整合範囲の狭いアンテナカップラの可能性
2015-05-09
ALL JAが終わって以来「Lマッチ」に取り憑かれたようになっていますが、こういう「凝っている状態」は逃さずに思いのまま思考を巡らすのが楽しくもあり、稚拙なデータと駄文であってもまとめておくと、後々活用できることが多いものです。実際のもの作りは全く進みませんが、楽しい週末を過ごしています
Lマッチへの拘りは、損失の少ないインピーダンス変換の模索に他なりませんが、πマッチやTマッチ、はたまたその他のマッチング回路でも、極端な整合を行わなければ数%程度のロスで変換できるものと思っています。この辺り、先人たる諸OMが実験されていますのでそちらを参考にして頂きたいんですが、πマッチは単純に考えて「二対のLマッチ」という構成ですから、ロスが少なそうなことは他のマッチング回路よりも容易に想像できますよね(Tマッチも二対のLマッチなんですが、こちらは共振回路としての性質もより考えなければなりません)。
では、πマッチで可能な限り整合範囲を狭めたものを考察しておこう・・・というわけで、ここではGW中にまとめておいた我が釣竿君の純抵抗分に着目して整合範囲を決め、πマッチの様子を図にしてみました。

釣竿君の純抵抗のデータでは80mの「29.8Ω」が最も低かったことから、整合範囲はSWR≦1.7でよかったんですが、実際に作る場合を考慮してSWRにして0.1だけ広げた形で考えました。SWR≦1.8の整合範囲は、58.9Ωを中心とした半径が31.1Ωの円で表現できます(図の青い部分)。最も高かったのが40mの67.2Ωですが、十分に整合範囲に入っていることが判ります。
この様子を今の釣竿君に当てはめてみると、40mの純抵抗成分は50Ω後半から80Ω付近であり、この定数のπマッチで扱うのに非常に適していると言うことができます。
このようにπマッチの整合範囲は、一般的な無線機のアンテナ端子の入出力インピーダンスである50Ωより少し上の方に中心点のある円を描きます(ちなみにSWR≦3の設計では、83Ωが中心点となる±66.6Ω程度の円)。勿論、整合範囲が上記のように円にならなくてよければ、整合範囲を低め、或いは高めにシフトすることは可能です。また、Lマッチと共通して言えることは、インピーダンスの変換比率が大きくなると、必要なQ値が上がってしまうことから損失が大きくなるということです。
リアクタンス分の調整についてはどうでしょうか。ここではリアクタンス成分の整合モデルとして、「+20Ωj」を仮に置いてみます。詳説は不要かと思いますが、整合円と+20Ωjの直線が交わる点から垂線を下ろし、純抵抗の座標軸(y軸)と交わるところの読みが「+20Ωjのリアクタンス成分を持つアンテナを接続しても整合が取れる純抵抗値」となりますね。即ち、凡そ37Ωから82Ωまでが使用できる範囲と読み取れます。さらに、この範囲はマイナス側まで拡大して考えることができますから、「±20Ωjのリアクタンス成分」まで広げて考えることができます。
それではこの「±20Ωj」とは、どの程度の同調周波数のズレに当たるのかを求めてみましょう。これは、折角持っている測定器・・・アンアナ54号君の実測値で考えてみたいと思います。

アンアナ54号君ことAA-54は、左のスナップのようなグラフが表示できるほか、CSVファイルを吐き出してくれます。これを使って、先日取った釣竿君の80mのデータからリアクタンス成分・・・緑色の線の傾きを求めると「0.786Ωj/KHz」が求まりました。実際には純抵抗成分も1Ω程度動くため誤差を含みますが、このアンテナにおける「20Ωj」の周波数差は「±15.72KHz」と計算できます。調整範囲としては、このアンテナ自体の実用帯域幅を含めても若干窮屈ですね。その上、パッと仮設したアンテナの「ズレ具合」や当日の天候・当日までの天候によっては「建物や地面の湿り気」に伴う同調周波数低下が顕在化しますから、これらを追いかけるには、もう少し大きな余裕が欲しいところです。
同様に40mを見てみるとリアクタンス成分の傾きは「2.95Ωj/KHz」であり、調整範囲は特に窮屈ではありません。またしても、このπマッチ回路でイケそうな結果となり、改めて「ローバンドになればなるほど難しいわい」と思った次第。
リアクタンス分の整合については、ここまで理詰めで考えたわけではありませんが、現用のTYPE-ⅢことπC型カップラの整合範囲はかなり広く取ってあるため、40mは無論、80mでも特段の問題も無く動いているんだと思います。
以上、「Lマッチ検討推進中」である身としてはちょっと脇道ですが、次なる検討の材料となる要素のまとめでした。

