CW用クリスタルフィルタの設計・製作(その8:ひとまず了)
2017-08-17
昨日は朝から雨模様、かつ涼しいを通り越して小寒い感じのする一日でしたが、空き時間はヘッポコ実験三昧の一日になりました。今回の記事で一旦手を離すべくクリスタルフィルタの入出力に着目した実験を行うことに決めていたんですが、その前に帯域のトリミングに手を染めてしまい結果がとっ散らかってしまいました。この辺りも含めて、まとめたいと思います。
前回の記事では、入出力インピーダンスを適当に合わせ込んでやればまぁまぁの特性が実現できることが分かったものの、”ガウシャン特性もどき”を目指していた割によく見る台形っぽい特性に落ち着きそう・・・このままでは不味いと、折角取り付けたコンデンサを着脱しながら試行錯誤の作業を始めました。まずは結果から。

実はこの測定、インピーダンス整合の実験を始めた後だったんです。整合云々はちょっと置いておくとして・・・ちょっと頭の天辺がポコポコしているものの、お化けなシルエットになりましたよね
もう少し、このトリミング作業での変化の度合いをお見せしましょうか。

前回記事に掲載した抵抗で整合したデータとの比較です。トランスによる整合でロスが減ってしまったためピタッと重ねられていませんが、様子は判ると思います。
このトリミング作業・・・これは理屈にならない試行錯誤なんですが、個々のコンデンサ容量をLTSpiceで変更するとどんな風に特性が変化するのか見つつ、実際にコンデンサを取り替えて特性を実測するという何ともへっぽこな方法。大きめの容量のトリマコンデンサで探るという方法も併用しつつだったため、かなり時間が掛かりました。
ただ、本当に闇雲だったのかというとそうではなく、例の”Dishal”で設計した手順・・・メッシュの対を意識して作業は進めました。これは、最終的な結果を見ながら説明しましょう。

”*”を付けたコンデンサが設計値から変更したものです。順序は以下のように進めました。
① X1-2間と対になるX5-6間の容量を調整(220pF⇒180pF)
② X2-3間と対になるX4-5間の容量を調整
⇒この容量には背反の関係があったため、片方の容量を増やした
(270pF⇒330pF)
③ X3の同調容量を小さくした(1500pF⇒330pF)
①については変化が最も顕著であり、これで大凡お化けなシルエットが完成したんですが、②でさらに改善することが判り、適切な容量をトリマで探っていたら対となるコンデンサ同士が背反の関係にあったため、片側のみ容量を増やしました。③についてはそもそもの値が大きく(=1500pF)、X4の同調容量との差異があまりに大きいことから少なくなる方向に調整していった次第。
このように”Dishal”で設計されたフィルタについては、メッシュの対を意識しながら調整は可能であることが判りました。が、これは実にナンセンスな方法・・・興味本位で実施したブレッドボードでの実験である程度の特性が見られることは判っていますから、ブレボでもう少し追い込んじゃった方がいいでしょう。さらに、小さなブレボに少し細工(グランド強化など)を施して、専用の「フィルタ実験ユニット」を作っておくのもアリでしょう。
さぁ、お待ちかねの入出力インピーダンスに関するまとめに入りましょう。
この記事の一番上のデータは、入出力インピーダンスの整合用にフェライトビーズに巻いた1:4のトランスを使っています。ノイズフロアが-100dBより少し低いところにあるため切れていますが、申し分ないと言っていいと思います。

測定時の参考スナップです。フェライトビーズは最近手に入れたもので既に記事で紹介していますが、上手く動いているようです。ちなみに、7回巻きのバイファイラです。
こんな風にラフに組んでいますが、入出力が結合しないようにある程度配慮しているつもりです。前回記事でアップにできなかった入力側のシールドもこんな風に銅テープで衝立を立てた格好で、グランドに一端を接続しています。
なるほど、オーソドックスなトランスによる整合で上手くいくことは判りました。そこで、今度はLマッチによる測定です。

トランスによるものと殆ど変わりません・・・って、まぁ当たり前なんですがね
Lマッチは計算上「3.37μH+336.6pF」となりますが、Q換算で1.7程度にしかなりませんから、T37-2に28回巻き(3.29μH)と330pFのセラコンで”作りっぱなし”としました。どうやら、大丈夫そうですね。
これで普通に考えられるインピーダンス整合は、前回記事の抵抗での整合を含めて網羅したと思いますが、最後にちょっとだけ「不整合の場合」に突っ込んでおきましょう。

