10MHzのBPF・バッファのシミュレーションとプチ実験
2018-08-19
長かった休暇も最終日。一昨日より涼しい日が続いて身体的にはかなり安らいだ気がしますが、この涼しさも今日、明日辺りまでのよう。明後日からは30℃超の夏日がぶり返し、週の後半は台風20号の影響が出てくるかも知れず・・・と、まだまだ天気の変化に右往左往させられそうです
GPSDOの出力部の設計とシミュレーションを手掛けていますが、漸くこの辺りに目処が立ちました。回路的には「10MHzのフィルタ」と「後続のバッファ」に分けられますが、何と言っても今回の周波数標準としての肝は「ジッタを伴う10MHzの方形波を綺麗な正弦波にする」という部分です。
当初は”定K型LPFx2段”で高調波を取り除いた信号をバッファに放り込むように考えましたが、ブレボにLPFを組んで実測してみると、10MHzより低い周波数成分が思いの外多く上手くありません。そこで、”7Kボビン”に適当なタンクコイルを巻いたBPFを作ろうと考えましたが、大昔に1個26円で購入してなかなか捌けない”T37-6”を消費すべく「帯域の狭い2ポールのBPF」(3dB帯域が±30KHzで設計)をでっち上げることにしました。
この記事が夏休みの集大成になりますから(
)、少し順を追ってこの辺りを図解。

このフィルタへの入力はインバータ2つを並列にしたバッファで、個々のインバータに240Ωの抵抗をシリーズ接続して使用・・・インピーダンスを120Ωと見立て、これをBPFの入力インピーダンスとします。
一方、出力インピーダンスは後続のバッファアンプの入力インピーダンスになるため、先にこのバッファアンプをどう作るかを想定しておく必要があります。GPSDOとして”3出力”を具備したいため、ここでは3分配を簡単に済ますべく入力インピーダンスの高いバッファアンプを前提にFET採用・・・こうなると、これまた在庫豊富な”J310”がベストと判断、ゲート抵抗に100KΩを置いて3つを並列接続して33KΩ程度になることを前提にしました。
このように、このBPFの入出力インピーダンスは大きく異なりますが、特に33KΩという高インピーダンスではLマッチを構成する”CE2”は不要となる一方、同調容量”C2”を大きくして補正する必要があります(補正の仕方は”トロ活”に詳説されていますからそちらを参照して下さい)。この辺りは、自作のBPF設計ツールで暫しカット&トライ・・・と設計を進めました。
さぁ、ここまで来れば回路として定数を入れ、シミュレートしてみましょう。まずは回路図。

これはシミュレートを終えた完成版です。BPF出力時点での電圧が高いため、アンプ自体はソースフォロワで済ましても良かったんですが、あれこれ調整しても出力電力として前提にしていた10dBm@50Ωに満たなかったため、軽く増幅することにしました。その結果、今度は逆に若干過大入力になるため、ゲートに直列に抵抗(3.9KΩ)を入れました。
また、アンプの負荷となるタンク回路のインピーダンスを高くするとこれまたゲインが大きくなり過ぎるため、設計仕様として200Ω程度にしています。Qも3.0と低くしていますから、この同調回路によるフィルタ効果は「刺身のつま」程度
シミュレーション結果は以下の通りです。

回路図上の”CLK”と”TP”、”OUT1”から”OUT3”の波形を見ています。”OUTx”の波形は全て重なって最後に描画した”OUT3”(赤)が表示されています。
”TP”の波形はBPFの特性を見ていることになりますが、綺麗な正弦波になっていることが解ります。また、”OUTx”の波形が±1Vなっており、凡そ10dBmの出力が確保されていることが解ります。”OUTx”にはそれぞれ-6dBのATTを通していますから、個々のFETは50Ωに対して40mW程度の信号を出力していることになります。
BPF部分については、ブレボ実験もしてみました。その様子がこちら。

回路図上の”CLK”と”TP”をそれぞれ見ています。”CLK”の波形では、オーバーシュート・アンダーシュートが結構あり、上下のピークを拾うと6.6V程になります。これをシミュレーションのクロックとして反映させると、”TP”の大きさが実測よりかなり大きくなります。そこで、上下の平均値(2.64V)を2倍した5.3Vでシミュレートしたら、”TP”の値が実測とほぼ合いました。
もう一つ・・・BPF用に巻いたL1,2(T37-6に0.32φのUEWを20回巻き)は、必要なインダクタンス値を机上計算で求めた後、実際に巻いてから実測した二値を平均して反映させています。
できればこの休暇中にJ310のバッファアンプ部もブレボ実験に持って行きたかったんですが、どうやら時間切れのよう・・・というのは、この休暇中ビール
や酎ハイ
などのアルコールを一切控え、完全なる”休肝週間”としたため、流石に今晩はこれから一杯やろうと計画しているからでした
長かった夏休み・・・自分的にはそこそこヘッポコ実験にも興じられた良い休暇だったと思います。明日から暫く、忙しい日々が・・・と思ったら火曜日は都内の研修会から直帰できそうなんで、秋葉原でも回ってこようと思います

