は-2.3dBmです。これは、ローレベル・パワー計の実測値です。これを頼りに、直結時と20dB,30dBアッテネータ挿入時の差をAD8307の出力電圧を測定し、それを傾きに換算しました。
直結時(-2.3dBm):2.136V
-20dB挿入時:1.613V ∴(2.136-1.613)/20=26.15mV/dB
-30dB挿入時:1.359V ∴(2.136-1.359)/30=25.90mV/dB
なるほど、26mVに近い値のようですが、先のデータシートの「対数の傾き」に記されていた範囲には入っていますね。この2値から、傾きを「26.0mV/dB」として先に求めたAD変換の際の比較電圧を再計算すると以下のようになりました。
★ 2.60mV×1023≒2.66V
さらに、この値を使ってExcelの散布図で近似式を求めてみました。そして、この近似式から、切片は「-85.4dBm」が求められました。

パワーメータのPIC内部の処理では、AD変換によって読み込まれる値から切片の値を引いたものがdBm値となります。AD変換値は0.1dB刻みですから、この値から「854」を引けばそのまま「小数点第一位までのdBm値」として直読でき、これを表示器にそのまま出せればよいことになります。減算だけで済む・・・ソフト処理も簡単ですね。
但し、これを実現するには比較電圧の設定を2.66Vに、それも正確に合わせ込む必要あり・・・なんですが、これは先に基準としたクラニシ君@SGの出力値が「-2.3dBm」を示すように調整するだけで結果的に校正できたことにします
実際には、計算上の小数下位の丸めを含めて誤差含みなため、切片の値を変えながらクラニシ君@SGの直結とアッテネータ挿入時の差を追い込んでいくことになりますが、最終的に「-85.0dBm」を切片とした場合に-30dBの減衰がきちんと計測されるようになりました。
残るはケーシングと追加機能の盛り込み(これは全部ソフト処理)ですが、どうやら今大型連休中の完成には至らなさそうです
まぁ納期もありませんし明日からの三連闘(
)でまたお休みですから、「焦らずやろう」と逃げ口上
まずは、AD8307の関連スペックをデータシートで見てみましょう。関係があるスペックは、青で囲んだ部分です。

このチップの正常な測定範囲は50Ω終端で-72dBmから+16dBmとなっていますが、下端の方の最低検出レベル(ピンクで囲ったところ)はノイズフロアまで・・・まぁ、現時点でこんなに低いレベルの検出を正確にやろうとは思いませんが、バラックで作りっぱなしでもこの位のレベルまではイケそうな感じでしたので、「-72dBm以下は誤差含みである」と、きちんと認識しておきます。
次に対数の傾き・・・このチップに入力する電力とそのとき出力する電圧との関係ですが、これは23mV/dBから27mV/dBの間になります。幸い、今回作るパワーメータの電圧測定では「オペアンプ受け」していますから、入力インピーダンスとしてもカタログ値の範囲に収まるはず。カタログスペック的には代表値(Typical)として「25mV/dB」を謳っていますが、これはチップの個体差が含まれる部分ですから、実際に調べてみる必要があります。
最後に切片・・・インターセプトですが、-87dBmから-77dBmという範囲の値ということになります。これもきちんと検討しなければならないでしょう。
ところで、今回作るパワーメータではPICのAD変換の10ビット分解能で電圧測定するわけですが、これを以下のように考えて計算等を簡略化しました。
・AD変換の「1ビットの変化」にチップの傾きの0.1dB分示すように考える
⇒傾きが25mV/dBとした場合、2.5mVが1ビットの変分相当
・1024ビットで表現できるdBm最大値は、1ビットの変分×1023
⇒2.5mV×1023=2.5575V
∴AD変換の比較電圧として2.5575Vを与えてやれば、1ビット=0.1dB刻みの計測器が完成
即ち、比較電圧を上手く設定するだけで「0.1dB刻みの計測」ができ、その上特殊な計算要らず・・・正に、8ビットPICで無理なく測定ができるということになります

さぁ、実測してみましょう。信号源はクラニシ君@SG、これにアッテネータを接続した時とそうでないとき(=直結)の差を測り、ひとまず使用したチップの「傾き」を調べてみることに。治具はこんな風に作りました。

秋月で買った20dB,30dBのアッテネータをICソケットに挿す小さな基板を作りました。使ったのは14ピンのIC ソケットですが、間隔が広過ぎるためニッパーで二分して約めてあります。信号の接続にはSMAコネクタを使いましたので、数十MHzオーダーなら問題なく使えます。スズメッキ線はアッテネータをつながないとき・・・即ち直結用のジャンパです。

クラニシ君の頭にこんな風に装着。まずまずのデキでしょ

クラニシ君の出力電力は-2.3dBmです。これは、ローレベル・パワー計の実測値です。これを頼りに、直結時と20dB,30dBアッテネータ挿入時の差をAD8307の出力電圧を測定し、それを傾きに換算しました。
直結時(-2.3dBm):2.136V
-20dB挿入時:1.613V ∴(2.136-1.613)/20=26.15mV/dB
-30dB挿入時:1.359V ∴(2.136-1.359)/30=25.90mV/dB
なるほど、26mVに近い値のようですが、先のデータシートの「対数の傾き」に記されていた範囲には入っていますね。この2値から、傾きを「26.0mV/dB」として先に求めたAD変換の際の比較電圧を再計算すると以下のようになりました。
★ 2.60mV×1023≒2.66V
さらに、この値を使ってExcelの散布図で近似式を求めてみました。そして、この近似式から、切片は「-85.4dBm」が求められました。

パワーメータのPIC内部の処理では、AD変換によって読み込まれる値から切片の値を引いたものがdBm値となります。AD変換値は0.1dB刻みですから、この値から「854」を引けばそのまま「小数点第一位までのdBm値」として直読でき、これを表示器にそのまま出せればよいことになります。減算だけで済む・・・ソフト処理も簡単ですね。
但し、これを実現するには比較電圧の設定を2.66Vに、それも正確に合わせ込む必要あり・・・なんですが、これは先に基準としたクラニシ君@SGの出力値が「-2.3dBm」を示すように調整するだけで結果的に校正できたことにします

実際には、計算上の小数下位の丸めを含めて誤差含みなため、切片の値を変えながらクラニシ君@SGの直結とアッテネータ挿入時の差を追い込んでいくことになりますが、最終的に「-85.0dBm」を切片とした場合に-30dBの減衰がきちんと計測されるようになりました。
残るはケーシングと追加機能の盛り込み(これは全部ソフト処理)ですが、どうやら今大型連休中の完成には至らなさそうです



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