一番上のデータと出力側のみ200Ωにしてみたものとを重ねてみました。この程度の不整合(SWR=4)でもオツムの辺りが波打っていることが判りますね。こうなると、かなり厳格にインピーダンスを守ってやらないといけないということになりそうです。即ち、実機にこの手のクリスタルフィルタを組み込む場合には、この整合具合を「実装した状態」で測定して合わせ込んでおくことが必要なようです。
すると、今回のようにインピーダンス変換が簡単な場合はトランス整合が視野に入るものの、本命はLマッチ(或いは同調とインピーダンス変換を兼ねたタンク回路)になると考えた方が良さそう。抵抗での整合はロスに直結することからも、Lマッチを”一等賞”と考えて良さそうです。
クリスタルフィルタの試作に向け、水晶の諸元を測定するアダプタを作り始めたのが6月頭・・・2ヶ月以上掛かってしまったようです。歪み特性や音響的な遅延の具合など掘り下げたい部分もまだまだありますが、これにてひとまず、クリスタルフィルタの試作からは手を離そうかと思います。
前回の記事では、入出力インピーダンスを適当に合わせ込んでやればまぁまぁの特性が実現できることが分かったものの、”ガウシャン特性もどき”を目指していた割によく見る台形っぽい特性に落ち着きそう・・・このままでは不味いと、折角取り付けたコンデンサを着脱しながら試行錯誤の作業を始めました。まずは結果から。

実はこの測定、インピーダンス整合の実験を始めた後だったんです。整合云々はちょっと置いておくとして・・・ちょっと頭の天辺がポコポコしているものの、お化けなシルエットになりましたよね


前回記事に掲載した抵抗で整合したデータとの比較です。トランスによる整合でロスが減ってしまったためピタッと重ねられていませんが、様子は判ると思います。
このトリミング作業・・・これは理屈にならない試行錯誤なんですが、個々のコンデンサ容量をLTSpiceで変更するとどんな風に特性が変化するのか見つつ、実際にコンデンサを取り替えて特性を実測するという何ともへっぽこな方法。大きめの容量のトリマコンデンサで探るという方法も併用しつつだったため、かなり時間が掛かりました。
ただ、本当に闇雲だったのかというとそうではなく、例の”Dishal”で設計した手順・・・メッシュの対を意識して作業は進めました。これは、最終的な結果を見ながら説明しましょう。

”*”を付けたコンデンサが設計値から変更したものです。順序は以下のように進めました。
① X1-2間と対になるX5-6間の容量を調整(220pF⇒180pF)
② X2-3間と対になるX4-5間の容量を調整
⇒この容量には背反の関係があったため、片方の容量を増やした
(270pF⇒330pF)
③ X3の同調容量を小さくした(1500pF⇒330pF)
①については変化が最も顕著であり、これで大凡お化けなシルエットが完成したんですが、②でさらに改善することが判り、適切な容量をトリマで探っていたら対となるコンデンサ同士が背反の関係にあったため、片側のみ容量を増やしました。③についてはそもそもの値が大きく(=1500pF)、X4の同調容量との差異があまりに大きいことから少なくなる方向に調整していった次第。
このように”Dishal”で設計されたフィルタについては、メッシュの対を意識しながら調整は可能であることが判りました。が、これは実にナンセンスな方法・・・興味本位で実施したブレッドボードでの実験である程度の特性が見られることは判っていますから、ブレボでもう少し追い込んじゃった方がいいでしょう。さらに、小さなブレボに少し細工(グランド強化など)を施して、専用の「フィルタ実験ユニット」を作っておくのもアリでしょう。
さぁ、お待ちかねの入出力インピーダンスに関するまとめに入りましょう。
この記事の一番上のデータは、入出力インピーダンスの整合用にフェライトビーズに巻いた1:4のトランスを使っています。ノイズフロアが-100dBより少し低いところにあるため切れていますが、申し分ないと言っていいと思います。

測定時の参考スナップです。フェライトビーズは最近手に入れたもので既に記事で紹介していますが、上手く動いているようです。ちなみに、7回巻きのバイファイラです。
こんな風にラフに組んでいますが、入出力が結合しないようにある程度配慮しているつもりです。前回記事でアップにできなかった入力側のシールドもこんな風に銅テープで衝立を立てた格好で、グランドに一端を接続しています。
なるほど、オーソドックスなトランスによる整合で上手くいくことは判りました。そこで、今度はLマッチによる測定です。

トランスによるものと殆ど変わりません・・・って、まぁ当たり前なんですがね

これで普通に考えられるインピーダンス整合は、前回記事の抵抗での整合を含めて網羅したと思いますが、最後にちょっとだけ「不整合の場合」に突っ込んでおきましょう。

一番上のデータと出力側のみ200Ωにしてみたものとを重ねてみました。この程度の不整合(SWR=4)でもオツムの辺りが波打っていることが判りますね。こうなると、かなり厳格にインピーダンスを守ってやらないといけないということになりそうです。即ち、実機にこの手のクリスタルフィルタを組み込む場合には、この整合具合を「実装した状態」で測定して合わせ込んでおくことが必要なようです。
すると、今回のようにインピーダンス変換が簡単な場合はトランス整合が視野に入るものの、本命はLマッチ(或いは同調とインピーダンス変換を兼ねたタンク回路)になると考えた方が良さそう。抵抗での整合はロスに直結することからも、Lマッチを”一等賞”と考えて良さそうです。
クリスタルフィルタの試作に向け、水晶の諸元を測定するアダプタを作り始めたのが6月頭・・・2ヶ月以上掛かってしまったようです。歪み特性や音響的な遅延の具合など掘り下げたい部分もまだまだありますが、これにてひとまず、クリスタルフィルタの試作からは手を離そうかと思います。
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