ゲート接地アンプの特性(シングル編)
2016-12-29
今日は冷え込みが厳しくなりました。やはり宵の明星が煌びやかな冬の翌日は冷え込むことが多く、北風優勢な気圧配置では仕方が無いところでしょう。とは言え、買い物以外は部屋に閉じこもっていた一日ですから、実はあまり寒さは感じませんでした
明日は年末・年始向けの買い出し予定・・・ちょっと厚着して出かけようと思います。
昨夕から今日の午前中にかけて、ゲート接地アンプの諸元を取り纏めました。まずは回路図。

シンプルなゲート接地アンプです。回路動作的なものも難しくありませんので、詳細はもっと格式の高いWeb記事等で確認して下さい。特徴的な要素も殆どありませんが、ドレインに入れている抵抗はパラ止めです。また、チョイスしたJ310自身のIdssはおよそ42mAです。

実験基板は安物万能基板に組んでいます。ランド面に銅箔テープを貼り、入出力はSMAコネクタとして、HF帯メインの測定としては不安要素を排除したつもりです。
◆ 周波数特性
まずは、ドレイン電流を30mAとして周波数特性を取りました。

よく見ると青と赤の2本の線が描画されていますが、これはRFCの種類によって差が出ないかを確認しました。
青:FB801-43 11T(実測で約200μH) @50円
赤:マイクロインダクタ 47μH @10円
実はこの2種で低域(1MHz以下)の様子が全然違うのではないか・・・と予想していたんですが、実測すると、マイクロインダクタの方が1MHz辺りから、FB801-43の方が500KHz辺りから(低い周波数に向かって)利得が減衰するといった微妙なものでした。少なくとも160mバンドくらいまでは何れのRFCでも使えるようで、こうなると「単価的」にマイクロインダクタに軍配。
さらに出力トランスですが、バイファイラの巻き数を4回と5回で試したところ、これも殆ど変わらなかったため測定データの貼り付けは省略・・・というわけで、以下の実験では「FB801-43のRFC」と「5回巻きの出力トランス」にしています。
追記しておきますが、40MHz以上の利得の様子はAPB-3の測定精度の問題で、かなり跳ね上がって見えています・・・悪しからず。
◆ 入出力インピーダンス
最初に入力インピーダンスの様子。

55Ω辺りを中心にHFの上から下に向かって下がっていきますが、SWR換算では50Ωに対して±1.3程度とかなり優秀です。
一方の出力インピーダンス・・・これは、2つの方法で測定しました。まずは、出力開放と終端した場合の電圧差からインピーダンス値を導き出す方法です。数式は以下の通り。
Zo:出力インピーダンス、 Vo:解放時電圧、 VL:終端時電圧、 RL:終端抵抗

電圧はオシロで読み取りました。かなり暴れているのが判りますね。もし、後段にさらにアンプを接続する場合には注意が必要になりそう。
さて、ここで満足してもよかったんですが、折角リターンロスブリッジがあるのに・・・。実は、ブリッジを使った場合にどうやって測定すればいいのか判らず、Webをあちこち彷徨って調べていたら、単純にブリッジのDUTにアンプの出力を繋げばよいということが判りました。アンプの入力にはひとまず50Ωのターミネータを繋いで測定してみると・・・。

おおっ
同じようなデータが採れました。ただ、少し周波数がズレていますね
この記事では一旦ペンディングし、今後の測定で再度確認したいと思います。
◆ IMD特性
さぁ、お待ちかねの(
)IMD測定結果です。これはドレイン電流に対するGainとIIPをグラフに纏めました。

先にも記した通り、今回の回路は非常にシンプルであり測定誤差以外の不確定要素は少ない・・・得られたデータはある程度信じていいと思っています。入力電力は凡そ0dBm、上記のGainの様子から出力は+4,5dBm程度です。そして、IIPのピークは35mAほどドレイン電流を流したところにあります。
ただ、このピークの所には少し問題がありそう。まずはドレイン電流を30mAとした場合のIMDの様子から。

これはよく見る奴・・・3次IMDまでは視認できますが、5次より高次のものはノイズに埋もれています。では、35mAでは如何に

3次歪みは確かに小さくなりますが、新たに5次の歪みが見え始めました。ここからドレイン電流をさらに上げていくとさらに歪みが増えていき、7次、9次が見えてきます。この回路を「少し余裕を持って使う」ということにするなら、ドレイン電流は30mAくらいが限度と考えるべきでしょう。また、NFに気を配るのであれば、さらにドレイン電流は小さくすべきであり、このあたりの説明は我がバイブル「トロ活」に詳説されています。
◆まとめ・・・この回路、使えるのか
J310を1つ使ったゲート接地回路としての特性は上記の通りだとして、ではこの回路に使い道があるかというと殆ど無いと思います。まずは何といっても利得が小さすぎで、置くべき場所が無さそう。入力部分のインピーダンスは(50Ω使いとしては)申し分ないですが、もう少し利得がないとねぇ・・・。ゲート接地は、入力と出力のインピーダンス比が利得になるため6dB近くは取れるかと思いましたが、この回路では難しいようです。
逆に狭帯域なアンプとしては、出力インピーダンスをもう少し高く・・・例えば今回の結果で設計するなら800Ωくらいの出力インピーダンスにすれば、10dB程度のアンプは簡単に作れそう。ちょっとしたバッファアンプとしての使い道は出てきますね。
次のヘッポコ実験は・・・そう、もうお分かりですよね