GPSDOの出力部の設計とシミュレーションを手掛けていますが、漸くこの辺りに目処が立ちました。回路的には「10MHzのフィルタ」と「後続のバッファ」に分けられますが、何と言っても今回の周波数標準としての肝は「ジッタを伴う10MHzの方形波を綺麗な正弦波にする」という部分です。
当初は”定K型LPFx2段”で高調波を取り除いた信号をバッファに放り込むように考えましたが、ブレボにLPFを組んで実測してみると、10MHzより低い周波数成分が思いの外多く上手くありません。そこで、”7Kボビン”に適当なタンクコイルを巻いたBPFを作ろうと考えましたが、大昔に1個26円で購入してなかなか捌けない”T37-6”を消費すべく「帯域の狭い2ポールのBPF」(3dB帯域が±30KHzで設計)をでっち上げることにしました。
この記事が夏休みの集大成になりますから(


このフィルタへの入力はインバータ2つを並列にしたバッファで、個々のインバータに240Ωの抵抗をシリーズ接続して使用・・・インピーダンスを120Ωと見立て、これをBPFの入力インピーダンスとします。
一方、出力インピーダンスは後続のバッファアンプの入力インピーダンスになるため、先にこのバッファアンプをどう作るかを想定しておく必要があります。GPSDOとして”3出力”を具備したいため、ここでは3分配を簡単に済ますべく入力インピーダンスの高いバッファアンプを前提にFET採用・・・こうなると、これまた在庫豊富な”J310”がベストと判断、ゲート抵抗に100KΩを置いて3つを並列接続して33KΩ程度になることを前提にしました。
このように、このBPFの入出力インピーダンスは大きく異なりますが、特に33KΩという高インピーダンスではLマッチを構成する”CE2”は不要となる一方、同調容量”C2”を大きくして補正する必要があります(補正の仕方は”トロ活”に詳説されていますからそちらを参照して下さい)。この辺りは、自作のBPF設計ツールで暫しカット&トライ・・・と設計を進めました。
さぁ、ここまで来れば回路として定数を入れ、シミュレートしてみましょう。まずは回路図。

これはシミュレートを終えた完成版です。BPF出力時点での電圧が高いため、アンプ自体はソースフォロワで済ましても良かったんですが、あれこれ調整しても出力電力として前提にしていた10dBm@50Ωに満たなかったため、軽く増幅することにしました。その結果、今度は逆に若干過大入力になるため、ゲートに直列に抵抗(3.9KΩ)を入れました。
また、アンプの負荷となるタンク回路のインピーダンスを高くするとこれまたゲインが大きくなり過ぎるため、設計仕様として200Ω程度にしています。Qも3.0と低くしていますから、この同調回路によるフィルタ効果は「刺身のつま」程度

シミュレーション結果は以下の通りです。

回路図上の”CLK”と”TP”、”OUT1”から”OUT3”の波形を見ています。”OUTx”の波形は全て重なって最後に描画した”OUT3”(赤)が表示されています。
”TP”の波形はBPFの特性を見ていることになりますが、綺麗な正弦波になっていることが解ります。また、”OUTx”の波形が±1Vなっており、凡そ10dBmの出力が確保されていることが解ります。”OUTx”にはそれぞれ-6dBのATTを通していますから、個々のFETは50Ωに対して40mW程度の信号を出力していることになります。
BPF部分については、ブレボ実験もしてみました。その様子がこちら。

回路図上の”CLK”と”TP”をそれぞれ見ています。”CLK”の波形では、オーバーシュート・アンダーシュートが結構あり、上下のピークを拾うと6.6V程になります。これをシミュレーションのクロックとして反映させると、”TP”の大きさが実測よりかなり大きくなります。そこで、上下の平均値(2.64V)を2倍した5.3Vでシミュレートしたら、”TP”の値が実測とほぼ合いました。
もう一つ・・・BPF用に巻いたL1,2(T37-6に0.32φのUEWを20回巻き)は、必要なインダクタンス値を机上計算で求めた後、実際に巻いてから実測した二値を平均して反映させています。
できればこの休暇中にJ310のバッファアンプ部もブレボ実験に持って行きたかったんですが、どうやら時間切れのよう・・・というのは、この休暇中ビール



長かった夏休み・・・自分的にはそこそこヘッポコ実験にも興じられた良い休暇だったと思います。明日から暫く、忙しい日々が・・・と思ったら火曜日は都内の研修会から直帰できそうなんで、秋葉原でも回ってこようと思います

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No title
フィルターは、昔の受信機に搭載されてたようなクリスタルを1個使用のCW用フィルターを使うと、今回のような用途には良好な結果が得られます。
トリマーで中心周波数とかスロープも調整できます。
私の作ったGPSDOに採用してます。
トリマーで中心周波数とかスロープも調整できます。
私の作ったGPSDOに採用してます。
水晶フィルタですね
通りすがりさん、コメントありがとうございます。
仰る通り、水晶フィルタは良好な結果になりそうですね。
今回は、一生掛かっても消費できるか…というT37-6をできるだけ使う"作戦"だったんで、このようにした次第。
同様な回路を組む再際には、水晶フィルタも選択肢にしたいと思います。
また寄って下さいね(^_^)/
仰る通り、水晶フィルタは良好な結果になりそうですね。
今回は、一生掛かっても消費できるか…というT37-6をできるだけ使う"作戦"だったんで、このようにした次第。
同様な回路を組む再際には、水晶フィルタも選択肢にしたいと思います。
また寄って下さいね(^_^)/