Lマッチへの拘りは、損失の少ないインピーダンス変換の模索に他なりませんが、πマッチやTマッチ、はたまたその他のマッチング回路でも、極端な整合を行わなければ数%程度のロスで変換できるものと思っています。この辺り、先人たる諸OMが実験されていますのでそちらを参考にして頂きたいんですが、πマッチは単純に考えて「二対のLマッチ」という構成ですから、ロスが少なそうなことは他のマッチング回路よりも容易に想像できますよね(Tマッチも二対のLマッチなんですが、こちらは共振回路としての性質もより考えなければなりません)。
では、πマッチで可能な限り整合範囲を狭めたものを考察しておこう・・・というわけで、ここではGW中にまとめておいた我が釣竿君の純抵抗分に着目して整合範囲を決め、πマッチの様子を図にしてみました。

釣竿君の純抵抗のデータでは80mの「29.8Ω」が最も低かったことから、整合範囲はSWR≦1.7でよかったんですが、実際に作る場合を考慮してSWRにして0.1だけ広げた形で考えました。SWR≦1.8の整合範囲は、58.9Ωを中心とした半径が31.1Ωの円で表現できます(図の青い部分)。最も高かったのが40mの67.2Ωですが、十分に整合範囲に入っていることが判ります。
この様子を今の釣竿君に当てはめてみると、40mの純抵抗成分は50Ω後半から80Ω付近であり、この定数のπマッチで扱うのに非常に適していると言うことができます。
このようにπマッチの整合範囲は、一般的な無線機のアンテナ端子の入出力インピーダンスである50Ωより少し上の方に中心点のある円を描きます(ちなみにSWR≦3の設計では、83Ωが中心点となる±66.6Ω程度の円)。勿論、整合範囲が上記のように円にならなくてよければ、整合範囲を低め、或いは高めにシフトすることは可能です。また、Lマッチと共通して言えることは、インピーダンスの変換比率が大きくなると、必要なQ値が上がってしまうことから損失が大きくなるということです。
リアクタンス分の調整についてはどうでしょうか。ここではリアクタンス成分の整合モデルとして、「+20Ωj」を仮に置いてみます。詳説は不要かと思いますが、整合円と+20Ωjの直線が交わる点から垂線を下ろし、純抵抗の座標軸(y軸)と交わるところの読みが「+20Ωjのリアクタンス成分を持つアンテナを接続しても整合が取れる純抵抗値」となりますね。即ち、凡そ37Ωから82Ωまでが使用できる範囲と読み取れます。さらに、この範囲はマイナス側まで拡大して考えることができますから、「±20Ωjのリアクタンス成分」まで広げて考えることができます。
それではこの「±20Ωj」とは、どの程度の同調周波数のズレに当たるのかを求めてみましょう。これは、折角持っている測定器・・・アンアナ54号君の実測値で考えてみたいと思います。

アンアナ54号君ことAA-54は、左のスナップのようなグラフが表示できるほか、CSVファイルを吐き出してくれます。これを使って、先日取った釣竿君の80mのデータからリアクタンス成分・・・緑色の線の傾きを求めると「0.786Ωj/KHz」が求まりました。実際には純抵抗成分も1Ω程度動くため誤差を含みますが、このアンテナにおける「20Ωj」の周波数差は「±15.72KHz」と計算できます。調整範囲としては、このアンテナ自体の実用帯域幅を含めても若干窮屈ですね。その上、パッと仮設したアンテナの「ズレ具合」や当日の天候・当日までの天候によっては「建物や地面の湿り気」に伴う同調周波数低下が顕在化しますから、これらを追いかけるには、もう少し大きな余裕が欲しいところです。
同様に40mを見てみるとリアクタンス成分の傾きは「2.95Ωj/KHz」であり、調整範囲は特に窮屈ではありません。またしても、このπマッチ回路でイケそうな結果となり、改めて「ローバンドになればなるほど難しいわい」と思った次第。
リアクタンス分の整合については、ここまで理詰めで考えたわけではありませんが、現用のTYPE-ⅢことπC型カップラの整合範囲はかなり広く取ってあるため、40mは無論、80mでも特段の問題も無く動いているんだと思います。
以上、「Lマッチ検討推進中」である身としてはちょっと脇道ですが、次なる検討の材料となる要素のまとめでした。
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