水晶測定アダプタの試作
2017-06-09
SSB/CWの自作機の受信IF周りを検討していくと、選択度を決定するフィルタを吟味する場面が出てきます。最近のメーカー機のIF回路周辺はデジタル化され、フィルタ自体もDSP処理による場合が多くなってきましたが、チープな自作機ではまだまだアナログ回路設計が主流・・・やはり、クリスタルフィルタを上手く仕立てることができれば言うことありませんよね
クリスタルフィルタは恥ずかしながら自作したことはありませんが、今に及んで自分も過去の技術書や雑誌の製作記事を参考に「丁稚上げること」はできそう。特に、水晶発振子(以下、単に水晶)自体はかなりの廉価で入手できることから、これを使って作ることができれば一番だと思います。
しかし、でき上がった後の性能・・・キレ味や音質に関わる部分で満足いくか否かは、作ってみなけりゃ判りません。自分で組んでみて喜んだり悲しんだりするのが、クリスタルフィルタ自作の醍醐味なんじゃよ
・・・と逃げ口上するのも一興でしょうが、もう少し確実に自作する方法があれば、それに越したことはありませんよね。
前回記事に枕が無かったためかまたしても能書きが若干増量となりました
が、要は「そこらにある水晶でそこそこ使えそうなフィルタを作ってみよう
」というのが、ここ暫くの記事ネタになります。
クリスタルフィルタの自作は、個々の水晶を「LCR共振器」と見立ててこれを複数個接続して期待する帯域幅と減衰斜度(或いはシェープファクタ)を得るようにするものです。水晶の共振(発振も同じように考えられます。フィルタのネタなんで、以下は単に共振)の様子は等価回路で理解が深まります。

この等価回路のポイントは、「LCR直列共振回路」を構成している上辺の部分です。水晶の共振周波数の殆どはLmとCmで決まります。Rmは共振に当たって生じる”損失”の部分です。クリスタルフィルタを作る場合は損失が小さければ小さい程Quが高いということになり、シャープなフィルタが作れます。
Cpは小容量が測定できる容量計で簡単に測定できますから、上辺を構成するデバイスの個々の値が簡単に判れば話は早いんですが・・・。すると、これらの値を解き明かす方法は先駆のOM諸氏のWeb記事に幾つも見つけることができ、「ちょっとした治具」を用意した上でAPB-3を使って調べてやれば、あとは計算で求められることが判りました。
その治具に要求される機能は、以下のようになります。
① 水晶の共振周波数は、SG等で外から信号を与えてその共振
周波数を測定する。共振周波数の測定を含めたデータ採集時の
インピーダンスは低い方がよく、標準的な測定方法では12.5Ωで
測定する(らしい)。
② Cmは、対象の水晶と直列に値が判っているコンデンサを接続し、
共振周波数の偏差を知ることにより求められる。
これは、ポピュラーな小容量測定の仕掛けと同様の原理である
(と思う)。Cmが求まれば、発振周波数からLmの値も計算できる。
③ 水晶の共振周波数の信号を与えた場合、その水晶固有の”損失"が
生じる。これがRmである。この測定は、水晶を通した信号の出力値を
読み取っておき、水晶の代わりに低抵抗のボリュームを通して測定
した出力値が同じになるように調整、その時の抵抗値がRmとなる
(という測定方法)。
文章で書いても、あまりピンときませんね・・・
では、回路図を見てみましょうか。

入出力に-3dBのアッテネータを介した上で変換比4:1のトランスを置いてやることで、水晶の入出力インピーダンスを12.5Ωになるようにしました。さらに小さなスイッチを組み合わせ、測定対象に合わせて回路構成を切り替えられるようにしました。解説は要らないかと思いますが、各スイッチの役割をまとめておきます。
SW-1 水晶と直列に接続するコンデンサのオン/オフ
SW-2 水晶の損失(Rm)を測定する際のボリュームのオン/オフ
SW-3 APB-3を接続してキャリブレする際のショート/オープン
試作した水晶測定アダプタはこんな感じ。

秋月D基板に組みました。基板の裏はまたしても「カッターでパターン作り」とし、必要なスイッチも秋月の小型トグルスイッチで組みました。水晶と直列に接続するコンデンサはジャンクのセラコンで、「24pF」というあまりお目にかかれない容量のもの。20~30pF程度のものなら何でもいいと思います。
実験用の「台」は、秋月C/D基板が収まるように穴開けして金属スペーサを取り付けたもの。この程度の造作でも安定な測定には不可欠かと思いますが、この台自体は、まだまだ工夫の余地がありそうですね
こんなチープなアダプタでもそこそこの「諸元採り」はできそうで、クリスタルフィルタ製作に向けたデータ測定はこれで一先ずやってみようかと。続報はこの週末にまとめたいと思いますが、何やら家族イベントがあるような
ま、こんなマニアックな記事の続編を待つ輩はあまりいらっしゃらないでしょうからマイペースで・・・って、いつもマイペースでしたね
修正 2017.06.13>
奇特な読者の方から「回路図、違ってるぞぃ」というご指摘を頂いたんで確認したところ、トランスの接続が逆・・・測定対象の水晶の方がインピーダンスが高いということになってました。謹んで、差し替えさせて頂きました。ありがとうございました。
ちなみに、回路自体は間違っていなかったことが確認できたんで、次の記事のデータは合っていたようです。フゥ・・・ヤレヤレ。

