LCメータの安定度向上に向けて
2014-12-02
師走到来・・・年末までにはまだ結構な日数があるのに、何となく気が急く時期になりました。今週末、来週末の忘年会は既に手配済み、暫くは我が「肝臓」に元気で活躍して貰わなくては・・・。
さて、寄り道のはずが本腰を入れてしまうことになったLCメータの改善について、「もう少し安定な測定器へ」というコンセプトで考えたいと思います。本当は「電池駆動」「見やすいLED表示」なども考慮したいところですが、これではいつまで経っても・・・になりそうなんで、ひとまずLC発振部の安定度向上「だけ」に絞ります。
◆ LHLシリーズの温度特性
LC発振では、コイルとコンデンサの温度特性を勘案することが重要です。そこで、これまでの実験結果からまずまずの成績だったと思われる太陽誘電のインダクタ「LHLシリーズ」をチョイスするとして、データシートから温度特性を拾ってみました。なお、このコイルは秋月や千石電商さんで手に入るポピュラーなものです。

上図の通り、このコイルの温度特性は「正」。20℃から40℃の温度変化に対し、リアクタンス値の変化が+0.2%~+0.9%というグラフの読み取りから、+100~+450ppm程度と換算されます。少し幅があるため、どの程度の評価をしておけばいいのか判りませんが、そんなに無茶苦茶な値ではないでしょう。
ちなみに、トロイダルコアに巻いた場合の温度特性も同様に「正」であり、透磁率の違いによってそれぞれの温度係数を持ちます。鉄ダスト系(T37-6等、いわゆるTシリーズ)では+35~+370ppmという納得できそうな値、一方のフェライト系(FT50-61等のFTシリーズ)では+500~+12,500ppm(#43材)とかなり大きくなっているようです(by トロ活情報)。従って、今回のLCメータには、FTシリーズに巻いたコイルの採用は「大間違い」。すると、そもそも初代LCメータの初期設計が既に間違っていたという事実・・・後々、LHLシリーズのコイルに交換するまでの「不安定の苦労」は自分で仕出かしていたようです・・・ションボリ
◆ コイルの大きさ・インダクタンス値による「Q」の変化
LC発振回路の安定度を高めるためのコイルの選択要素・・・ご存知「Q」は、今回のような用途ではできるだけ大きい方が宜しいと単純に考えていいでしょう。そこで、LHLシリーズのQについてもデータシートから拾ってみました。

現時点でLCメータに載っているもの、例のバラックの奴に載っているものは、何れも「LHL08NB101K」です。インダクタンス値は100μHであり、「101K」として上図左のグラフで見られます。組み合わせるコンデンサ容量を1000pFとすると発振周波数が500KHz程度になることから、Q=30程度と読み取れますね(赤い丸囲み辺り)。
一方、LHL08xxxよりもう一廻り大きいLHL10xxxでは、同じ条件である100μH/500KHzでQ=55程度(上図右の赤丸囲みの辺り)に上昇します。流石に形状が大きくなるとQも上がりますね。
ここで、違う角度から考えてみます。
LM311(または同等品)を用いたLCフランクリン発振において比較的安定に発振できる上限周波数は、どうやら1500KHz程度のようです。上側に少し余裕をみて1000KHz程度までLCメータの発振周波数を引き上げた場合、インダクタンス値としては22μHぐらいまで小さくできます。ただ、周波数を上げればそれだけ安定度的には不利になりますから、このトレードオフをどの程度の周波数にするか・・・これも検討課題の一つです。
一例ですが、仮にインダクタンス値を47μHにすると、発振周波数は734KHz程度になります。生憎、47μHにおけるQカーブは上図には記入されていませんが、傾向として「101Kよりもう少し上でカーブを描く」という感じになるでしょう。単なる予想でしかありませんが、LHL10タイプの47μHではQ=70前後と思われ(上図右の緑丸囲みの部分)、現状のコイルよりかなり改善するものと考えています。
◆ コンデンサで温度補償する
コイルが「正」ならコンデンサは「負」・・・このバランスが上手く取れれば、かなりイイ感じの安定度を得ることができるわけです。そこで、今使っている「フィルムコンデンサ」(ニッセイ電機のAMZシリーズ:秋月に売ってます)はどんな具合なのか、その温度特性をデータシートから引っ張り出しました。