昨夕から今日の午前中にかけて、ゲート接地アンプの諸元を取り纏めました。まずは回路図。

シンプルなゲート接地アンプです。回路動作的なものも難しくありませんので、詳細はもっと格式の高いWeb記事等で確認して下さい。特徴的な要素も殆どありませんが、ドレインに入れている抵抗はパラ止めです。また、チョイスしたJ310自身のIdssはおよそ42mAです。

実験基板は安物万能基板に組んでいます。ランド面に銅箔テープを貼り、入出力はSMAコネクタとして、HF帯メインの測定としては不安要素を排除したつもりです。
◆ 周波数特性
まずは、ドレイン電流を30mAとして周波数特性を取りました。

よく見ると青と赤の2本の線が描画されていますが、これはRFCの種類によって差が出ないかを確認しました。
青:FB801-43 11T(実測で約200μH) @50円
赤:マイクロインダクタ 47μH @10円
実はこの2種で低域(1MHz以下)の様子が全然違うのではないか・・・と予想していたんですが、実測すると、マイクロインダクタの方が1MHz辺りから、FB801-43の方が500KHz辺りから(低い周波数に向かって)利得が減衰するといった微妙なものでした。少なくとも160mバンドくらいまでは何れのRFCでも使えるようで、こうなると「単価的」にマイクロインダクタに軍配。
さらに出力トランスですが、バイファイラの巻き数を4回と5回で試したところ、これも殆ど変わらなかったため測定データの貼り付けは省略・・・というわけで、以下の実験では「FB801-43のRFC」と「5回巻きの出力トランス」にしています。
追記しておきますが、40MHz以上の利得の様子はAPB-3の測定精度の問題で、かなり跳ね上がって見えています・・・悪しからず。
◆ 入出力インピーダンス
最初に入力インピーダンスの様子。

55Ω辺りを中心にHFの上から下に向かって下がっていきますが、SWR換算では50Ωに対して±1.3程度とかなり優秀です。
一方の出力インピーダンス・・・これは、2つの方法で測定しました。まずは、出力開放と終端した場合の電圧差からインピーダンス値を導き出す方法です。数式は以下の通り。
Zo = | Vo - VL VL | × RL |
Zo:出力インピーダンス、 Vo:解放時電圧、 VL:終端時電圧、 RL:終端抵抗

電圧はオシロで読み取りました。かなり暴れているのが判りますね。もし、後段にさらにアンプを接続する場合には注意が必要になりそう。
さて、ここで満足してもよかったんですが、折角リターンロスブリッジがあるのに・・・。実は、ブリッジを使った場合にどうやって測定すればいいのか判らず、Webをあちこち彷徨って調べていたら、単純にブリッジのDUTにアンプの出力を繋げばよいということが判りました。アンプの入力にはひとまず50Ωのターミネータを繋いで測定してみると・・・。

おおっ


◆ IMD特性
さぁ、お待ちかねの(


先にも記した通り、今回の回路は非常にシンプルであり測定誤差以外の不確定要素は少ない・・・得られたデータはある程度信じていいと思っています。入力電力は凡そ0dBm、上記のGainの様子から出力は+4,5dBm程度です。そして、IIPのピークは35mAほどドレイン電流を流したところにあります。
ただ、このピークの所には少し問題がありそう。まずはドレイン電流を30mAとした場合のIMDの様子から。

これはよく見る奴・・・3次IMDまでは視認できますが、5次より高次のものはノイズに埋もれています。では、35mAでは如何に


3次歪みは確かに小さくなりますが、新たに5次の歪みが見え始めました。ここからドレイン電流をさらに上げていくとさらに歪みが増えていき、7次、9次が見えてきます。この回路を「少し余裕を持って使う」ということにするなら、ドレイン電流は30mAくらいが限度と考えるべきでしょう。また、NFに気を配るのであれば、さらにドレイン電流は小さくすべきであり、このあたりの説明は我がバイブル「トロ活」に詳説されています。
◆まとめ・・・この回路、使えるのか

J310を1つ使ったゲート接地回路としての特性は上記の通りだとして、ではこの回路に使い道があるかというと殆ど無いと思います。まずは何といっても利得が小さすぎで、置くべき場所が無さそう。入力部分のインピーダンスは(50Ω使いとしては)申し分ないですが、もう少し利得がないとねぇ・・・。ゲート接地は、入力と出力のインピーダンス比が利得になるため6dB近くは取れるかと思いましたが、この回路では難しいようです。
逆に狭帯域なアンプとしては、出力インピーダンスをもう少し高く・・・例えば今回の結果で設計するなら800Ωくらいの出力インピーダンスにすれば、10dB程度のアンプは簡単に作れそう。ちょっとしたバッファアンプとしての使い道は出てきますね。
次のヘッポコ実験は・・・そう、もうお分かりですよね

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