クリスタルフィルタは恥ずかしながら自作したことはありませんが、今に及んで自分も過去の技術書や雑誌の製作記事を参考に「丁稚上げること」はできそう。特に、水晶発振子(以下、単に水晶)自体はかなりの廉価で入手できることから、これを使って作ることができれば一番だと思います。
しかし、でき上がった後の性能・・・キレ味や音質に関わる部分で満足いくか否かは、作ってみなけりゃ判りません。自分で組んでみて喜んだり悲しんだりするのが、クリスタルフィルタ自作の醍醐味なんじゃよ

前回記事に枕が無かったためかまたしても能書きが若干増量となりました


クリスタルフィルタの自作は、個々の水晶を「LCR共振器」と見立ててこれを複数個接続して期待する帯域幅と減衰斜度(或いはシェープファクタ)を得るようにするものです。水晶の共振(発振も同じように考えられます。フィルタのネタなんで、以下は単に共振)の様子は等価回路で理解が深まります。

この等価回路のポイントは、「LCR直列共振回路」を構成している上辺の部分です。水晶の共振周波数の殆どはLmとCmで決まります。Rmは共振に当たって生じる”損失”の部分です。クリスタルフィルタを作る場合は損失が小さければ小さい程Quが高いということになり、シャープなフィルタが作れます。
Cpは小容量が測定できる容量計で簡単に測定できますから、上辺を構成するデバイスの個々の値が簡単に判れば話は早いんですが・・・。すると、これらの値を解き明かす方法は先駆のOM諸氏のWeb記事に幾つも見つけることができ、「ちょっとした治具」を用意した上でAPB-3を使って調べてやれば、あとは計算で求められることが判りました。
その治具に要求される機能は、以下のようになります。
① 水晶の共振周波数は、SG等で外から信号を与えてその共振
周波数を測定する。共振周波数の測定を含めたデータ採集時の
インピーダンスは低い方がよく、標準的な測定方法では12.5Ωで
測定する(らしい)。
② Cmは、対象の水晶と直列に値が判っているコンデンサを接続し、
共振周波数の偏差を知ることにより求められる。
これは、ポピュラーな小容量測定の仕掛けと同様の原理である
(と思う)。Cmが求まれば、発振周波数からLmの値も計算できる。
③ 水晶の共振周波数の信号を与えた場合、その水晶固有の”損失"が
生じる。これがRmである。この測定は、水晶を通した信号の出力値を
読み取っておき、水晶の代わりに低抵抗のボリュームを通して測定
した出力値が同じになるように調整、その時の抵抗値がRmとなる
(という測定方法)。
文章で書いても、あまりピンときませんね・・・


入出力に-3dBのアッテネータを介した上で変換比4:1のトランスを置いてやることで、水晶の入出力インピーダンスを12.5Ωになるようにしました。さらに小さなスイッチを組み合わせ、測定対象に合わせて回路構成を切り替えられるようにしました。解説は要らないかと思いますが、各スイッチの役割をまとめておきます。
SW-1 水晶と直列に接続するコンデンサのオン/オフ
SW-2 水晶の損失(Rm)を測定する際のボリュームのオン/オフ
SW-3 APB-3を接続してキャリブレする際のショート/オープン
試作した水晶測定アダプタはこんな感じ。

秋月D基板に組みました。基板の裏はまたしても「カッターでパターン作り」とし、必要なスイッチも秋月の小型トグルスイッチで組みました。水晶と直列に接続するコンデンサはジャンクのセラコンで、「24pF」というあまりお目にかかれない容量のもの。20~30pF程度のものなら何でもいいと思います。
実験用の「台」は、秋月C/D基板が収まるように穴開けして金属スペーサを取り付けたもの。この程度の造作でも安定な測定には不可欠かと思いますが、この台自体は、まだまだ工夫の余地がありそうですね

こんなチープなアダプタでもそこそこの「諸元採り」はできそうで、クリスタルフィルタ製作に向けたデータ測定はこれで一先ずやってみようかと。続報はこの週末にまとめたいと思いますが、何やら家族イベントがあるような


修正 2017.06.13>
奇特な読者の方から「回路図、違ってるぞぃ」というご指摘を頂いたんで確認したところ、トランスの接続が逆・・・測定対象の水晶の方がインピーダンスが高いということになってました。謹んで、差し替えさせて頂きました。ありがとうございました。
ちなみに、回路自体は間違っていなかったことが確認できたんで、次の記事のデータは合っていたようです。フゥ・・・ヤレヤレ。
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回路図だけなら良いのですが…
老爺さん、コメントありがとうございます!
> このトランス接続は、水晶側(測定物側)のインピーダンスが高くなるのではないでしょうか?
早速、回路図をチェック…本当だ!という訳で、ご指摘の通りトランスの接続が真逆になっていますね。
今、通勤途上で直せませんが、今日中には回路図をアップし直そうと思います。
問題は、実のアダプタ自体が逆接続だと、これも直して再測定…ということになりますね(^^;)
何れにせよ、貴重なご指摘ありがとうございました。また何かお気付きでしたら、忌憚なくお知らせ下さい!!
> このトランス接続は、水晶側(測定物側)のインピーダンスが高くなるのではないでしょうか?
早速、回路図をチェック…本当だ!という訳で、ご指摘の通りトランスの接続が真逆になっていますね。
今、通勤途上で直せませんが、今日中には回路図をアップし直そうと思います。
問題は、実のアダプタ自体が逆接続だと、これも直して再測定…ということになりますね(^^;)
何れにせよ、貴重なご指摘ありがとうございました。また何かお気付きでしたら、忌憚なくお知らせ下さい!!