図中の黒い曲線がAMZシリーズの特性を示していますが、読み取り値で+350ppm・・・「正」の傾きです。これでは、温度が上がればインダクタンス値と共に容量も上がってしまい上手くないことは明白・・・欲しいのは、この図の赤線のような「負の特性」を持つものです。
こうなれば、別のコンデンサにすればよいわけです。「確かスチコンは負の特性だったよなぁ・・・」という微かな脳内情報を頼りに「手に入り易いこと」を条件として探してみると、千石電商さんにありました・・・XICONというメーカのスチロールコンデンサ
早速、データシートを拾ってきました。

おお、久々に自分の記憶が正しかった(って、〇ケ老人かぃ
)・・・と安堵している場合ではありませんが、思った通り「負」の温度特性、それも特性グラフから常温帯では凡そ-135ppm程度と読み取れます。このコンデンサに+100~+200ppm程度のコイルを組み合わせれば、そこそこ安定した発振コンビができるはず・・・。
◆ とりあえずの「最強コンビ」を準備
「善は急げ」と「急いては事をし損じる」・・・毎度迷うところですが、既に「最強コンビ」を手元に準備しました。今回は、秋葉原方面に出向く予定が無かったため千石電商さんの通販を利用。送料は400円チョイですから、我が家からの往復交通費の半分くらい・・・特に手に取ってチョイスするものでもなかったんで、RG58A/Uのケーブル少々と共に購入しました。大きい方のコイルが今回購入したもので、100μHと47μHをとりあえず。銀色の奴が真打「スチコン」です・・・って、皆さんご存じですよね

この記事の締めくくりにちょっと反省しておきますが、そもそもLCメータは「しっかりしたLC発振ありき」の測定器であることは明白で、DDSやPLLなんかには手が出なかった頃の「VFO製作技術」など、ちょっとレトロなノウハウがモロに活きるわけです。何となく発振周波数が「中波並み」ということで、作りっぱなしでもそこそこ行けるんじゃねぇの・・・と高を括っていましたが、きちんとした「高周波発振回路」として考えてやる必要があったようですね
さぁ、賽は投げられた・・・ここからは例によってノンビリと検証したいと思います。
さて、寄り道のはずが本腰を入れてしまうことになったLCメータの改善について、「もう少し安定な測定器へ」というコンセプトで考えたいと思います。本当は「電池駆動」「見やすいLED表示」なども考慮したいところですが、これではいつまで経っても・・・になりそうなんで、ひとまずLC発振部の安定度向上「だけ」に絞ります。
◆ LHLシリーズの温度特性
LC発振では、コイルとコンデンサの温度特性を勘案することが重要です。そこで、これまでの実験結果からまずまずの成績だったと思われる太陽誘電のインダクタ「LHLシリーズ」をチョイスするとして、データシートから温度特性を拾ってみました。なお、このコイルは秋月や千石電商さんで手に入るポピュラーなものです。

上図の通り、このコイルの温度特性は「正」。20℃から40℃の温度変化に対し、リアクタンス値の変化が+0.2%~+0.9%というグラフの読み取りから、+100~+450ppm程度と換算されます。少し幅があるため、どの程度の評価をしておけばいいのか判りませんが、そんなに無茶苦茶な値ではないでしょう。
ちなみに、トロイダルコアに巻いた場合の温度特性も同様に「正」であり、透磁率の違いによってそれぞれの温度係数を持ちます。鉄ダスト系(T37-6等、いわゆるTシリーズ)では+35~+370ppmという納得できそうな値、一方のフェライト系(FT50-61等のFTシリーズ)では+500~+12,500ppm(#43材)とかなり大きくなっているようです(by トロ活情報)。従って、今回のLCメータには、FTシリーズに巻いたコイルの採用は「大間違い」。すると、そもそも初代LCメータの初期設計が既に間違っていたという事実・・・後々、LHLシリーズのコイルに交換するまでの「不安定の苦労」は自分で仕出かしていたようです・・・ションボリ

◆ コイルの大きさ・インダクタンス値による「Q」の変化
LC発振回路の安定度を高めるためのコイルの選択要素・・・ご存知「Q」は、今回のような用途ではできるだけ大きい方が宜しいと単純に考えていいでしょう。そこで、LHLシリーズのQについてもデータシートから拾ってみました。

現時点でLCメータに載っているもの、例のバラックの奴に載っているものは、何れも「LHL08NB101K」です。インダクタンス値は100μHであり、「101K」として上図左のグラフで見られます。組み合わせるコンデンサ容量を1000pFとすると発振周波数が500KHz程度になることから、Q=30程度と読み取れますね(赤い丸囲み辺り)。
一方、LHL08xxxよりもう一廻り大きいLHL10xxxでは、同じ条件である100μH/500KHzでQ=55程度(上図右の赤丸囲みの辺り)に上昇します。流石に形状が大きくなるとQも上がりますね。
ここで、違う角度から考えてみます。
LM311(または同等品)を用いたLCフランクリン発振において比較的安定に発振できる上限周波数は、どうやら1500KHz程度のようです。上側に少し余裕をみて1000KHz程度までLCメータの発振周波数を引き上げた場合、インダクタンス値としては22μHぐらいまで小さくできます。ただ、周波数を上げればそれだけ安定度的には不利になりますから、このトレードオフをどの程度の周波数にするか・・・これも検討課題の一つです。
一例ですが、仮にインダクタンス値を47μHにすると、発振周波数は734KHz程度になります。生憎、47μHにおけるQカーブは上図には記入されていませんが、傾向として「101Kよりもう少し上でカーブを描く」という感じになるでしょう。単なる予想でしかありませんが、LHL10タイプの47μHではQ=70前後と思われ(上図右の緑丸囲みの部分)、現状のコイルよりかなり改善するものと考えています。
◆ コンデンサで温度補償する
コイルが「正」ならコンデンサは「負」・・・このバランスが上手く取れれば、かなりイイ感じの安定度を得ることができるわけです。そこで、今使っている「フィルムコンデンサ」(ニッセイ電機のAMZシリーズ:秋月に売ってます)はどんな具合なのか、その温度特性をデータシートから引っ張り出しました。

図中の黒い曲線がAMZシリーズの特性を示していますが、読み取り値で+350ppm・・・「正」の傾きです。これでは、温度が上がればインダクタンス値と共に容量も上がってしまい上手くないことは明白・・・欲しいのは、この図の赤線のような「負の特性」を持つものです。
こうなれば、別のコンデンサにすればよいわけです。「確かスチコンは負の特性だったよなぁ・・・」という微かな脳内情報を頼りに「手に入り易いこと」を条件として探してみると、千石電商さんにありました・・・XICONというメーカのスチロールコンデンサ


おお、久々に自分の記憶が正しかった(って、〇ケ老人かぃ

◆ とりあえずの「最強コンビ」を準備
「善は急げ」と「急いては事をし損じる」・・・毎度迷うところですが、既に「最強コンビ」を手元に準備しました。今回は、秋葉原方面に出向く予定が無かったため千石電商さんの通販を利用。送料は400円チョイですから、我が家からの往復交通費の半分くらい・・・特に手に取ってチョイスするものでもなかったんで、RG58A/Uのケーブル少々と共に購入しました。大きい方のコイルが今回購入したもので、100μHと47μHをとりあえず。銀色の奴が真打「スチコン」です・・・って、皆さんご存じですよね


この記事の締めくくりにちょっと反省しておきますが、そもそもLCメータは「しっかりしたLC発振ありき」の測定器であることは明白で、DDSやPLLなんかには手が出なかった頃の「VFO製作技術」など、ちょっとレトロなノウハウがモロに活きるわけです。何となく発振周波数が「中波並み」ということで、作りっぱなしでもそこそこ行けるんじゃねぇの・・・と高を括っていましたが、きちんとした「高周波発振回路」として考えてやる必要があったようですね

さぁ、賽は投げられた・・・ここからは例によってノンビリと検証したいと思います。
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